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世界的な“いい加減”の連鎖? 原発再稼働とスペイン銀行巨額支援の共通項
http://www.asyura2.com/11/kokusai6/msg/652.html
投稿者 墨染 日時 2012 年 6 月 15 日 11:31:24: EVQc6rJP..8E.
 

http://diamond.jp/articles/-/20084

 いや驚きました。先週のわずか2日の間に、日本と欧州の両方でいい加減極まりない政策判断が連続して行われたのです。これは世界的な風潮なのでしょうか。今回のことから私たちは何を学ぶべきでしょうか。


***ロジックなき原発再稼働
 日本でのいい加減な政策判断とは、大飯原発の再稼働です。野田首相は6月8日の記者会見で、大飯原発を再稼働すべきとの判断を明確にしました。しかし、野田首相の発言を何度読み返しても、説得力ゼロ、支離滅裂、論理矛盾という印象しか残りません。

 最大の問題は、原発の安全基準が暫定的であると認めているにも拘わらず、大飯原発の稼働を電力需給が逼迫する夏期に限定せず、一度再稼働させたら需給が逼迫しない秋以降もずっと運転させると断言していることです。

 安全基準が暫定的である一方で、規制庁の設立を経て新たな安全基準が法定・実施されるまで最低でも1年は要することを考えると、論理的には新たな安全基準ができるまでの間は原発の再稼働も限定的であるべきなのに、“国民の生活を守る”というなんとも抽象的な理由のみで継続的に運転させようとしているのです。

 個人的にこれほどいい加減な政策判断はないと思います。あれだけ悲惨な福島原発の事故が起きた以上、原発再稼働という政策判断をするにはしっかりとしたロジックが不可欠なのに、それが欠如しているからです。

 原発をずっと稼働し続けたい本当の理由は、おそらく電力会社の経営と思われます。原発を再稼働できない場合、来年にもいくつかの電力会社が債務超過に陥る可能性があるので、何としてもそれを防ぎたいのでしょう。

 この本音は、東京電力の延命と同様に明らかに経産省の官僚のロジックです。会見で原発の“再稼働”ではなく“再起動”という法律的に正確な表現を使っている辺りからも、会見の文章は官僚がすべて用意していることが伺えます。そうした点も踏まえると、このいい加減な政策判断は官僚のロジックに乗っかった確信犯的なものであると断言できます。

 ついでに言えば、大飯原発再稼働を巡る福井県知事の言動も、官僚のロジックの延長です。私は個人的に、野田首相以上に福井県知事の方が確信犯的に偏った政策判断をしており問題が大きいと思っていますが、この点についてはいずれ稿を改めて説明したいと思います。


***スペインの銀行への公的資金注入
 原発再稼働を巡る日本の政策判断が“確信犯的ないい加減”であるのに対し、欧州では文字通りの“いい加減”な政策判断が6月9日に行われました。ユーロ圏財務相による、スペインの銀行への1000億ユーロの資金支援の決定です。この政策判断は様々な点でかなりいい加減と言わざるを得ません。

 第一に、当初期待されたユーロのESMからスペインの銀行に直接公的資金を注入する方式ではないため、公的資金注入により、スペイン政府の公的債務のGDP比は現在の80%から90%に上昇することになります。欧州の金融システムの安定のために、スペインの経済状況は更に苦しくなるのです。既に若年者失業率が50%を超えるスペインの景気を好転させる政策は何も採られておらず、EUはスペインに対して緊縮財政を求めたままです。

 第二に、あまりに拙速な判断だったと言えます。スペインでは、政府が雇ったコンサル2社が銀行のストレステストを行っており、その結果は6月21日までに分かる予定でした。さらに言えば、別のコンサル4社は14の大手銀行の資産査定を行っており、その結果が判明するのは7月末でした。

 それにも拘わらず、6月8日に“スペインの銀行には少なくとも370億ユーロの追加資本が必要”というIMFの分析が明らかになると、それからわずか1日でその3倍程度の公的資金の注入が決まったのです。

 6月17日のギリシャでの総選挙を控え、その他の混乱要因はなるべく抑えたいという気持ちは分かりますが、少ない情報を元に拙速に動き過ぎたと言わざるを得ません。ユーロ危機へのEUの対応が十分に準備されたものでなく、むしろ場当たり的なものであることも明らかになってしまいました。

 実際、米国では、リーマンショックの際に政府が金融システムの安定化に成功したのは、公的資金注入に加え預金保護の上限を10万ドルから25万ドルに引き上げたことが大きかったのに、スペインでは後者の対応が抜けているので、預金逃避の懸念は拭えず金融システムは安定化しない、という批判が出ています。

 日本で小泉政権が不良債権処理を行ったときも、りそな銀行に公的資金を注入した際に、預金逃避などの金融システムの混乱を避けるためにペイオフ(預金保護の上限を1000万円に限定)の凍結を2年延期し、預金は引き続き全額保護されるようにしたことを考えると、この指摘は正しいと言えますので、この点からもEUの対応は場当たり的と言わざるを得ません。
そして、最後に本件での極めつけのいい加減さを紹介すると、なんとスペインのラホイ首相は、6月9日に1000億ユーロの資金支援が決まると、翌10日に「銀行問題は解決した」と宣言して、サッカーの欧州選手権のスペイン対イタリア戦を観戦するためにポーランドに飛び立ったそうです。政策対応が公的資金注入だけで十分かを検討するとか議会で説明するとか、やるべきことは山ほどあったはずですが…。

 こうした事実を踏まえると、スペインの銀行へのEUからの公的資金注入という政策判断は、EUの側でもスペインの側でもよく詰めずに拙速に決められた感があり、日本の確信犯とは正反対の“その場しのぎ”であったと言えるのではないでしょうか。


***首吊りか銃殺か
 以上のように、日本では原発再稼働、欧州では銀行への公的資金注入と、一見まったく関係ない話のように見えますが、“いい加減”というキーワードで共通する間違った政策判断がわずか2日の間に世界経済の主要な2ヵ所で行われていたのは、ある意味で驚くべきことではないかと思います。

 それでは、日本と欧州のどちらの政策判断がよりダメでしょうか。私は個人的に、日本の方がよりタチ悪いのではないかと思います。それは、確信犯的にいい加減な政策判断を行っており、かつその内容が官僚主導の“今までの延長”路線になっているからです。

 それに比べると欧州のいい加減な政策判断は、米国や日本の経験を十分に踏まえず、目前の危機に追われて拙速に決めており、“準備不足ゆえのいい加減”とも言えますので、日本に比べるとまだ罪は軽いような気がします。

 まあこの両者を比べるのは、首吊りと銃殺のどちらがいいかを選ぶようなものですので、あまり意味があるとは言えません。ただ、この1週間の驚くべき2つのいい加減から敢えて教訓を学ぶとすれば、1つは、日本は他国と比べても官僚による確信犯的暴走がひどいことが改めて明らかになったので、それを抑える方法を真剣に考えないと日本はさらに悪くなるということでしょうか。

 もう1つは、世界経済を見るときに、マクロ経済や個々の企業のパフォーマンスと同等かそれ以上に、政策リスクという観点を重視する必要性が改めて明らかになったということでしょうか。どうも日本では欧米を何でも礼賛する風潮がまだありますが、そうした迷信は忘れて、どの国でも政権を担う政治家の能力や資質をしっかりと見極める必要があるのです。

 

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