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シティグループを恐れなかった女性、勇気で手にした24億円
6月5日(ブルームバーグ):シェリー・ハント氏は、まさか自分がウォール街の銀行の上級管理職に就くとは思っていなかった。ミシガン州の片田舎で、父親に釣りを、母親にきのこ狩りを教わりながら育った。音楽はマーティ・ロビンスやバック・オーウェンスのカントリーミュージックが好きで、何事も神のおぼしめしだと信じている。
16歳で結婚し、大学には行かなかった。17歳で子供が生まれた後、働くことが必要になった。1975年に友人の助けで、アラスカ州の小さな銀行で住宅ローンの手続きを処理する仕事を見つけた。その後の30年間で、元カントリーガールはインディアナ、ミネソタ、ミズーリ各州を移動しながら、住宅金融業界で出世の階段を上っていった。ブルームバーグ・マーケッツ誌7月号が報じた。
休日に夫のジョナサンさんと釣りに行かない日は、「ワイルド・ウエスト」ショーで愛馬コディーを乗り回す。時には、「アニーよ銃を取れ」のアニー・オークリーの衣装を着てライフルを撃って見せる。夫妻はミネソタ州ワイルド・ウエスト・ソサイエティのメンバーとして、19世紀の西部開拓時代を見せるショーに出演していた。
ハント氏(55)は人々が家を買うのを助ける住宅ローンの仕事が好きだった。同氏は2004年11月に、住宅ローン部門のバイスプレジデントとして米銀シティグループに入行。素晴らしい転職のように思われた。住宅市場はブームに沸き、当時米国6位の銀行だったシティは住宅ローン市場の3.5%を握っていた。ハント氏はミズーリ州の大都市セントルイスから45分ほどのオファロンにあるシティモーゲージの広い本社で住宅ローンのアンダーライターという職務の65人を監督した。
ローン査定
同氏のチームの仕事はシティグループを詐欺や投資の失敗から守ることだった。同氏は同僚と共に、シティが外部のブローカーや金融業者から買い取ろうとする住宅ローン債権を査定、シティの基準を満たしているかどうかをチェックした。きちんとした署名入りの書類と借り手の所得証明、現実的な物件評価が求められていた。
シティはこれらのローンを投資家に販売したり、政府の住宅ローン保証の対象として承認したりする時に、それらローンの信用の質を保証する。
住宅ローンを裏付けとした証券の需要は極めて強く、シティは処理が追いつかないほどだった。シティの承認のスタンプは、借り手が返済に行き詰まった場合シティが肩代わりすることを意味した。
オファロンの住宅ローン加工工場の組み立てラインでハント氏は、のちに破裂して世界を揺るがす住宅ローンバブルを膨らます仕事に携わった。この工場の機械は全てのローンをきちんと査定するのが無理なほどのスピードで動いていたと、ハント氏は振り返った。
幹部の隠蔽
06年になるとシティは細工した税申告書やいんちきな査定、署名のない文書などの不備のある住宅ローンを外部から買い取りつつあった。このような問題を発見するのがハント氏の仕事だったし、同氏は実際に発見し、定期的に上司に報告していた。
しかし幹部は金融危機前とその最中ばかりでなく危機後も同氏が発見した不備を隠し続け、12年に入るまでそれが続いていたとハント氏は語った。
シティが450億ドル(約3兆5300億円)の公的資金注入を受けてから2年以上たった11年3月、オファロンで融資の信用の質の管理責任者を務めていたジェフリー・ポーキングホーン氏は会議の後、ハント氏と同僚に会議室に残るよう求めた。
会合は短く、緊張したものだったとハント氏は振り返る。問題ありに分類されるローンの数を減らさなければならないとポーキングホーン氏は告げ、そうしなければ解雇されるとほのめかした。何を求められているかは明白だったが、ハント氏は従うつもりは毛頭なかったという。
「そんな気はない」
「不正直な人間に求められていたのは、報告を変更して実際よりも良いように見せかけることだった。そんなことをする気はなかった」と同氏は語った。
代わりに同氏はシティを相手取って訴訟を起こして、勝訴した。ポーキングホーン氏との会談の5カ月後の11年8月にハント氏はシティをマンハッタンの連邦裁判所に訴えた。住宅ローン部門が組織ぐるみで米国の規制に違反していると暴露した。
翌年の1月には米司法省が同氏と共に原告に加わった。シティは公の場でも法廷でもハント氏の主張について争わず、12年2月15日に1億5830万ドルを政府に支払うことで和解した。
シティは連邦住宅局(FHA)の規則の下で条件を満たさないローンを政府保証対象として承認したことを認めた。検察は刑事訴追の可能性を残している。
純粋な神話
米金融安定化プログラム(TARP)を管轄する特別監察官を務めたニール・バロフスキ氏は、シティが12年に入るまで悪い慣行を続けていたのは、大手銀行が信用危機からの教訓を学んでいないことを示すものだと指摘。「この件は、救済された銀行が金融危機後には神を恐れることを知り、悔い改めたという考えが純粋な神話に過ぎないことを示している」と語った。
雇用主を内部告発した報奨金として、ハント氏はシティが政府に支払った和解金のうち3100万ドル(約24億3000万円)を得た。
ハント氏は自分の勝利が他の人々が立ち上がるきっかけになればいいと話す。「真実を話しても大丈夫だと知ってほしい。私にできたことは誰にもできる。身近なところから誤りを正していくのが、社会を正す道だ」と同氏は語った。
報奨金を受け取った夫妻はミズーリ州の家を教会に寄付してもっと暖かい土地に引っ越すことを決めた。夫のジョナサンさんがタブレット端末で「ザック・ブラウン・バンド」の音楽ビデオを流しながら口ずさむ。永遠のバケーションを夢みる歌だ。「世界中で唯一の心配事は潮が満ちて水が僕の椅子まで来ることだけ」という歌詞に、妻のシェリーさんが歓声を上げた。
原題:Woman Who Couldn’t Be Intimidated by Citigroup Wins $31Million(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Bob Ivry bivry@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Jonathan Neumann jneumann2@bloomberg.net
更新日時: 2012/06/05 07:33 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4Y2KR6KLVR701.html
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