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旧宗主国としての責務を全うせよ!
『月刊日本』論説委員・山浦嘉久
http://gekkan-nippon.com/?p=2408
『月刊日本』2009年8月号
川柳に「売り家と唐様で書く三代目」とあるが、これは、ある一族の存続にとって三代目がどれほど重要であるかを示していると言うこともできる。大抵、三代目は放蕩蕩尽してしまうものなのだが、逆に三代目がしっかりしていれば、一族の命脈は保たれるのである。鎌倉幕府の執権・北条泰時、室町幕府の足利義満、徳川幕府の家光と、優秀な三代目によって政権が維持された事例は多い。逆に、歴史上名高い変態であるローマ帝国セウェルス朝の三代目ヘリオガバルスのように、三代目が暗愚であると王朝の命運は尽きる。これらは歴史的経験則である。
現在、北朝鮮では三代目への継承作業が進んでいる。三男の金正雲が有力と見られているが、情報筋によると正雲の継承は既に17年前、彼が9歳のときに定められていたとされる。
北朝鮮は2012年に核装備を含めた「強盛大国」を実現すると同時に三代目への継承を行い、経済大国への道を歩むというシナリオを描いていた。ところが、最近はしきりに金正日の健康不安が語られ、平仄をあわせるように、正雲をめぐる報道が錯綜している。
朝日新聞は6月16日付朝刊で、正雲訪中を報じ、正雲が金正日の特使として胡錦濤主席らと会談したと伝えた。この報道に対してシナ外務省の秦剛報道官は同日の定例会見で、「中国側はこの件について承知していない」と述べ、同時に、韓国KBSの「金正男に対する暗殺計画が中国側によって阻止された」という情報も否定した。
これに対し朝日新聞は再び18日付で、「正雲と胡錦濤との会談に、長男の正男も同席した」と報じた。中国側はさらに辛辣に、「最近のメディア報道はまるで007の小説を読んでいるようだ」と応じた。
続いて6月25日、武大偉外務次官も訪中した加藤紘一元自民党幹事長に対し、正雲が訪中したとする報道について、「正雲は中国に来た事は一度もない」と重ねて否定した。シナ政府がここまで朝日新聞を否定したのは初めてである。
ところが29日、英紙フィナンシャル・タイムス(FT)は朝日報道を裏付けるかのように、「正雲が6月10日から17日まで極秘に訪中していた」と報じたのである。ただし、病床に伏せているはずの軍の最長老・趙明禄が正雲に同行したともしている。FT紙はありえない記事を掲載することにより、シナ政府に揺さぶりをかけているのである。
この狙いは、中朝の離反を促すことにある。もともと愛憎半ばする中朝関係において、両国の指導者間には金王朝の内情に関しては一切公にしないという密約が成立している。当然、三代目後継をめぐる情報は最高機密であり、最も守秘すべき事項である。朝日・FT報道はシナ指導層に揺さぶりをかけ、一方、北朝鮮の対中不信を煽る効果があったのである。
北朝鮮はタングステン、ウラン、レアメタルなど手付かずの天然資源が豊富である。現在、北朝鮮の資源開発に乗り出しているのはシナだけであるが、イギリス、ドイツ、ロシア、イスラエルをはじめ世界各国がこの天然資源の宝庫を虎視眈々と狙っており、水面下では既に熾烈な利権争いが始まっている。イギリスFT紙が中朝間に楔を打ち込んだのは、北朝鮮にシナ以外にも門戸を開放させる意図なのである。
02年9月の小泉訪朝の外交根回しをしたのは、平壌に大使館を持つイギリスである。イギリスは、北朝鮮の門戸開放、経済開発のためには日本による経済援助が不可欠であると認識している。だが、現在の状態ではたとえ日朝国交正常化がなされたとしても、その経済的恩恵は日本の実質的宗主国であるアメリカが独占することになる。従って、イギリスが北朝鮮の資源開発を進めるためには、日本がアメリカとは独自に日朝交渉をせねばならず、そのために小泉訪朝を演出したのである。
北朝鮮も小泉という、歴代総理の中でも異色の人物であるならば、「脱米自立」を果たすことができるのではないか、という僅かな望みを抱いた。その結果、金正日は拉致を認め、あまつさえ謝罪さえしたのであった。しかし、米国の怒りを買った小泉は、イギリスと北朝鮮の思惑を無視して米国に恭順し、アメリカへの謝罪の意味も込めて郵貯資金を上納する約束をしてしまったのである。これ以降、北朝鮮が日本に期待を抱くことは一切なくなったと言ってよい。
北朝鮮は金王朝の三代目の安定継承によって、大日本帝国の残置国家体制(金首領国体=疑似天皇国体)の完成を目指している。イギリスは三代目継承に関与することにより、三代目就任後の利権に介入することを目論んでいるのである。
だが、金正日の健康不安によって当初のシナリオであった2012年の三代目継承を前倒しする必要が出てきている。そして、かつて日朝国交正常化を食い止めたアメリカは現在、内政対応に精一杯で、北東アジア情勢に割く余力はない。ここに間隙が生じている。
我が日本が旧宗主国としての責任を全うするためには、この不安定な中での金王朝三代目の安泰継承に積極的に関与する必要がある。これは、経済利権や拉致問題の解決といったレベルの問題ではなく、我が国は脱米自立へ踏み出すのか、という決断が迫られているということなのである。
*本稿は編集部の許可を得て投稿しています。
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