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リビアの真実 中東発の世界大戦に備えよ 東京財団上席研究員 佐々木良昭
http://gekkan-nippon.com/?p=708
『月刊日本』4月号
2010年末、一人の青年の焼身自殺によって始まった「ジャスミン革命」の炎は燎原の火のごとく燃え広がり、エジプト、そしてリビアにも飛び火し、まだまだ広がりそうな勢いである。そんな中、リビアのカダフィ大佐は自国民を爆撃するほどまでに抵抗を続けている。
中東をめぐる一連の事件について、フェイスブックやツイッターという最新技術による民主化革命、それに抵抗する独裁者という見方もあるが、真実はどこにあるのか。中東研究の第一人者・佐々木良昭氏にうかがった。
フェイスブックの裏の顔
―― チュニジアで始まった革命が中東に広がり、世界に激震を与えている。
佐々木 ことの由来を尋ねれば、大学を卒業したが就職がなく、路上で野菜売りをしていた青年、ムハンマド・ボアジジ氏が政府の政策に抗議し、焼身自殺を図ったのだ。そのことがネットを通じて大衆の間に伝わり、地方都市で起こった焼身自殺が、チュニジア全体に火をつけることとなった。
現代の革命は武器を必要としない、流血を避けて出来る革命だ、と言われている。リビアについては別に語るが、インターネットやツイッター、フェイスブックなどによる、不特定大衆への、呼びかけによる革命が起きていると言われている。
なるほど、この電子革命はチュニジアの、ベン・アリという独裁者を逃亡させ、頑強なエジプトのムバラク体制を打倒した。しかも、その電子革命による犠牲者数は、500人にも満たなかったのだ。
この電子革命の波が、遂にアラブの独裁国シリアにも、向かい始めたようだ。複数のネットやフェイスブックが、バッシャール・アサド体制批判を始め、大衆抵抗運動を呼び掛け始めている。また、王国でも、大衆蜂起が始まっている。バハレーンは既に、相当危険な段階に突入しているし、ヨルダンでも不安定な状況が生まれている。このままいけば、民主化運動という炎に四方八方を取り囲まれたサウジアラビアにも延焼する可能性も真剣に考えなければならない。
「電子革命による民主化」とはいかにも21世紀らしい、斬新で進歩的なイメージを与えるものだ。だがイメージやイデオロギーで政治現象を判断してはならない。目の前の現象を虚心坦懐に眺めることだ。
ネットが一定の役割を果たしているのは事実だが、この動きに対して政府がネット規制に乗り出すのは当然だ。だが、その政府規制をすり抜ける非常に高度で複雑な技術が用いられて革命の呼びかけが拡散した。エジプトでは、ネット規制のために450万人もの人間を投入したが、それでもムバラク政権は崩壊した。
チュニジアは貧しいが教育レベルは高い国で、昨年、その中でも優秀な人物がアメリカに招待され、さまざまな最新情報や最新技術についてレクチャーを受けたと言われている。こうした影響がなかったと言い切ることは難しいだろう。
結局、チュニジアに始まった民主化という火の手は北アフリカ、アラビア半島の独裁国家、諸王国の支配体制を崩壊に追い込まんとしている。その後の焼け野原で何が起こるかは、歴史がよく教えてくれることだろう。
見た目に騙されてはいけない。女と結婚するのは化粧を落とした顔を見てからにしろという教えがあるが、民主化という美しい化粧の下には、ひょっとしたら、腰を抜かす様な醜い顔が、たとえば帝国主義があるかもしれないのだ。
二一世紀世界大戦に備えよ
―― 帝国主義とはつまり、各国が自国の生存権をむき出しにし、資源の確保と保護主義貿易、ブロック経済化へ世界は進んでいくということか。
佐々木 私の専門は中東だから世界全体の運命について確信的に答えることはできないが、日本の石油輸入量のトップであるサウジアラビアにまで革命騒ぎが及べば、石油の輸出がストップし、世界経済は大きなダメージを受けることになることは当然だ。ただでさえリーマンショック以来、世界的不況にある中、石油が止まればそれを取りに行こうとする国家があってもおかしくはない。
日本に石油が入らなくなればどうなるか。これは1973年のオイルショックよりも深刻な事態になるだろう。当時の二十代の若者はまだ、敗戦直後の焼け野原と闇市を知っていた世代だ。貧困を乗り越えてきた世代だから、オイルショックにも立ち向かう気力があった。だが今の二十代は中途半端に豊かに育っているから、オイルショックが生じればパニックに陥り、自暴自棄になったり極端な民族主義へと傾くだろう。事態は1900年初頭に近づいていくだろう。
第一次世界大戦と第二次世界大戦をまとめて、「20世紀の大戦」と見る歴史観がある。これは、第二次世界大戦の原因が1919年ベルサイユ体制崩壊にあることは明らかであるから、1919年から1939年ドイツのポーランド侵攻までの20年間を停戦期間と見る考え方だ。第一次世界大戦に至る理由は、結局のところよくわかっておらず、歴史研究者の間でも議論が続いている。なぜサラエボで放たれた一発の銃弾が世界を破滅に追い込んだのか。結局のところ、不安と貧困が世界に蔓延すれば、たったひとつの合図で人類は集団発狂するというのが真実だろう。
―― 人間は進歩せず、同じことを繰り返す。
佐々木 国連があれば第三次世界大戦は防げるなどと考える人間は、大変おめでたいと思うが、信仰は自由だ。
だが、いつかは眠りからは覚めなければならない。他国よりも長い惰眠を貪った日本人にとって、その目覚めは辛く苦しいものになるだろう。だが今目覚めなければ、この眠りはそのまま永遠の眠りへとつながっていくことになる。眠りは死の兄弟とはよく言ったものだ。
国内の政争も結構だが、今こそ世界情勢の行く末に神経を尖らせなければならない時代はない。我々は前夜にいるのだ、世界大戦の開戦前夜に。(以下略)
*本稿は編集部の許可を得て投降しています。
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