http://www.asyura2.com/11/kokusai6/msg/378.html
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藤永 茂さんのブログの紹介です。(1)だけを引用しますが、(6)まであるようです。
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/darkness/2011/06/
2011/06/01
リビアとハイチで何が見えるか(1)
フランスのドービルで開催された主要国(G8)首脳会議の宣言(5月27日)の中に次の宣言事項(要旨、西日本新聞2011年5月28日)があります。
「△平和と安全。
1. リビア政府軍が市民への武力行使を即時停止するように求める。カダフィ大佐は退陣しなければならない。政権移行に向けた国民評議会のロードマップを歓迎。」
ところで、ニューヨークで発行されている「BLACK STAR NEWS」という調査報道新聞があります。その5月28日付けの社説は次のように始まっています。:
#African leaders don't know a potential history changing moment even when it's dangling in front of their eyes---Libya.
If African leaders were able to rally and repudiate NATO's merciless and destructive bombardment of Libya and forcing it to halt, so that the African Union (AU) peace plan can be implemented it would represent the greatest victory in the history of the entire continent against Western military incursion.#
(アフリカの首脳たちは、歴史を変えうるチャンスが、彼らの目の前にぶら下がっているのに−−つまりリビア、それが分かっていない。もし、アフリカの首脳たちが一致してリビアに対するNATOの仮借なき破壊的爆撃を弾劾してそれをやめさせ、アフリカ連合(AU)の平和プランを実行に移すことが出来れば、それは西欧の軍事侵略に反抗するアフリカ大陸全体の歴史における最大の勝利となるであろう。)
リビアで起っていることに就いての上の二つの言明の驚くべき違いに我々はしっかりと想いを沈めなければなりません。カダフィという独裁者から個人的にひどい損害を受けた人々は別にして、他のアフリカ黒人は、たとえ自分たちが西欧側につくことで利益を受けることを意識している場合でも、リビア問題がリビア人を暴君から救出する問題ではなく、欧米がアフリカをどうしようとしているかの問題として捉えていることは、まず間違いがありません。欧米は自分たちの利益のために動いているのであって、凶暴な独裁者からリビアの人々を守ってあげる人道的義務がある (the white man’s burden!) というのは全くの嘘っぱちです。それが政治というもの、国際政治というものだというならば、私にはもう何も言うことがありません。
4月30日(土)、NATO空軍機はリビアの首都トリポリの住宅地区の中にあるカダフィ一族の屋敷一帯に強烈なミサイル攻撃を加えました。ドイツで勉学中のカダフィの一番若い息子(29歳)が帰国していて、カダフィとその妻や近親の家族が集まって夕食を共にしたと思われますが、食後にミサイルが撃ち込まれ、その息子と6歳以下の子供3人が殺されました。2発のミサイルが爆発した時、お爺さんカダフィとその妻は屋敷内にある家畜小屋に行っていて助かったようです。翌5月1日(日)夜には、パキスタンのアボタバードでオサマ・ビン・ラディンが殺されました。アメリカはカダフィとビンラディンの同時抹殺という派手なdouble bill (二本立て興行)を狙ったのだという噂が流れたのも無理はありません。カダフィの息子と3人の孫が死んだというニュースはビンラディンを仕留めたというセンセーショナルなニュースの影に隠れてしまったのでしたが、事件の意義−−いわゆる真相ではありません−−を見定めるには複数の観測点を必要とします。
その一つは英国のBBC NEWS AFRICA (2011年5月1日)の『Nato strike ‘Kills Saif al-Arab Gaddafi’, Libya says.』という長いニュース記事です。全体のトーンを読み取ることが肝心ですので出来れば全文に接して頂きたいのですが、以下では要点だけを報告します。NATOは軍事的目標(カダフィの統括指令本部建物)を爆撃したのであって個人を狙ったものではないという声明を出し、英国のキャメロン首相も、
"It is about preventing a loss of civilian life by targeting Gaddafi's war-making machine, so that is obviously tanks and guns, rocket launchers, but also command and control,"
とBBCに語りました。記事の調子を読み取ることが肝要だと申しましたが、少し拾ってみます。この記事の中にもありますが、実は、リビア側は爆撃の数時間後に現場を外国記者団に公開したので、その実写ムービーも含まれていますし、同類のものがYouTubeにも沢山流れています。被害状況は無残なものですが、BBCは「こんな破壊度ではカダフィも死んだのではないか」と言い、欧米が支持する反政府勢力の拠点ベンガージでは、このカダフィの一族の死を祝って銃が乱射されたことを伝えています。おわりに、空襲以前にカダフィから停戦の申し出があったが、これはカダフィが市民を殺し続けるための口実にすぎないからNATOは拒否したと付言されています。関連ニュースとして、リビアの総額530億ドル(米)にのぼる外国投資をHSBC(英)、Goldman Sachs, Royal Bank of Scotland, 野村、Societe generale(仏)が扱っていて、その全額が押収されたことも報じています。私が信頼する国際的ジャーナリストであるジョン・ピルジャーはこれを「史上最大の銀行強盗」と呼んでいます。
NATOによる仮借なきトリポリ爆撃は、アメリカきっての肝っ玉黒人女性シンシア・マキニー元国会議員・元大統領選挙立候補者が、5月22日、直々に被爆したカダフィ邸を訪れ、次の夜に行なわれた20回以上の爆撃の有様をアメリカのメディアに流したことで、再び、米国内でニュースになりました。“Anatomy of a murder (Cynthia McKinney) ”で探せば、彼女の声にも報告にも接することが出来ます。その記事の一つの中にロイター通信の記者が撮った邸宅内の写真がありますが、破壊された部屋には玩具や衣類などが散乱し、マキニーも「こんなものが統括指令本部内にあるだろうか」とコメントしています。ミサイルの標的が住居であったことは明白です。
心情的には、私はマキニーの側にあります。過去3年にわたる経験から、原則的に彼女の発言を信頼します。しかし彼女の過去多数の発言も、つまるところ、政治的発言であることを常に意識していなければなりません。マスコミ操作が、BBCの“発言”を含めて、やはり、ほぼ完全に政治的であることを意識する必要があるのと同じ意味で。しかし、BBCとマキニーの両方から、疑問の余地なく浮上してくる事実は、欧米の言う“人道主義的介入”が完全な虚偽であるということです。G8の宣言に明確に述べられているように、欧米はカダフィの追放を、あらゆる手段を動員して、必ず成し遂げるでしょう。そのためには、リビア人が何人死のうと構わないのです。カダフィの息子が自宅で殺された二日前には、やはり近所の大きな知的障害者収容施設がNATOの爆撃で破壊されました。カダフィがこっそりその施設からテレビ放送をしているのではないかとCIAが疑ったのがミサイル攻撃の理由だったとも伝えられています。理由はともかくとして、施設の破壊は事実です。
リビア問題が、凶暴な独裁者カダフィの反抗市民虐殺の問題などでは全くなく、黒人アフリカの死活の問題であることは、私には、明々白々です。その決定的な証拠を、今は世界のマスコミが殆ど取り上げないハイチで現在進行中の悲劇が提供しています。その決定的な証拠が見えないのは、我々がそれを見ようとしないからです。
<付記>今朝のNHK衛星放送のワールドニュースで昨日行なわれた南アフリカのズーマ大統領のトリポリ訪問が報じられていました。このところ全く姿を見せないカダフィの安否を確かめようと空港には多数の外国マスメディアが蝟集していましたが、カダフィは姿を現さず、リビア側から発表されたズーマとカダフィの映像だけが示され、カダフィは不機嫌な顔でした。彼は停戦と話し合いには応じるが退陣はしない意向であるとズーマは報じていました。これに対して、反政府勢力側は、カダフィが身を引かない限り和平に応じないことを直ちに表明したことも画面に出ていました。NHKの画像はカダフィ政府軍の幹部たちが続々反政府側に合流していることをまず示していましたが、最後には黒人の若者数人が「アフリカのことはアフリカ人に任せろ」と叫んでいる場面もありました。
藤永 茂 (2011年6月1日)
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