http://www.asyura2.com/11/kokusai6/msg/224.html
Tweet |
ズコッティ公園周辺を封鎖するニューヨーク市警の警官(15日未明)
【津山恵子のアメリカ最新事情】「占拠」に限界―新たな段階に入る反格差運動
2011年 11月 23日 15:59 JST
警察に取り囲まれた。全員集合せよ」
11月15日午前1時、寝床でチェックしたツイッターで、すべてアルファベットの大文字で書かれたつぶやきを発見した。若者中心の反格差運動「オキュパイ・ウォール・ストリート(OWS、ウォール街を占拠せよ)」の叫びを、ボストンやサンフランシスコの若者らがリツイート(引用)し、危機感があふれていた。
現場に着いたのは午前1時40分ごろ。OWSが占拠していたウォール・ストリートにほど近いズコッティ公園は、数百人の警官と鉄バリケードにびっしりと取り囲まれ、文字通り犬一匹近づけない。
支援者や米メディアと、公園からつまみ出されたOWSメンバーに、公園から3ブロック北の地点で合流。しかし、横一列に並び、ヘルメットをかぶり、棍棒を振りかざす警官の、暴力的な前進には勝てない。あっという間にさらに1ブロック後退した。
押し合って逮捕される危険は回避することにし、もう1本の通じる道に行くと、簡単に公園から1ブロックの地点まで近づけた。OWS救急メンバーの無職サム・ウッド氏(21)が突然、息を切らせてメディアの真ん中に飛び込んできた。公園に泊まっていたが、持ち物は救急用ポーチと携帯電話だけだ。
「公園の中心に数十人が残っている。人間の鎖を組んだり、体を木に縛り付けて、『占拠』を続けるつもりだ。でも、警官に取り囲まれていて、このままではいずれ全員逮捕される。僕は、救急チームにいるから、怪我した人を手当てしなくてはならないし、逮捕されるわけにはいかない。自分の意志で公園から逃げて来た」
公園にいた米メディアによると、この後、人間の鎖は一人また一人と警察に引きはがされ、逮捕された。約100以上あったテント、自転車こぎで充電する発電機、パソコン、約5500冊の寄付図書などすべてを、ニューヨーク市衛生局が撤去。夜明けまでに、公園は植樹と花壇しかない状態で、洗浄された。
同日夜が明けて記者会見したブルームバーグ・ニューヨーク市長は、OWSを公園から強制的に排除した理由を「衛生上、安全上」の問題と指摘した。
「公園は従来、公衆に開かれた場所であるはずなのに、占拠が始まってから公園内の安全が保障できない状態だった」
確かに、占拠された公園は、一種、別のルールが存在する世界となっていた。
9月17日の占拠が始まった当初からいるメンバーの中には、公園内をコントロールしたがるメンバーもいた。
テントの間にある細い通路で、インタビューをしていると、「ここに立っていちゃいけない」と注意されたこともある。中心にあるキッチンで、朝食の準備を見ていた際、キッチン・メンバーに話しかけると、年配の女性が「準備の間、邪魔をしないでちょうだい」と叫ぶ。「邪魔はしていません」と言うと、「いいえ、しています!」。
ツイッターでは、当初からいたにも関わらず、ほかのメンバーにテントを片付けられてしまい、公園を離れた女性のビデオも見た。公園内で女性に対する暴行事件が起きたため、女性だけが泊まれるテントが設けられた。昼間からドラッグでふらふらになっている女性を撮影したこともある。早朝や夜に取材に行くと、ビールで酔った年配の活動家が取材をしてくれとからんできた。
多くの若者が、ウォール街の金融機関が政府の公的資金による救済が行われた一方で、若者らは大学を卒業しても就職できないという「格差」に疑問を持って全米から集まってきた。それが幅広い年齢層に支持を得て、社会で見過ごされてきた、あるいは、こんなものだ、と思われてきた問題に、一挙に社会の関心を引き寄せるきっかけとなった。少し前までは、大卒で無職の若者を取材のために探すのは大変だったが、今はOWSメンバーに会えば、必ず何人かが見つかる。
しかし、公共の場所を「占拠」する限界を、今回の強制撤去で思い知らされた。前後して、オレゴン州ポートランドやマサチューセッツ州ボストンでも、警察による「オキュパイヤー(占拠者)」の排除が行われた。カリフォルニア州立大学では、警官が催涙スプレーを若者に何度もかけて攻撃したことが問題化している。
現在、ズコッティ公園は、オキュパイヤーがテントや寝袋を持ち込むことが厳しく監視され、泊まれない状態だ。彼らは市内4カ所の教会が提供した礼拝堂などに寝泊まりする一方で、夕方には毎日公園に集まり、合議を開いている。また、統一した要求項目をまとめるため、100近いワーキング・グループを設け、毎日午後4時までに合議に提案する項目をまとめるため、市内の公共の場所やカフェで、市民の弁護士などを交えて複数の会議が開かれている。
今もって、リーダーもなく、さらに「占拠」して寝泊まりする場所もなくなった。「占拠」で注目を集めたが、今後はほかの方法で、問題を提起し続けることができるのかが問われている。
*****************
津山恵子(つやま・けいこ) フリージャーナリスト
東京生まれ。共同通信社経済部記者として、通信、ハイテク、メディア業界を中心に取材。2003年、ビジネスニュース特派員として、ニューヨーク勤務。 06年、ニューヨークを拠点にフリーランスに転向。08年米大統領選挙で、オバマ大統領候補を予備選挙から大統領就任まで取材し、AERAに執筆した。米国の経済、政治について「AERA」「週刊ダイヤモンド」「文芸春秋」などに執筆。著書に「カナダ・デジタル不思議大国の秘密」(現代書館、カナダ首相出版賞審査員特別賞受賞)など。
http://jp.wsj.com/US/node_349076#
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。