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日本では、既に進んでいるな
http://jp.wsj.com/US/Economy/node_333164
米新聞業界に有料化ラッシュ―ハイエンド層をねらえ?
2011年 10月 28日 18:24 JST
激震が続く米新聞業界で、デジタル課金ラッシュ時代の幕が切って落とされた。
今年3月28日、『ニューヨーク・タイムズ』がヘビーユーザー向け有料オンライン購読システムに乗り出したのを契機に、一般紙の課金ブームが起こっている。新聞業界にも、ついに本格的な競争時代が訪れた。
同月には『ダラス・モーニングニュース』も課金に踏み切り、9月には、ニューヨーク・タイムズ社傘下の『ボストン・グローブ』が、無料サイトの「ボストン・ドットコム」とは別に有料サイト「ボストングローブ・ドットコム」を開始。10月10日には、メリーランド州の主要紙『ボルチモア・サン』が有料化戦略を始め、11月1日からは、ミネソタ州で最大部数を誇る『スター・トリビューン』が課金組に参入と、枚挙にいとまがない。
米政治紙『ポリティコ』(10月20日付電子版)によると、『ワシントン・ポスト』は、当面、課金はしないと宣言したという。「できるかぎり広範な読者層をターゲットにした開かれた新聞」というポリシーを堅持するためには、無料アクセスがベストだと考えるからだ。
だが、同紙デジタル部門の歳入は、第3四半期に前年同期比で13%減を記録した。新聞やテレビなどのオールドメディアを存亡の危機にさらしている、ネットの「破壊的革新」(米新聞協会<API>)を回避するための抜本的改革を何一つ行っていないという批判も目立つ。
事実、ワシントンでは、米政府・財政関連の分析や情報発信に的を絞り、2300人以上のジャーナリストやマルチメディア専門家を抱える『ブルームバーグ・ガバメント』に加え、高度な政治ニュースをリアルタイムで発信する『ポリティコ・プロ』など、エリート層をねらった有料オンラインメディアが続々と誕生している。そんななか、不振続きのポストに対しては、読者層を絞るべきだという改革派とポリシーを固守すべきだという伝統派の意見が二分しており、生き残り戦略の難しさがうかがえる。
一方、アクセス数でポスト最大のライバルと目される『ロサンゼルス・タイムズ』は、今後数カ月以内に試験的に有料化を始める予定だ。3〜7月にかけて、月単位のページビュー(PV)が前年同月比で35%アップしたことが、自信につながったのだろう。7月には25日間で計500万ビューを突破し、月間PVが最多を記録した。
こうした有料オンライン購読システムの大半は、『ニューヨーク・タイムズ』同様、月に20本までは無料だが、21本目から課金する仕組みを取っている。宅配契約者のオンラインアクセスは無制限であり、デジタル購読のみの場合は、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、ツールによって、4週で約10〜35ドルが相場だ。
有料化の波は、正統派メディアにとどまらない。風刺パロディー記事で人気のタブロイド紙『オニオン』も、国外の読者を対象にした課金を始めると宣言し、賛否両論を巻き起こした。8月5日付の本コラムで取り上げたバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の「酩酊事件」報道が大ヒットし、ツイッターのフォロワー数が急増したことにも気を強くしたのだろう。30日間で6本目から課金され、月2.95ドル、年29.95ドルと破格の安さだが、メディアニュースとゴシップ専門の人気ブログ『ゴーカー』は「不幸の兆し」と警告。国内課金も時間の問題だ、と酷評した。
英紙『ガーディアン』(10月10日付電子版)によれば、国内では無料購読サイトの最後のとりでだった英紙『インデペンデント』も、国外課金を始めるという。ターゲットは、アクセス数の40〜50%を占める米国とカナダの読者層だ。
これだけ多くの一般紙が有料化を始めれば、財布のヒモが固い読者も、どれか1紙にはお金を落とすだろうと考えがちだが、そうとはかぎらない。ニューヨークの損害保険会社タワーグループに勤める金融アナリスト、アンドリアナ・ダフニスさん(29)は、「ひと月、20本以下で十分」だと言い切る。特に若い世代では、経済やファッションなど、専門性が高く、「そこにしかない情報」にはお金を払うが、それ以外は複数のサイトをつまみ食いする人が多い。一般紙のなかには、ユーザーの約9割をこの層が占める媒体もある。カギは、今も「コンテンツの独自性」だ。
とはいえ、第2四半期の6月末に28万1000人だった『ニューヨーク・タイムズ』のオンライン有料購読者数は、第3四半期の9月末には32万4000人に増加するなど、事業モデルの転換に腐心する米新聞業界にとっては、光明も見える。有料化以降、同サイトのPVは11%減ったが、同社のロビンソン最高経営責任者(CEO)は、「予想よりはるかに少ない減少幅だ」と、自信をのぞかせる。
デジタルメディア関係の情報を発信する『ネットニュース・チェック・ドットコム』(10月20日付)によれば、9月の新聞系サイトへのアクセス数は、前年同月比で21%増を記録したという。ビジター数もPV総計も、ともに10%ほど増えている。第3四半期の月平均ビジター数は1億1040万人に上り、全ネットユーザーの64%以上が新聞系サイトにアクセスした計算だ。
独占的な権威と資本力を謳歌していた新聞業界が、ネットという「破壊者」(前出API)の隆盛で、歳入の7〜8割を広告売り上げに依存する事業モデルを失って久しい。大不況が追い打ちをかけ、2008年には、広告収入が前年比で約17%減少。発行部数は7%落ち込み、1万6000人のジャーナリストが職を失った。だが、「絶滅寸前までいった08年を経てチェンジを模索しつつも、いまだに突破口が開けていない」(ハーバード大学ジャーナリズムプロジェクト「ニーマン・ジャーナリズム・ラボ」10月27日付電子版)のが実状だ。
『ダラス・モーニングニュース』は、課金後半年で、ビジター数が20%急減した。米新聞業界は、依然として、海図なき航海の真っただ中にいる。
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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
肥田美佐子氏 Ran Suzuki
東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などに エディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・ト リノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘され る。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』 『AERA』 『サンデー毎日』 『ニューズウィーク日本版』 『週刊ダイヤモンド』などに寄稿。日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳も手がけるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『ワーキ ング・プア――アメリカの下層社会』『窒息するオフィス――仕事に強迫されるアメリカ人』など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com
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