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9月 23, 2011
(ニューヨーク)−ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、エリトリアに関するブリーフィング・ペーパーを発表。「エリトリアのイサイアス・アフォルキ大統領が、政権を批判した政府高官とジャーナリスト合計21名の拘禁を命じてから10年が経過した。政府は21名を釈放するか、その消息を明らかにすべきだ」と述べた。同時に、エリトリア国内に広がる刑務所を外国の関係者に公開すべきである。
エリトリアは、ソマリアの反政府勢力アル・シャバーブ支援を理由に国連制裁を科されている。イサイアス大統領は、そんなエリトリアのイメージを回復しようと国連総会に出席する。そのため現在ニューヨークを訪れている。
過去10年の間に、イサイアス大統領はすべての独立系メディアを閉鎖。エリトリアを、恣意的逮捕や拷問、失踪そして死のはびこる国に変えただけでなく、出国がほぼ不可能な国にしてしまった。本報告書「エリトリア:10年の長きにわたって−エリトリアの『消えた』政治囚に関するブリーフィング・ペーパー」は、2001年9月に拘禁されて以来、外部の人間から誰一人として目撃されていない著名な政治囚について、これまでに分かっている情報をまとめている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ダニエル・ベケレは、「エリトリアは事実上巨大な監獄だ。イサイアス大統領が政治囚を釈放して法の支配を回復させるまで、エリトリアへの国際圧力を継続せねばならない」と述べた。「その手始めに大統領は、長期にわたる秘密隔離拘禁という非人道的措置をやめ、まずは、家族や外国関係者による被拘禁者との面会を認めるべきだ。」
2001年9月中旬、イサイアス大統領は、大統領の政治手法を批判する公開書簡に署名した政府高官11名の逮捕を命令。その際、同書簡など政権批判の情報を掲載したジャーナリスト10名も逮捕し、すべての独立系新聞社を閉鎖した。
それ以降、家族や弁護士、刑務所監視団体など、刑務所関係者以外の人は誰ひとりとして、拘禁された人びと(男性20名と女性1名)を目撃していない。被拘禁者はいちども聴聞の機会を与えられず、それどころか全員が秘密収容施設内で独房監禁に置かれた。元看守らの報告によると、うち10名が監獄内ですでに死亡し、残った11名も身体的あるいは精神的な衰弱状態にあるという。この情報をヒューマン・ライツ・ウォッチは独自に検証できていない。
イサイアス大統領の基本的人権否定の政策により被害を受けた人びとのうち、最も有名なのがこの21名であるが、人口500万のエリトリアで、この10年間に犠牲になったのは数十万人といわれる。政府を全面的に支持していないと疑われた人びとや、無期限の強制的「ナショナルサービス」活動から脱出を試みた人びとなど、多数が投獄された実態について本ブリーフィング・ペーパ―は詳述。エリトリア国民は裁判を受ける権利も認められず、その他、いかなる公平な機関への申立も認められていない。その他にも、数千人を超える人びとが、同国政府が認めないエホバの証人、福音派キリスト教会、エリトリア正教改革派などの宗教団体への所属を理由に投獄されている。
2002年以降、18歳〜60歳までのエリトリア人男女が、無期限の「ナショナルサービス」に就かされている。強制徴集された人びとの多くは、政府関係の営利事業や軍高官が所有する企業で強制労働させられている。軍指揮官によって徴用された女性の性的虐待の頻発も報告されている。賃金は極端に少なく、家族を養うには不十分だ。
2009年のヒューマン・ライツ・ウォッチ報告書「生涯奉仕:エリトリアにおける国家弾圧と無期限徴集『ナショナルサービス』」は、政治的理由や宗教的理由ゆえに拘束されている政治囚/宗教囚や「ナショナルサービス」(国家奉仕)の環境に抗議したり、長期間の強制労働から逃れようとした個人に対して行なわれている拷問の実態を調査して取りまとめている。激しい暴行に加えて、拷問方法には水責め、苦痛を伴う姿勢での手かせ足かせ装着、タイヤに縛つけて転がす、木にぶら下げる等が含まれる。拘禁環境も残酷で非人道的、かつ屈辱的だ。何カ月または何年もの間、地下に拘禁されている囚人が多い。日中は焼けるように暑く、夜間は凍るように寒い輸送用コンテナに拘禁されている人びともいる。医療はほとんどなく、拘禁下の死亡者が後を絶たない。
国連難民機関によると、毎月およそ3千人のエリトリア人が同国から脱出している。「ナショナルサービス」からの離脱や許可無しの出国を、政府は国家に対する反逆とみなしている。
国連は、ソマリアへの武器禁輸措置への違反および2008年のジブチ領侵略により、イサイアス大統領およびエリトリア政府に制裁措置を発動している。大統領はこれに異を唱えるために、現在ニューヨークを訪問中である。大統領は、国連はエリトリアに不利な証拠に反論する機会も、公平な審理の機会も与えなかったと主張。しかし彼自身、過去10年にわたり、こうした権利を自国民から奪ってきた。
前出のアフリカ局長ベケレは、「国連でロビー活動するより、イサイアス大統領は、自国民に対し自由な発言や思い思いの祈りを許すべきだ。そして、望む国民には出国を許すべきだ」と述べる。「大統領が弾圧政策を変えない限り、エリトリア人は長期にわたって、いつ終わるともしれない『ナショナルサービス』や弾圧、拷問にあえぎ続けることになる。」
エリトリアでは、出国するというただそれだけの行為により、危険にさらされる。よって、すべての政府は、母国から逃れてきたエリトリア人を送還してはならない。
http://www.hrw.org/ja/news/2011/09/23/10-0
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