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宮崎智之 [プレスラボ/ライター]
ノストラダムスとは訳が違う地震予測続発で大混乱! 「首都直下4年以内に7割」に翻弄される東京人の今
マグニチュード7級の首都直下地震が4年以内に約7割の確率で発生する――。そんな東京大学地震研究所の予測が大きな話題となり、首都圏に衝撃が走ってから早1ヵ月。あくまで“予測”であるためか、その後、同研究所の再計算によって4年以内の発生確率が50%以下へと変化したためか、今のところ大きな混乱はなく、東京の街を見まわしても多くの人が普段と同じように生活しているように見える。しかし、東日本大震災の記憶が新しいだけに、水面下では事態を深刻に受け止める人がいるという話も耳にする。一見静かに見える東京の街で、この予測は人々のマインドや行動をどう変えたのか、あるいは何も変わっていないのか。今、東京に暮らす人々の実態を取材した。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)
首都直下、東海地震、福島原発直下…
飛び交うM7〜8級の地震予測に戸惑いも
東日本大震災から早くも1年を迎えようとしているが、いまだ余震が続いており、不安な毎日を過ごしている人も多いことだろう。そんななか、昨年9月に東京大学地震研究所の平田直教授らのグループが「マグニチュード7級の首都直下地震が4年以内に約7割の確率で発生する」との予測を発表、4ヵ月後の今年1月下旬に読売新聞がその発表を報じたことで首都圏には大きな衝撃が走った。
その後、同グループは昨年9月中旬から12月までに観測した地震データを加えて再計算し、「今後4年以内に50%以下」との試算をまとめたが、“1999年7月人類滅亡”と噂された「ノストラダムスの大予言」とはやはり訳が違う。東日本大震災の深刻すぎる状況を見ているだけに、誰もが無視できないリスクだと言えよう。
ただ、それだけではない。その他にも、メディアを通して私たちを不安に陥れるような様々な「予測」が飛び交っている。首都直下に関しては、政府地震調査委員会が「30年以内に70%」との予測を発表しているほかに、京都大学の研究者によって「5年以内に28%」という予測も出されている。
首都直下以外では、同調査委員会が「マグニチュード8.1前後の東南海地震が30年以内に70%程度」のほか、同じく「8.1前後の択捉島沖が30年以内に60〜70%」などの試算を発表。そして「いつ発生してもおかしくない」とされている東海地震に至っては参考値としながらも、「マグニチュード8程度の地震が30年以内に発生する可能性は88%」としている。また、東北大の教授らは今月14日発行の欧州の専門誌で、福島原発直下で起こる地震のリスクが高まっていると発表したことも今、注目の的だ。
そもそも、人々が困惑する原因の1つには、飛び交う「予測」の量が多すぎて、その真偽を判断しかねるという現状がある。したがって、これらをすべて気にしていたらきりがないためか、ほとんどの人はこれらを冷静に受け止め、いつもと同じ生活を送っているように見える。
しかし、東日本大震災が発生する直前までの同地震の発生リスクは10年以内で4〜6%だったこともあり、決して安心はできない。表立って恐怖心を表明しないまでも、具体的な数字として表された首都直下地震等のリスクに対して潜在的な不安を抱えたまま暮らしている人も多いようだ。
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考えすぎは駄目だと分かっていても……」
科学的根拠がない流言飛語に一喜一憂
「考えすぎても駄目ということは分かっているんですが、裏を返せば起こらない可能性は30%しかないわけなので、やっぱり心配。友人との会話のなかでも、この予測の話はよく出てきて、『ヤバいよね』と不安がっています」(30代女性)
この女性は、普段と同じように会社に出社し、週末には友人とショッピングを楽しむ。いつもと変わらない日常に忍び込んでくる「漠然とした不安感」をどのように解消しているのか問うと、「なるべく考えないようにするしかない」という解答が返ってきた。
確かに、「交通事故に遭うリスクに怯えていたら、まともに社会生活はできない」との言説もあるように、考えたからといってリスクが軽減するわけではない。しかし、研究機関などから発表される予測や、出どころが分からない流言飛語まで含めて大量の情報が出回りすぎているため、「考えないようにすることしかできない」と言った方が正しいのかもしれない。
そうした不安は我々の心を確実に浸食し、日常生活に影響を及ぼし始めている。
「原発事故の際によく言われていた『ただちに影響はない』に似ていると思います。『ただちに地震は起きない』と言われても、『ただちに』が取れない限りは『いつかは起きるんでしょ』と考えてしまうのが普通。だからといって、今すぐ仕事を辞めてどこか安全な場所に逃げるかと言ったらそこまでではないですが、『もし地震が起きたら自分も死んでしまうかも』と考えることは日常の中でも多くなってきました」(20代男性)
さらに、科学的な根拠に基づかない「予言」も横行し、最近では「予知夢騒動」がネット上を騒がせた。「クジラが打ち上げられた」など自然現象が大地震の予兆だとされる噂も溢れている。
もちろん、眉唾の「予言」については、まともに信じる必要はない。「動物が異常行動起こしたとか、富士山が活動期に入ったとか噂は限りなくありますが、特に気にしていません」(30代男性)との声もある通り、ほとんどの人は流言飛語として捉えている。
その一方で、こうも情報の洪水に晒されると、感覚が麻痺して危機感がなくなってしまうのではないかと心配する声もある。
「なんでいつも噂に踊らされるんだろう、悔しいって思うと同時に、気を抜かないためにも、あってもいいのかなって思う。悪質なデマじゃなければですが」(30代女性)
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今でも住宅は耐震性よりコスト重視?
「職場」と「個人」では防災意識に差も
では実際に、首都直下地震などの地震発生確率が報道されてから、人々の防災意識はどう変化したのか。防災に関する意識調査を紐解くと、職場と個人では防災意識に大きな差が見られることがわかった。
労務行政研究所のジンジュール編集部が行った職場と個人の防災に関する調査によると、勤務先の地震・災害対策全体について「十分である」と答えたビジネスパーソンの割合はたったの 4.1%。「全く足りない」「やや足りない」との解答は59.5%に及んでいる。ちなみに、この調査の実施期間は2012年1月27〜31日であり、比較的最近の防災意識を反映したものと言える。1日の中で多くの時間を過ごす職場での安全対策は、ビジネスパーソンにとって重要な関心事のようである。
しかし勤務先の防災対策を不安視する意識の高い人が多い一方、「自分の周囲で震災の教訓に対する意識・関心が薄らいでいるか」の質問には59.6%の人が「そう思う」「ややそう思う」と感じていることが分かっている。
渋谷区にある不動産会社、トラスト高橋不動産の担当者も、職場と個人の防災対策に対する考え方のギャップを感じているようだ。
「店舗や事務所を借りる企業のお客様はこの1月下旬から新耐震性基準に対応している物件を求める傾向が高まっています。一方個人のお客様は新耐震性基準よりもやはり予算を重視し、今も6〜7万円ほどの安価なアパートを希望するケースが多いですね」
東日本大震災発生直後は、原発事故のさらなる深刻化や、新たな震災を心配する声は大きかった。しかし、時が経つにつれ、様々な予測が飛び交いながらも、人々の危機感や不安感が、具体的な防災行動に結びつかなくなってきているように感じられる。日常を取り戻すことは良いことではあるが、再び大災害が起こった時に「想定外だった」と繰り返すようでは、東日本大震災の教訓を全く活かせない。
そこで、やはり重要なのが防災対策だ。では、一連の「地震予測」に反応して具体的な対策を講じる人たちは、どのような対策を施しているのだろうか。
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警戒しすぎず、今できる防災対策を
「1月末から防災用品が顕著に売れ始めています。震災からまもなく1年ということもあり、防災コーナーを各店舗でつくっているのですが、そちらで特に売れているのは転倒防止金具やポールでしょうか」
こう話すのは、首都圏を中心に店舗展開をするホームセンター・島忠ホームズ。一連の「予測報道」に触れ、一度は低下した防災意識が高まりつつあるのは事実だろう。
さらに、周辺にも、参考にしたい防災対策を行なっている人たちがいた。
「インターネットで地震の予知夢を見たというのが話題になったことを受けて、デマだとは思いましたが、念のためラジオと懐中電灯、電池を購入しました」(20代女性)
「万が一の時に備えて、風呂の中には常に水を張るようにしています。断水になってしまった際に役に立つかもしれないと思うので」(30代男性)
「東日本大震災のとき、他の東京に住む人と比べて、なぜか自分のマンションだけ被害が大きかったような気がするんです。被害といっても物が落ちたりする程度ですが、明らかに友人宅より物が散乱していました。耐震性が低いんじゃないかという疑いが日々に大きくなってしまったので、5月の更新で引っ越そうと思っています」(20代女性)
結局は「備えあれば憂い無し」と言ってしまえば元も子もないが、東日本大震災以降、日本のあらゆる場所で地震発生のリスクが高まっていることには変わりない。東北や関東では「非日常」を過ごすような感覚が続いていることは多くの識者が指摘している通りだ。これまでは深く考えなかった地震発生に対する確率論的なリスクを感じざるを得ない状況になった以上、これからも我々の潜在意識に影響を及ぼし続けるだろう。
「ノストラダムスの大予言」との違いは、何年後、何十年後、何百年後かは分からないにしても、根拠となるデータが積み重なり、発生可能性が極めて高いことだ。となれば、警戒し過ぎて日常生活に支障をきたす事態は避けつつも、リスクがあることを忘れずに防災対策に励む。そして自分が生きているうちに起こらなくても後世に危険性を伝えていく。我々に唯一できることは、それくらいのことしかないのかもしれないが、3月11日を前にして、それらを肝に銘じておきたい。
世論調査
質問1 発生可能性が高まっていると言われる首都直下地震に備えて何か防災対策をしていますか?
万全にしている
少ししている
していないがこれからする予定
していないし、これからもしない予定
わからない
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