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南海トラフ巨大地震の新想定 高い津波、強い揺れ拡大
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120202/scn12020208090001-n1.htm
2012.2.2 08:08 産経新聞
南海トラフ巨大地震
http://sankei.jp.msn.com/science/photos/120202/scn12020208090001-p1.htm
■防災対策 見直し急務
東海、東南海、南海地震が起きる南海トラフ(浅い海溝)沿いの最大級の巨大地震について、国の新たな想定が公表された。震源域を従来の約2倍に拡大し、高い津波が起きる津波地震との連動を初めて想定。マグニチュード(M)は東日本大震災と同じ9・0と推定しており、沿岸の自治体などは防災対策の見直しを迫られている。(原田成樹、長内洋介)
東海地方と西日本の太平洋側に伸びる南海トラフは、沖合のフィリピン海プレート(岩板)が陸側のユーラシアプレートの下に沈み込む場所だ。両プレートの境界部は、ひずみの蓄積が限界に達すると大きく滑り、約100〜150年間隔で東海、東南海、南海地震を繰り返す。
大震災ではプレート境界の深い場所だけでなく、ごく浅い場所も同時に動いて津波地震が発生し、甚大な被害が出た。これを受けて内閣府の検討会は昨年末、従来の東海、東南海、南海地震の3連動に加え、津波地震も同時発生する新たな想定を公表した。
平成15年に国が策定した3連動の想定(M8・7)と比べて震源域は約2倍に拡大しており、津波の高さや強い揺れの範囲が大きくなるのは確実。震源域から求めた地震の規模はM9・0だが、津波地震が連動した場合はさらに大きな規模になる。
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新たな想定は歴史記録に依存する従来の発想を転換し、最新の研究成果を反映させたのが特徴だ。
南海トラフのプレート境界は深さ10〜30キロで強く固着し、ひずみを蓄積しているとされ、従来はこの範囲を震源域とした。しかし、近年の高感度観測で、もう少し深い場所でもわずかな固着があり、「低周波地震」と呼ばれる特殊な微小地震が起きていることが判明。新たな想定では、この地震が起きる陸側の深部まで震源域を拡大した。
低周波地震を発見した東大地震研究所の小原一成教授は「深部が大きく滑ることは考えられないが、巨大地震のときに同時に破壊される可能性があり、震源域の拡大は妥当だ」と話す。
一方、震源域の南西側は九州東部沖の日向灘へ広がった。日向灘と同様に巨大地震の記録がなく、プレート境界は強く固着していないとされた福島、茨城両県沖が大震災で連動したことを重視した。
南西側の端は海底山脈の九州・パラオ海嶺までとした。この付近はフィリピン海プレートが厚く、地殻構造が異なることが最近の調査で判明したためで、さらに西への連動は起きないと判断した。
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新想定に基づく津波高や震度は3〜4月に公表されるが、独自に想定を見直す自治体も出始めた。新たな想定津波は徳島県が最大20・2メートル、三重県が同19・16メートルなど従来の2倍以上で、軒並み20メートル級の巨大津波が襲うシナリオだ。
九州では大分県が日向灘への拡大を見込んで最大12・48メートルの津波を新たに想定し、避難経路の確保など防災対策の策定に着手した。
宮崎県も昨年11月、「日向灘を震源地とするM9・0」を想定する方針を有識者会議で決定。今年3月末までに津波高を推計する計画で、国より厳しい想定になる可能性もありそうだ。
原子力発電所も万全の備えが求められる。以前から東海地震の想定震源域の直上にあり、菅直人前首相の要請で運転を停止した中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)は、これまで沿岸にある高さ10〜15メートルの砂丘で8メートルの想定津波を防げるとしていた。
しかし、大震災後の緊急安全対策で15メートルの津波を考慮することになり、年内完成を目指して高さ18メートルの防波壁の建設を進めている。同社は「新たな知見が得られれば必要な対応を行う」としている。
四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)は、今回の新想定で震源域の境界線上に乗った。大震災後、想定津波を最大4・25メートルから13・5メートルに引き上げて対策工事を実施。ストレステスト(耐性検査)の1次評価結果を国に提出した3号機は、14・2メートルまで原子炉の冷却機能を維持できるとしたが、余裕は70センチしかない。揺れを含め対策の再検討を迫られる可能性がある。
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