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被災地の感染症対策
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投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 09 日 02:52:42: 6WQSToHgoAVCQ
 

rom MRIC

  □ 被災地の感染症対策


   ■ 木村盛世

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 ■from MRIC
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 2011年3月11日に発生した、巨大大地震は、3カ月が経過した今でも、大きな後遺症
を残している。仮設住宅2万8千戸が完成したものの、避難者数は、9万人、不明者約
8千人、といった状況である。このような状況が続く中で、感染症対策は大きく立ち
遅れている分野の一つである。

 何故、感染症対策が問題になるかと言えば、大きく分けて2つある。一つには、衛
生状態が決して良いとはいえない、避難所生活を続けることにより、肺炎や、下痢性
疾患などが流行することである。もう一つは、予防接種の不徹底により、ワクチン予
防可能疾患(Vaccine Preventable Diseases)の蔓延が起こり、子供たちが、当該疾
患で死亡したり、重篤な後遺症に、生涯苦しめられ、可能性が生じる。

 まず、避難生活を営む人たちの中で、今後注意をすべきであろう感染症について、
論じてみる。

 まず、重要なのは、急性胃腸炎である。急性胃腸炎の原因としては、種種のウイル
スや細菌がある。まず、流行が懸念されているのが、ウイルス性の腸炎であり、代表
的なものは、ノロウイルスやロタウイルスによるものだ。これらのウイルスは、感染
力が強く、少量のウイルスで感染すると考えられている。感染経路は、主に不適切な
し尿による、糞口感染である。予防のためには、し尿や、吐物の適切な処理、手洗い、
汚染された衣類を捨てる、などがある。

 ノロウイルスやロタウイルス性腸炎は、震災初期の、衛生状態が悪い中で、もっと
も流行が懸念されたものであるが、震災から3カ月が経過した現在でも、流行が報告
されている。
http://www.kaiteki-kadenlife.com/virus/virus_002/205450.html

 実際、被災地といっても、既に仮設住宅が整っている場所もあれば、未だに、上下
水道の整備されていない、避難所が乱立する地域もあり、その差による、感染症発生
率の違いが、今後、もっと顕著になってゆくであろう。

 ウイルス性腸炎に加えて、梅雨を迎えたこれから、病原性大腸菌やサルモネラ菌に
よる食中毒も多くなってくる。特に、衛生状態の悪い避難所生活を続けている人たち
の間での流行は、もっとも懸念されるところである。感染症の問題は、人間間だけに
とどまらない。家畜や、ペットなどの死骸が放置されている地区では、ハエや蚊が多
量発生している。本来動物に寄生する病原体が、ハエや蚊、場合によってはゴキブリ、
ネズミ等を介して、人にうつることがある。

 こうした病気を、「動物由来感染症」と呼ぶが、コレラ、チフスなど、かつて日本
で流行を起こした感染症が、猛威を振るわないとは限らない。

 また、昆虫を媒介とした、「ツツガムシ病」も流行のおそれがある。ツツガムシ病
は、リケッチアであるツツガムシに刺されて感染する。熱が出て死亡する例もある。
3月に、福島でツツガムシ病が報告されており、これから夏に向かう季節には、増え
ることが予想される。

 今まで述べた感染症は、被災地のどこで、どの程度の規模で起こっているのか、正
確に把握できていないのが、実情である。その、大きな理由としては、被災地の他の
問題が多すぎて、こうした、感染症にだけ、注意をむけられない、という被災地の現
状があるからだ。

 被災地の医療活動は、感染症も含めて、DMAT、FETPや医療ボランティアの活動に支
えられてきた。災害が起こった1,2カ月は、ボランティアも多く入り、物資も届く。
メディアも関心を持って、取り上げ、被災者も、周りの助力に関して、感謝の念を抱
く。所謂、「ハネムーン期」と呼ばれる時期である。しかし、3カ月が過ぎた今、メ
ディアの関心も薄くなり、ボランティアも自分たちの本来の仕事に帰ってゆくように
なった。インフラが速やかに回復した地域と、そうでないところの格差感が広がって
いる。

 整備が立ち遅れたところからは、以上述べたような感染症のリスクが高い。こうし
た地域への、専門家派遣などの重要性は、多くの人が指摘するところである。それは
もちろん大切であるが、我が国に多くの人材がいるか、といわれれば、そうではない。

 被災地の行政は、疲弊している。それは、彼らたち自身も、被災者であるからだ。
震災後に、避難所のトイレが、し尿であふれ返っている状況を見かねた医療者が、地
方自治体に改善を求めたところ、「し尿の衛生管理は保健所(厚生労働省)だが、処
理施設自体は、国土交通省の管轄であり、環境省にも連絡しなければ、動けない」趣
旨の事をいわれ、大変困ったという、話を聞いた。縦割り行政の弊害、といってしま
えばそれまでであるが、し尿であふれ返ったトイレを放置すれば、感染症が広がるこ
とは明らかである。そして、それを処理するための枠組みがややこしすぎるために、
現場も、地方行政も、要らぬ労力を使うはめになる。

 国が、平常時のような、法の枠組みを順守することに固執せず、地方行政と、被災
地の現場が、動きやすくするための、「規制緩和」を速やかに、実行することが、最
も求められることである。これは、震災に限らず、どんな危機においても、当てはま
る。

 次に、第二の問題である、「ワクチン」である。私は、この問題を、最も重要視し、
かつ、国として早急にとりくまなければならない、と思っている。

 ワクチンには、必ず副反応がともなう。稀ではあるが、重篤な副反応により、命を
失うこともある。しかし、その危険性を差し引いても、国民あるいは世界全体という
マスと、当該疾患から守るという、利益が上回るときに導入されるものである。これ
は、正に、公衆衛生(Public Health)の概念そのものである。

 日本は、諸外国に比べて、ワクチン対策に置いて大きく後れを取っている。このこ
とは、我が国の公衆衛生行政が立ち遅れていることを、明確に示している。

 WHOが勧告しているワクチンの中で、我が国が未だに導入していないものは多い。
その中には、接種しないことによって、子供の命が失われる危険性があるものが多い。
例えば、細菌性髄膜炎(Hib)、B型肝炎、肺炎球菌、ロタウイルス性下痢症、である。
また、接種によって、実際の病気が引き起こされることが明らかになって、他国が取
りやめている、ポリオ経口生ワクチン(OPV)を、未だに使い続けている、珍しい国
でもある。

 また、導入しているワクチンも、「任意接種」という、「打っても打たなくても良
い」といった印象を与えかねない、名のもとに、接種率が上がっていない、重要なワ
クチンもある。Hibや、小児用肺炎球菌ワクチンが、この代表格であろう。

 このように、平時においてもいい加減なワクチン政策が、震災によって、より、悲
惨な状況になっている。それは、必要なワクチンスケジュールを管理する、行政窓口
が立ち行かなくなったり、被災により、ワクチンを打つ医師がいなくなったり、ある
いは、ワクチンそのものが無くなってしまった、などの理由からである。

 平時と違う状況としては、建物の倒壊や、瓦礫などによってけがをし、汚れた傷か
ら、破傷風が生じる、という例があげられる。幼少時にワクチン(DPT)を打っていれ
ば、免疫が数年持続する、と言われているが、震災によってこれが接種できない場合、
あるいは、決められた回数打てない、といった場合には、感染する危険性が高まる可
能性がある。また、けがによって感染する疾患として、B型肝炎があげられる。B型肝
炎は血液を介してうつり、諸外国では、出生とほぼ同時に打つことが、ルチンになっ
ている。しかし、我が国では、公費化されておらず(ワクチン行政の一部に組み込ま
れていない)、今後、将来にわたって、どの程度B型肝炎が発症するかは、未だ不明
である。調査が行われる、という話もきかない。

 このような、「けが」などの震災前期に多く起こる病態に加え、これから、長期的
に考えてゆかなければならない疾患がある。それらは、麻疹(はしか)、細菌性髄膜
炎、肺炎球菌と言った、重篤な疾患である。いずれも、小児において、重要な病気で
ある。それは、罹った場合、命をおとしたり、重篤な後遺症を残すことがあるからだ。
被災により、体力が低下した子供たちに、今後広がる可能性が指摘されている病気で
ある。

 幸いにも、効果的なワクチンがあり、VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチ
ンで予防可能な疾患)の代表であるが、「幸い」という文言が、日本にはあてはまら
ない、のは、前述したとおりである。

 また、もうひとつの懸念は、「日本脳炎」の流行である。日本脳炎は、豚から、コ
ガタアカイエカという蚊を媒介して、人間に感染する。日本脳炎ウイルスは、ほとん
どの場合、人間に感染しても、無症状ですむが、約1/100 から1/1000の確率で、脳炎
を発症する。その場合の致死率は20から40%と高率である。

 これまでは、コガタアカイエカが生息する、南や西日本地帯が危険だとされてきた
が、病気を媒介する、コガタアカイエカの分布が、北上している傾向があり、今後被
災地でも、起こる可能性はある。
http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig02.gif

 日本脳炎は、ワクチン接種で予防できる感染症の一つである。しかし、2005年5月
30日の、厚生労働省による、日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、3〜6歳で
の日本脳炎ワクチンの接種率が減っている。現在では、徐々に回復していると推測さ
れるが、未だ100%接種をのぞむのは無理だろう。
http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/QAJE02/fig04.gif
 
 繰り返すが、我が国の公衆衛生のインフラ整備は立ち遅れている。それが、ワクチ
ン政策に如実に表れている。

 現在、被災地には、UNICEFが入って、活動をしている。半世紀ぶりの日本への支援
である。その活動は、以下のサイトに紹介されている。
http://www.unicef.or.jp/osirase/back2011/1103_09.htm

「被災地の復興は、ボランティアの活動なしにはあり得ない」というのは、誰もが実
感するところであろうが、日本は、GO(ボランティアとはよばないかもしれないが)、
NGO問わず、外部からの支援を効率的に活用することが、あまり上手くないのではな
かろうか。

 特に、海外のNPO受け入れについては、もう少し、効率的に行ってもよいのではな
いか、というのが個人的な感想である。言葉の障壁は、我が国にとって大きな問題で
あるが、それ以前の問題として、政府や地方自治体が、こうした「助けの手」を、な
かなか受け入れられない、「文化」のようなもの、が存在しているのではないか、と
感じている。

 繰り返すが、被災地における「感染症対策」は、十分ではない。しかし、それが表
立ってこないのは、被災地の状況があまりに酷過ぎて、隠れてしまっているからであ
る。

 感染症対策の中で、最も重要なのは、衛生状態悪化による感染症の流行と、ワクチ
ン政策不備による、子供たちの重篤な感染症罹患である。特に後者は、「次世代を担
う世代を守る」、という国の根本的責任そのものだ。被災地の感染症対策を、みて見
ぬふりをせず、国の最重要課題として取り組むよう、希望する。


木村盛世
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コメント
 
01. 管理人さん 2011年7月10日 14:50:51: Master
sciさん、板違いです。ご理解いただけるまで投稿可能数を0にしておきます。
http://www.asyura2.com/11/kanri20/msg/142.html

2. 2016年4月23日 23:28:01 : Guykg8ilX6 : gc9nOTajxtY[9]
楽天ニュース


ノロウイルス感染拡大=トイレ断水原因か―南阿蘇村の避難者移動へ・熊本地震

時事通信 / 2016年4月23日 22時22分
http://news.infoseek.co.jp/topics/160423jijiX046


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