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「茨城沖が震源、関東を大震災が襲う」
米科学誌『サイエンス』衝撃のレポートを緊急検証する!
写真・図解http://gendai.ismedia.jp/articles/-/6836
2011年06月06日(月) フライデー :現代ビジネス
「3・11の大地震は人々を驚かせました。あのエリアでM9規模の地震が起きるとは、誰も考えていなかったからです。しかし、それは明らかな間違いでした。
図中の『?』がサイモンズ教授が指摘する危険区域。図下部には、3つのプレートが交わる地点がある Image courtesy of Science/AAAS
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今私たちが心配しているのは、あの大震災の震源の南側のエリア、右図で示すと、『?』の箇所、つまり茨城沖です。ここはほとんど注目されていませんが、それだと今回と同じ間違いを犯すことになるのではないか。ここで大地震が起きる可能性があると思っています」
カリフォルニア工科大学の地球物理学の教授、マーク・サイモンズ氏が、米国の科学雑誌『サイエンス』のオンライン版『サイエンス・エクスプレス』に、「茨城沖を震源とする大地震が起こる可能性がある」とするレポートを5月20日、発表した。東日本大震災以降、各地で余震が続いている。
大震災に誘発された巨大地震が再び起きるのではないか。不安な日々を送る我々にとって、サイモンズ教授のレポートは衝撃的だ。そこで、本誌がサイモンズ教授に直接真意を質すと、冒頭のように強く警告したのである。
教授は今回の地震のメカニズムをどうみているのか。
「我々は、今回の地震でどの程度日本の陸地が動いたかを、日本の地質調査のGPSネットワークを使い測定しました。その結果、東日本を中心とする本州の海岸線が、太平洋の方向に5m移動したことが分かったのです。沿岸の陸地は50cm沈下しています。また、津波警告ブイを使って、日本の沖からアラスカ、アメリカ、ハワイへと移動した津波を測定しました。
これら2つの調査から得られたデータを基に、東北沖の海底から地下20kmの地点にある、日本列島が乗っている北米プレートと、太平洋プレートとの境界の断層で、どのような『滑り込み』が起きたかを分析しました。結果、断層のいくつかの地点では、断層が最大で60m移動したことが分かりました。
北米プレートが、太平洋プレートの方向に60m動き、太平洋プレートが日本側に潜り込む形になったのです。大きな『滑り込み』が起きたエリアは、南北約250km、東西約150kmの範囲に広がっています。釜石から福島までのエリアです」
3・11の地震により、陸地がどれだけ動いたかを表した図。仙台市(図中Sで表示)の北側での動きが著しい Image courtesy of Science/AAAS
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今回の大震災は、陸地側の北米プレートと、その下に潜り込む太平洋プレートの境界面の断層がずれて起きた。右図は地震により陸地がどう動いたかを表すが、教授によれば、海洋部の断層のズレは最大60mにも及んだという。
それにより、東北地方の太平洋岸にある町を残らず呑み込んだほどの大津波が発生したのだ。教授はこうしたメカニズムを踏まえた上で、今回断層が動かなかった、茨城沖が危ないと言う。
「大地震が茨城沖の北側で起きたので、この茨城沖のエリアに大きなストレスを与え、両プレート間の断層が『スタックしている』、つまり、『一時的に動かない状態で止まっている』可能性があります。それが急に動き出すと大地震が起きるのです。ただし、別の可能性として、断層がゆっくり移動していることも考えられます。その場合は地震は起きません。正確なところはまだ分かりませんが、もしスタックしていれば大地震が起きる可能性は高い。日本は、この地域を早急に研究すべきです」
■房総沖も危ない
日本の専門家はどう受け止めるのか。
東京大学地震研究所教授の古村孝志氏は、サイモンズ教授のレポートにある図を見ながら分析する(1ページの図)。
「茨城県の沖合で『?』が置かれている位置よりも少し陸地側、ここが普通の人が考える茨城沖ですが、この場所はM7.4やM7.5ぐらいの地震が10年ごとに起きているので、まだ問題ではないのです。論文が指摘しているのは図中の『?』の場所、海溝寄りのところです。この『?』の範囲の部分だけが、地震によるプレートの大きな『滑り込み』が止まっている。これが今後、動き出したら非常に危険だと言っているわけです」
琉球大学名誉教授・木村政昭氏は、「メカニズムは基本的に私の考えと同じ」とサイモンズ教授の指摘を認めるが、次に巨大地震が起きる震源域に関しては、若干のズレがあると言う。
「彼は、今回地震が起きた震源域の南側に集中的にストレスがかかっているので、M8クラスの大地震が起きる可能性があると指摘したわけですが、私は震源域はさらに南、房総半島の沖になると思います。房総沖は、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの3つのプレートが1ヵ所で集合している非常に複雑な構造になっている。我々が持っているデータでは、今、ストレスを蓄えている地点はこの房総沖なのです」
京都大学大学院理学研究科教授・平原和朗氏も、房総沖が危ないと考える。
「房総沖では、1677年に延宝地震というM8の地震が起きているので、大地震発生の可能性はあります。今回の大震災で、プレートの『滑り込み』が起きています。地震が起きた後も滑っている。現在では銚子沖まで達しており、銚子沖の線を越えると房総に入ってきます。プレートが滑りすぎると、地層が伸びをしたような状況になり、脆くなって地震が起こります。今後は、『滑り込み』がどう発展していくかが怖いところです」
延宝地震では大津波が襲ったことが分かっている。前出・古村氏はこう語る。
「そもそも海溝は、プレートがつるつる滑って、ひずみがたまらない場所、地震は起きにくいところと考えられてきました。ところが、今回の東日本大震災は海溝付近まで震源域が伸びて、大きな津波を起こした。ですから、茨城沖でも同じように考えなくてはいけない。茨城沖で巨大地震が起きた場合、沿岸で5~8mの津波が考えられます」
実は、茨城沖には地震の観測点が少なく、現時点で正確な予測をすることは難しい。それでも、茨城ないし千葉県北東沖の海底下に太平洋プレートが潜り込み、限界に達して地震を引き起こすというメカニズムは、はっきりしている。もし巨大地震が起きた場合、首都圏に近いだけに、東日本大震災以上の大きな被害を与える恐れが強いのだ。
■関東の被害は甚大なものに
科学ジャーナリスト・大山輝氏がこう言う。
「房総半島沖が震源となった元禄の大地震(1703年・推定M8.2)では、内房から江戸を津波が襲ったと記録に残っています。もし、現代の東京で同じことが起これば、埋め立て地である江東区や、標高の低いところにある地下鉄の駅などは、大きな被害が出るでしょう。これからの季節で怖いのは、大雨と同時に津波が来たら、ということです。水量はとてつもないものになるでしょう」
1923年の関東大震災は、フィリピン海プレートが北米プレートに沈み込む相模トラフが震源で、東日本大震災と同じプレート境界型の地震だった。この地震で東京は壊滅的な被害を受け、10万人超の死者を出したが、もう一つ、こうした直下型地震の恐れもある。
「3・11の余震は、震源となった宮城県沖より南で、多く発生しています。中越や富士山麓、遠くは鹿児島県でも起きている。それだけ広範囲に土地のゆがみが出ていますから、関東で直下型地震が起きても、何ら不思議はない状態なのです。
1855年の安政江戸地震は、前年に起こった安政東海地震によって引き起こされた直下型の地震だったとみられます。そう考えると、東日本大震災も、新たな巨大地震を引き起こす可能性は十分にあるのです。直下型地震で何よりも怖いのは火災で、東京の下町のように住宅が密集している地域では、その被害は甚大になるでしょう」(大山氏)
次の巨大地震はいつ、どこで起きるのか、安心できない日々が続く。
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