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【社会部オンデマンド 大震災編】津波の有無がすぐ分かるのはなぜ? 10万通りの地震を想定し3分以内に発令
図解http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110522/dst11052218000013-n1.htm
2011.5.22 18:00 産経新聞
「地震が発生するとすぐに、テレビのテロップやニュースなどで津波の有無が報じられますが、津波の有無はどのようにして分かるのでしょうか? 津波予報の仕組みについて教えてください」=東京都品川区の会社員、武井千里さん(36)
■かつては20分かけて計測
「東北地方で震度3の地震がありました。この地震による津波の心配はありません」。地震が発生してから津波の予報を知らせるテレビのテロップが流れるまで、わずか3分。気象庁では「世界に誇る」(同庁)という最新のコンピューターシステムで津波の高さや到達時間を予測している。
気象庁によると、国内で津波予報が始まったのは昭和27年。当初は地震計とコンパスを用い、約20分かけて行ってきた。その後、地震や津波の観測データをリアルタイムで解析する「地震活動等総合監視システム(EPOS)」の導入で予報の精度が向上。さらに、平成11年からは津波の高さを数値で予測する「量的津波予報」を開始した。
津波予報には、大津波警報=津波の高さ3メートル以上▽津波警報=同2メートル程度▽津波注意報=同0・5メートル程度−があり、量的津波予報の開始以降、気象庁は38件の予報を発令。うち4件は、東日本大震災が発生した3月11日以降に発令された。
津波は、地震によって海底の地盤が上昇したり下降したりし、海水が押し上げられたり押し下げられたりして周囲に広がることで発生する。内陸部の地震で津波が起こることはほとんどない。
水深が深いほど速く伝わり、水深5000メートルの沖合で地震が発生した場合、津波のスピードはジェット機並みの時速800キロととてつもなく速い。水深が浅くなるにつれてスピードは徐々に鈍るが、海岸に到達した時点でも時速36キロと短距離走のオリンピック選手並みだ=図参照。
大きな地震が沿岸付近で発生した場合、津波の大きさを一から計算していたのでは間に合わない。5年の北海道南西沖地震では、津波が地震発生後約5分で海岸線に到達したことを契機に、津波予報の第1報は3分以内に発令されるようになった。
量的津波予報では、数値シミュレーション技術を導入して津波の高さを予測している。あらかじめ日本周辺の約4000地点について、約10万通りの地震を想定し、推定した津波の高さをコンピューターに入力。地点ごとに「どれくらいの規模の地震が起きればどの程度の津波が発生するか」を予測できるデータベースを構築している。
地震が起きると、この想定の中から類似のケースを選び出した上で津波予報を発令し、全国の自治体や報道機関を通じて発表、注意を呼びかける。津波災害の恐れがない場合は地震情報とともに「津波の心配なし」と発表する。
■“空振り”に終わるケースも
東日本大震災では、気象庁は発生から約3分後の3月11日午後2時49分、大津波警報を発令したが、当初、地震の規模が実際のマグニチュード(M)9・0ではなく、M7・9とされたため、宮城県沿岸で6メートル、岩手、福島両県沿岸では3メートルなどと予測した。
その後、岩手県釜石市の沖合約20キロにあるGPS波浪計で6メートル以上の波を観測したため、同3時半には宮城、福島、岩手、茨城の各県の沿岸と千葉県九十九里・外房で「10メートル以上」などと上方修正した。
震災の影響で、検潮所の停電やデータ送信装置の破壊が相次いだが、福島県相馬市の観測点で、観測装置の記録を復元して導き出された津波の高さは「9・3メートル以上」。気象庁の検潮所などで記録された津波のデータとしては観測史上最大となった。
ただ、気象庁がこれまでに発表した予報で観測値が予測を上回ったことはほとんどなく、“空振り”に終わるケースもあった。19年1月に起きた千島海溝付近の地震では、オホーツク海沿岸で1メートルの津波を予測していたにもかかわらず、観測された津波はわずか8センチで、住民の避難行動につながらなかったという。
津波の規模は同じ震源や同じマグニチュードであっても、断層の傾きや断層運動の方向で大きく変わる。地震直後に断層の詳しいメカニズムを把握するのは技術的に難しいことから、予報では津波がもっとも大きくなる「傾斜角45度の逆断層」を想定している。
同庁地震津波監視課の桑山辰夫調査官は「津波予報は迅速性を優先し、起こりうる最大値を使用した最悪のケースを発表してきた」と説明する一方、「東日本大震災ではすぐに津波の発生を予測できたが、予測を上回る大きさだった。修正した予測が住民に伝わらなかった可能性がある」としている。 (川畑仁志)
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