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東日本大震災で、巨大津波が東北から関東にかけての太平洋側を襲った。高さは10メートルを超え、各地で住宅や鉄道などを破壊し、多くの死者を出した。国土地理院の調査によると、津波によって浸水した面積は500平方キロメートル以上で、東京・山手線の内側の面積の約8倍にも達する。
岩手県釜石港にある世界最深の防波堤でも防ぎきれなかった。63メートルの海底にある基礎が削られて倒れた。独立行政法人・港湾空港技術研究所の分析によると、防波堤は水面下に残った部分が津波のエネルギーを抑え、約14メートルの高さになるところを8メートル程度に押し下げた。
それでも市街地に大きな被害を出した。同宮古市田老地区では、地元の人たちが「万里の長城」と呼んだ高さ10メートルの巨大な防潮堤を乗り越えた。
津波は台風や低気圧に伴う高波と違い、海底から海面までの水が巨大な塊となって押し寄せてくる。防波堤にぶつかると跳ね返り、進む波と戻る波が重なって高さは1.5倍にもなる。乗り越えた防波堤を、陸地側から基礎を削って破壊する。防波堤や防潮堤の多くが壊れたのはこのためだ。
東北地方の太平洋側では、たびたび巨大津波に見舞われてきた。代表例が1896年の明治三陸地震だ。海側の太平洋プレート(岩板)と陸側の北米プレートの境界で発生。津波で1万以上の家屋が全半壊し、死者は約2万2000人。揺れの割に津波が大きく、津波地震というタイプだった。
今回の地震は揺れも大きく、津波地震とは違う。太平洋プレートに引きずり込まれた北米プレートが元に戻る衝撃で発生した。地震を起こした断層は長さ約500キロメートル、幅約200キロメートルと推定されている。
関西大学の河田恵昭教授は「震源の深さが20キロメートルのときに津波は大きくなりやすい」と指摘する。今回の震源は約24キロメートルで、危険な深さに近かった。
東京大学の古村孝志教授が津波のデータからプレート境界で北米プレートが動いた量を計算したところ、最大で55メートルもあった。古村教授は「常識的には考えられない数字で、別のメカニズムがあるのかもしれない」と話す。通説ではマグニチュード(M)9級でもずれは20〜30メートル程度とされていた。
巨大な断層の動きによって大量の水が持ち上がった。水深約5800メートルの海底が約5メートルも上がったというデータがある。上昇した大量の海水は大きなエネルギーを持つうねりとなって広がった。
津波のエネルギーは深い海では勢いがほとんど衰えない。水深が浅い沿岸に近づくと、高さが急激に増す。岩手県沖や宮城県の沖合10〜20キロメートルに設置された全地球測位システム(GPS)波浪計で観測された高さは5〜7メートルだった。だが各地の海岸では10メートルを超す高さに達し、陸地に押し寄せてきた。
高さ1メートルの津波は、厚さ6ミリの鉄板を曲げる。2メートルなら木造家屋はひとたまりもなく壊れる。日本建築学会の調査では、宮城県の海岸沿いで浸水地域の木造家屋はほぼ全壊していた。
三陸海岸は「リアス式」と呼び、入り江が複雑に入り組む。狭い場所に進むほど津波は高くなる。駆け上がって到達した最高点を示す「遡上高」は宮古市で37.9メートルにもなった。
日本近海のプレート境界では近い将来、東海、東南海、南海地震の発生が危惧されている。三重、和歌山、高知県などで大きな津波が来ると予想されている。3つの地震が連動すれば、高さは各地で10メートルを超す。北海道の十勝沖から千島沖にかけての千島海溝でも、巨大津波に見舞われる可能性がある。
「想定外」の巨大津波に見舞われてしまうと、防波堤などハード面での対策は期待できない。
関西大の河田教授は「長く揺れたと感じたら、すぐに高台や鉄筋コンクリートのビルに逃げる。避難が何より大事なことを忘れないでほしい」と訴える。
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