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復興需要狙う米天然ガス
2011年4月21日 木曜日
福島第1原発の事故が世界のエネルギー政策に及ぼす影響は大きい。原子力を補填する資源として急浮上しそうなのが天然ガス。近年勃興著しい米シェールガス業界が日本の復興需要を射程にとらえた。
「福島第1原子力発電所の事故によって、原発に対する日本国民の信頼感は地に落ちた。欠けたエネルギー供給量を埋めるには石油、石炭、天然ガスなどの活用を増やす必要がある。その中で最も有望なのは天然ガス。日本の復興需要に牽引されて世界的に利用が加速するだろう」
英バークレイズ・キャピタルのアナリストであるビリアナ・ペリバノバ氏はそう予測する。
特に米国では「シェールガス」と呼ばれる非在来型天然ガスの開発・生産が急増しており、東日本大震災を機に投資と開発がますます過熱しそう。米東部最大のシェールガス田「マーセラス」の鉱区を訪ねた。
24時間ぶっ通し、4カ月で掘る
その開発現場は、かつて製鉄の町として知られたペンシルベニア州ピッツバーグから30kmほど南西に下った田園地帯にある。樹林の向こう側に農家の家屋 が見える。そんな場所に高さ40mほどのリグ(掘削装置)がそびえ立ち、地中に埋め込む鉄管を積んだ超大型トレーラーが往来している。
この鉱区を開発しているのはレンジリソースという大手資源開発会社だ。テキサス州の巨大シェールガス田バーネットに匹敵するとも見られるマーセラスの開発に早くから取り組み、2004年に初めて商業化にメドをつけた先駆的存在である。
「合計24人の作業員が12時間シフトで昼夜ぶっ通しで掘り続けている。2週間ここで寝泊まりして働き、次の2週間は帰宅して休む。4カ月という短期間で6本の井戸を一気に掘るのさ」
現場監督のビリー・ドン氏は訛りのきつい英語で話す。ホンジュラス、メキシコ湾のほか、米国ではテキサス、ニューメキシコ、コロラド、ユタ、ハワイ、ル イジアナ、アーカンソー、ミシシッピ、カリフォルニア、そしてペンシルベニアの各州の天然ガス開発現場で、32年間にわたって働いてきたベテランだ。
レンジリソースが開発中のシェールガス鉱区。現場監督のビリー・ドン氏(左)は業界歴32年の大ベテランだ
シェールガスは頁岩(シェール)と呼ぶ地下深い岩盤層に大量に含まれているが、通常の縦穴を開けるだけでは商業的に成立するだけの十分なガス量を生産で きない。ところが2000年代に入り、岩盤層に沿って横穴を掘る水平掘削技術と、砂を含んだ水を高圧で送り込み岩盤に割れ目を作ってガスを取り出しやすく する水圧破砕技術の開発が進み、両者を組み合わせることによって生産量を飛躍的に向上させることに成功した。
穴の直径は15cmほど。この現場では地質調査に基づいて、地表から1900mまで真っすぐ下に掘り、そこから緩やかに穴を曲げて深さ2300mの シェール層で水平にする。そのまま900mほどの横穴で岩盤を貫く。コンピューター制御で正確に目標に達するという。リグは下部に走行用ベルトを装備して いて地上を横移動できるようになっており、1本の井戸を掘ると数mほど離れた位置に次の井戸を掘る。この現場ではそれを6回繰り返す。
掘削が完了すると、リグは分解・撤去して次の現場に運ばれる。レンジリソースはマーセラス開発用に12基のリグを保有・運用しており、既に250本のガス井を掘った。今後数十年間で2万本を掘る計画だ。
掘った井戸には地上から高圧の水を送り込む。シェール層の岩盤を割り、わずかに交ぜた砂を隙間に入り込ませてガスの抜け道が閉じないようにすると、その 後10年以上にわたって天然ガスが噴き出してくるという仕組みだ。現場はきれいに整地・植林し、ガスをためてパイプラインに送り込む設備がわずかに残され るだけである。
「ほかのエネルギー資源と違って地上の環境負荷は最小限に抑えられる。地主に対しては1本の井戸を掘るごとに約400万ドル(約3億4000万円)を支 払っている。過去2年間の支払総額は50億ドル(約4300億円)だ。立派な舗装道路を整備し、何千人もの雇用を創り出し、地元経済に大きく貢献してい る」。レンジリソースのマット・ピッツァレラ広報部長は胸を張る。
原子力や風力、太陽光発電などは政府からの補助金や債務保証がなければ成り立たないが、シェールガスは援助不要の自立したエネルギー資源だ。しかも、天 然ガスは安い。2005年8月末に米南東部を襲ったハリケーン・カトリーナによって在来型天然ガス施設が大被害を受け、一時100万BTU当たり15ドル 近くまで高騰したが、その後のシェールガスの大増産によって現在は4ドル程度で安定している。
「日本復興を支えるエネルギー資源として天然ガス需要が増えれば、米国産シェールガスの重要性はますます高まるだろう。天然ガスの黄金時代がやってくる」(ピッツァレラ氏)
LNG輸入基地を輸出用に転換
米エネルギー情報局は、昨年12月に公表した2011年版エネルギー需給見通し(速報版)でシェールガスの採掘可能埋蔵量を827兆立方フィート (cf)と推計し、2010年版の347兆cf比で2.4倍に大幅上方修正した。また、2035年時点の年間生産量推計を2010年版の6兆cfから12 兆cfに倍増させた。2035年には米国の全エネルギー消費の24%を天然ガスが占め、その供給量のうち45%を国内産シェールガスが占める、とも予測し ている。
米国はロシアを超え、天然ガス生産量で世界首位に躍り出たと見られる。ほんの数年前までは天然ガスの輸入を検討し、LNG(液化天然ガス)の受け入れ基 地の整備を進めていた。ところがその必要性が薄れたため、逆に「輸出基地」に計画変更する例も出てきた。例えば、シェニーレ・エナジーやフリーポート LNGなどが既にエネルギー省に認可申請済みである。
一方、天然ガス生産2位のチェサピーク・エナジーは、LNGを大型トラックやバス、乗用車の燃料として普及させる計画に意欲を示しており、これは3月 30日にバラク・オバマ大統領が表明したエネルギー安全保障政策の内容とピタリと合致する。シェールガス事業にもLNG事業にも、日本の大手商社がこぞっ て参画している。
福島原発が発信源となった波紋は、米国産LNGの輸入増という形で日本に跳ね返ってくるのかもしれない。
水野 博泰(みずの・ひろやす)
日経コミュニケーション記者、日経E-BIZ副編集長、日経ビジネス編集委員、日経ビジネスオンライン副編集長を経て、2008年4月よりニューヨーク支局長。
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