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日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>東日本大震災
アメリカ人が考え抜く「被災者のためにできること」草の根から巻き起こる日本復興ムーブメント
2011年4月18日 月曜日
加藤 靖子
義援金 米国 ヨガ サンフランシスコ 東日本大震災 ベイクセール
4月2日、米カリフォルニア州サンフランシスコ。東日本大震災の義援金を集めるために開催された「Bakesale for Japan」の会場に、続々と人が集まってきた。
ベイクセールとは、クッキーやカップケーキなどの菓子を作って寄付し、イベント会場で販売して、集まった金を寄付する仕組みだ。米国では伝統的な募金集めの方法で、長い間、教会や学校で行われてきた。
全米で巻き起こる「パンを焼いて被災者を救おう」
今回は東日本大震災の被災者のために募金を集めようと、サンフランシスコで食品販売店を営むサミン・ノスラットさん(写真下・左から2人目)が仕切った。ノスラットさんがこの企画を仲間に相談すると、西海岸から東海岸まで、瞬く間に参加者の輪が広がった。サンフランシスコで立ち上がったこのイベントは、最終的に、ニューヨーク、シカゴ、ハワイなど全米44カ所で実施された。
会場の1つである、サンフランシスコのパシフィックハイツ地区にあるレストラン「SPQR」。この日は、昼の通常営業をやめて、ベイクセールの会場として使うことにした。この会場には、寄付する焼き菓子を両手に抱えてヨロヨロとやって来る人、笑顔で菓子を買っていく人、店先で声をかけるボランティアの人などがひしめきあい、活気で溢れていた。ベイクセールには焼き菓子を寄付したいという人々が次々とやって来て、その販売総数は把握しきれないほど多かったという。
30個以上の菓子を作ってきたサンフランシスコ在住のポ・リャングさんは、積極的にイベント会場の手伝いをしていた。「小さい頃に香港にいて、日本の文化が大好きだったの。日本の震災報道を見て、何か助けになりたいと思って」と語る。イベント前日の夕方からキッチンに立ち、当日は朝6時に起きて菓子を仕上げた。
「日本が好きで、住んだこともある」というフィリップ・ドゥエリーさんは、自作のレモンパイを10個持ち込んだ。約4時間をかけて作ったという。
ボランティアの募集にアメリカ人が殺到
こうした個人が作った焼き菓子の寄付ばかりではない。各会場には、地元のベーカリーやレストランなどから、たくさんの菓子が寄付された。
ボランティアとして会場で働いていたシルバーナ・ポーセデューさんはこう話す。
「普段ならわざわざ買いに出かけるほどの、サンフランシスコ屈指の有名店のお菓子も多いのよ」
Bakesale for Japanのために支援に乗り出した企業も、数えられないほど多い。ベイクセールの会場を提供した店、1日の売り上げの2割を寄付すると決めたベーカリー、ロゴを作ったデザイナー、ポスターを作成した印刷会社…。それぞれの会社の「売り」を惜しみなく投入した。
ボランティアの人数も驚異的だった。会場で働くボランティアを募ったところ、志願者が多すぎて、断らなければならなかったほどだ。
「特に苦しみを感じている時、必要なのは人との繋がりです。みなで集まり、苦しみを感じている人を助けたいんです」
そう語っていたノスラットさんのもとに、菓子を作って寄付する人、買いに来る人、会場をサポートする人など、多くの人が集まっていた。
全米で行われたBakesale for Japanでは、合計12万ドル以上が集まった。一つの菓子が2ドル〜10ドルほどであることを考えると、どれだけ多くの人が支援したかが分かるはずだ。
高級ブランドやヨガ教室も義援金集めに走る
シリコンバレーのハイテクベンチャーに勤める奥田恵代さんは、ベイクセールにボランティアとして参加していた。作業の合間に手を止めると、肩を落としてこう話した。
「私ね、今すごく反省しているんです。ハリケーン・カトリーナも、ハイチ地震も見てきたのに、あの時、自分は何もしなかったなぁって」
今、目の前では、多くのアメリカ人が日本を救おうと汗を流している。このベイクセールだけではない。奥田さんは、アメリカ人が凄い勢いで日本への支援活動を進めていることに驚いているという。震災直後から、毎週どこかで募金集めのイベントが行われている。
ニューヨークでは、4月2日から2日間、マーク・ジェイコブスやアレキサンダー・ワンなどニューヨークを拠点に活躍する100以上のブランドが合同でチャリティーセール「ファッションガールズ・フォー・ジャパン」を行った。各ブランドはサンプル商品を寄贈し、全て定価の半額以下で販売した。会場には朝から長蛇の列ができ、大勢の客が商品を買い求めた。2日間に渡って行われたセールの売り上げは27万ドルで、全額を被災者救援基金へ寄付する。
カリフォルニア州のビクラム・ヨガでも、東日本大震災の義援金を集めるためにチャリティー・ヨガが繰り返し催されている。生徒からのレッスン代は、全て米赤十字に募金される。
ヨガ講師として参加しているシンシア・ウィアーさんは、「私の心は日本人だと思っている」と言い切る。高校生の時に日本に住んだ経験から、日本のことをとても近い存在だと感じているという。震災のニュースを聞いて以来、心が落ち着かず、教室で日本への支援を呼びかけてきた。
あるチャリティークラスの終わりに、ウィアーさんは生徒にこう話した。
「5月にはこの近くで義援金を募るマラソンがあります。行ける人は、ぜひ参加してください。私たちはこれからも、日本を支援していきます」
そうすると生徒のアメリカ人女性が話し始める。
「被災者の悲しみはとても深いはずです。まだまだ助けを必要としています。みんなで協力していきましょう」
チャリティークラスのレッスン代と、ヨガ教室に設置した募金箱によって、義援金は合計5000ドル以上も集まった。
アメリカの震災支援の動きを見ていくと、一つの特徴が見えてくる。義援金集めは、募金箱を手にして、金を入れてもらうだけではない。菓子や洋服の販売、ヨガ教室などで、より多くの人を巻き込むインセンティブを作っている。そして、活動の意義を説いて、さらに多くの人に参加してもらう。そんな一人一人の小さな積み重ねが、より大きなムーブメントを作っていく。
一人一人が日本支援の輪を広げる
それは、アメリカの草の根運動に対する信頼を表しているのではないだろうか。一人が動きだせば、大きな流れが作れることを、アメリカ人は肌感覚で分かっている。
そこが私も含めた多くの日本人との違いだろう。募金や節電、献血が、今できることだと思っていた。被災地に気を使うあまりに、消費やイベントまで自粛してしまう。しかしアメリカに目を向けると、よりダイナミックな動きを作り出して、日本を支援しようとしている。
ベイクセールを発案したノスラットさんは言う。
「私一人でできることは、とても限られているわ。人を集めて、そこから大きなインパクトがある流れを作ることが、今、一番やらなければならないことだと思う」
アメリカ人の思いは、今、確実に日本の復興を後押しし始めている。
このコラムについて
東日本大震災
3月11日午後、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の極めて強い地震が起き、宮城県北部で震度7の烈震を観測。過去最大規模の地震災害となった。大きな被害の出た東北、関東地方などの被災地ではライフラインが破壊され、都市機能が回復するまでには長い時間がかかる見通しだ。
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著者プロフィール
加藤 靖子(かとう・やすこ)
在米ジャーナリスト。中央大学卒業後、米ペース大留学。2008年から日経ビジネスニューヨーク支局編集部を経て、在米ジャーナリストとして活躍。2011年に米カリフォルニア州シリコンバレーへ移住し、経済、政治、社会問題を中心に取材・執筆。テクノロジー関連企業に強い。
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