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東日本大震災:津波警報に限界 住民「堤防越えぬはず」
http://mainichi.jp/select/today/news/20110416k0000m040172000c.html
2011年4月16日 2時30分 :毎日新聞
東日本大震災の発生3分後、気象庁が実際より大幅に低い「岩手県で予想される津波の高さは3メートル」との大津波警報を出したため、「それなら防潮堤を越えない」と避難しなかった人が多数いたことが、被災者の証言で分かってきた。気象庁が当初、地震の規模をマグニチュード(M)7.9と推定したことが原因だが、3分間でM9.0という巨大地震の規模を把握することは不可能に近い。東海地震などでは1分後に津波到達が予想される地域もあり、専門家は「強く揺れた時や警報が発表された時は、とにかく逃げるしかない」と呼びかけている。
津波の情報は、地震の震源情報(緯度、経度、深さ)と規模を基に出す。気象庁は、津波の可能性がある日本近海の地震とそれによる津波の高さなどについて、あらかじめ約10万通りを模擬計算し、結果をデータベースとして保存。発生した地震の情報と突き合わせることで、素早く警報や注意報を発表できるようにしている。
だが、東日本大震災は、長さ約400キロ、幅約200キロの断層が動くことで発生。全体が動き終わるまでに約3分間かかり、揺れは約5分間続いた。気象庁が目標とする3分以内に警報を出すには、途中段階のデータしか使えず、実際の30分の1以下の推定規模で予測することになった。
この結果、岩手、福島県沿岸の津波予想高は、5段階中(3メートル、4メートル、6メートル、8メートル、10メートル以上)最低の3メートルと発表。午後3時14分に6メートル、午後3時半に10メートル以上と変更したが、岩手県宮古市では午後3時26分に8.5メートルの津波が観測され、情報は後手にまわった。
津波情報を3分以内に発表するのは、93年の北海道南西沖地震の際、早いところでは約3分後に津波が襲来したためだ。しかし、地震の正確な規模を知るには、地震のメカニズムや海外の地震計の地震波から読み取れる情報などを細かく分析する必要がある。東日本大震災の場合、海外約40地点の観測データを詳しく解析してM9.0と分かったのは、発生2日後だった。
気象庁地震予知情報課の中村雅基調査官は「改善すべき課題。強い揺れの前の地震波を解析するなどの手法を検討したい。ただ、技術的な限界があるので、津波予想高にかかわらず、警報発表時は高台などに逃げてほしい」と話す。
被災地を調査した片田敏孝・群馬大広域首都圏防災研究センター長(災害社会工学)は「3メートルという数字や過去の経験に縛られて避難が遅れた人は多い。想定や行政の情報にとらわれず、自分の身を守るために主体的に判断し、より安全な所を目指して避難してほしい」と指摘している。【飯田和樹】
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