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FD改ざんスクープの板橋記者は消されてしまったのか!?
http://60643220.at.webry.info/201205/article_2.html
2012/05/11 14:30 朝日新聞 読後雑記帳
大阪地検特捜部・前田検事のフロッピー改ざん事件をスクープした朝日新聞社会部の板橋洋祐記者が、「記事が出る前に記者が逮捕され、資料は押収されてしまうのではないか」という恐怖感があったことを、ある公開対談の席で明かしている。その板橋記者の名が紙面から消えてひさしい。いま、どこでなにをしているのだろうか。東京地検の組織ぐるみの犯罪の取材はしていないのだろうか。あるいは、検察審査会に関する重大な事実をつかみ、発表の機会を待っているのだろうか。それとも、取材チームからはずされ、地方に飛ばされてしまった、とか、病床に伏しているとか……。
公開対談は朝日新聞社の入社希望者を対象にした説明会で行われたもので、板橋記者は新聞記者の仕事の意味や自身の使命感を語りながら、当時の取材を振り返っている。対談の相手は、人事部門の採用担当部長。入社説明会の開催日時は不明だが、内容からいって昨年春から夏にかけてと思われる。
http://www.asahishimbun-saiyou.com/report/kisha_taidan_01.html
その中から、FD改ざん事件にふれた部分を、以下に引用する。
(引用開始)
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――今回の事件の話に入っていきましょう。写真があります。説明してもらいながら見ていきましょう。これは?<以下、会場での写真略>
板橋 この右側の高いビルが、大阪地検が入っているビルです。その中には大阪地検はじめ関西の地検をとりまとめる大阪高等検察庁も入っています。この中に私たちも取材に入ったり、ここから出てくる検事に取材したり、というふうにしています。
――すごい高層ビルですね。この中を自由に取材できるんでしょうか?
板橋 私たちが入ってはいけないフロアもあります。「特捜部のフロアは入ってはいけません」というふうになっています。
――特捜部のフロアには入れないんですね。
板橋 入れません。
――そうすると、とにかく外で。
板橋 外で待ったり、ほかの階、食事をするところやお茶をするところで待ったりしています。
――これは?<写真略>
板橋 これは、フロッピーディスク改ざん事件の後、メディア各社が大阪地検へ写真を撮りに集まってきているところですね。
――朝日新聞が報道した後、大阪地検の前はこういう状況になったということですね。こちらは?<写真略>
板橋 これは、証拠改ざんした検事の上司たちが逮捕されて、大阪拘置所に入るところを撮った写真です。このように捜査の過程を一つひとつ追っていくことも記者の仕事なので、入るところでも、その時刻と合わせてきちんと確認します。
――拘置所に入ったかどうか。その時間は。そういう事実関係を確認する。
板橋 その通りです。
――では、この現場にも行ったのですか?
板橋 私の同僚記者が行っています。「いま確かに入りました」と連絡があり、写真記者に写真をおさえてもらう。
――これは?<写真略>
板橋 これは、証拠改ざんをした検事が逮捕された後、すべての検察庁をとりまとめる最高検察庁(最高検)が会見をした場面です。
――これは東京ですね。<写真略>
板橋 東京です。
――では、この場面に板橋さんはいない。
板橋 はい、私はいません。こういう時こそ、オールジャパンの連携です。朝日新聞社には東京司法クラブの記者がいるので、その記者から取材結果が届き、情報を共有します。
――東京司法クラブというのは、東京本社の社会グループで検察を担当する記者たちのことですね。
板橋 そうです。
――その記者たちに「記者会見ではこんな質問をしてくださいね」と頼むわけですね。
板橋 記者会見の前に、東京の担当記者と「今日のポイントはここだと思う」「いままでの取材でわかっているのは、こういうことなので、このへんを聞いてみてください」とお願いしたり、「会見でこんなことが出たけど、大阪で確認できる?」と打ち返しがあったりします。
――最高検の幹部が記者会見をするのは相当めずらしいことなんですよね。
板橋 はい。最高検が逮捕という行為をしたこと自体、今回のフロッピーディスク改ざん事件が初めてでした。
――あ、そうなんですか。過去にないんですか?
板橋 過去にありません。それぐらい重大事だと認識したのだと思います。
――ふつうは地検がまず捜査して逮捕する。
板橋 そうです。
――最高検が事件に乗り出していって、誰かを逮捕するということは、これまでなかった。
板橋 最高検は統括するところなので、実際に逮捕する機関ではないですね。
――この事件はさらに特捜部長も逮捕されるという展開になっていったわけですね。これは?<写真略>
板橋 これは、逮捕された特捜部長と副部長が勤めていた検察庁に、検察が家宅捜索に入るところです。
――検察庁に検察官が家宅捜索に入る。相当、めずらしいというか。これはどこの地検ですか?<写真略>
板橋 神戸地検ですね。
――では、取材の話を聞いていこうと思います。この取材は、そもそもの発端が裁判の中で「何かおかしいぞ」という動きがあって、そこから始まっているんですよね。どういう状況だったんでしょう。
板橋 はい。私はきっかけとなる郵便不正事件をそもそもの捜査段階から取材していたんですが、それが1年後に裁判になった時、裁判の取材を手伝いました。その時に、捜査時に認めていた話が全部ひっくりかえるわけです。「検事さんから無理矢理言われたので、サインしました。本当は違うんです」と。それを目の当たりにしました。なんだろう、このずれは、と思いました。ずれの原因を探りたいと思ったのが、取材のきっかけです。
――裁判の中ではそのずれの原因はわからないんですね。
板橋 はい。「特捜部の検事さんから無理矢理、話を作られました」と言われるんですが、具体的に当時いったい何があったのかはわからないわけです。
――そうすると、これまでどんな捜査が行われていたのか、調べようと思った。そういうことなんですか?
板橋 そうです。
――そんなことをふだんするんですか?
板橋 次の捜査がどういう進展をするのか、ということを取材するのが主な仕事です。たとえば特捜部が次は誰を逮捕するのか、逮捕した人を次はどんな容疑で再逮捕するのか、という動きを追っていくことが検察担当の記者です。今回はまったく逆で、捜査していたことは本当に正しかったのか、つまり、そこにミスはなかったのか、というような裏側からの取材でした。
――そこまでふだんはやらないのに、やろうかと思ったのは、なにか、あったのですか?
板橋 法廷で起きたことが、私にとって衝撃的だったんです。公判の中で特捜部の捜査の問題点を指摘される場面を見て、「検察担当の僕がやれることは何なんだろう」と考えました。
――検察担当は何人でやっているんですか?
板橋 検察担当は2人です。
――じゃあ、その2人で取材を始めたんですか?
板橋 そうです。大阪司法クラブというところに5人記者がいまして、キャップというとりまとめ役の記者と、裁判担当といって裁判だけを取材する記者が2人いて、そのほかに検察担当といって特捜部などを取材する僕ともう1人後輩の記者がいます。日常は、さきほど言った捜査の進展を取材しながら、同時に、当時の捜査に問題がなかったかどうかを検証しようという取材を僕と後輩記者の2人でスタートしました。
――検証の時に、取材はうまく進んだんでしょうか?
板橋 進みませんでした、まったく。
――どういう反応だったんですか?
板橋 捜査の進展を追う時は、ある程度、信頼関係ができてくれば、「こんな法律を勉強しておいたら」というアドバイスをくれる捜査関係者もいます。しかし、今回は「いま有罪を公判で立証しようとしている事件の問題点は何ですか」という取材をしていかなければいけません。「なんだ、おまえは。そんな取材は初めてだ」と言われ、かなり難航しました。
――そうした中でも、どこかで、なにかの端緒をつかむわけですよね。
板橋 「いま、公判でこういう状況になっていて、僕は疑問を持っています。その疑問を一緒に考えてほしいのです」「当時の捜査を知っているのでしたら、今からふりかえって、何ができたのか、一緒に考えましょう」と、検察関係者に本音を話すなかで、フロッピーディスク改ざんの端緒をつかんだわけです。
――しかし、「一緒に考えましょう」で、そこまで行くんですかね。
板橋 もちろん、全員が全員、そんなに教えてくれるわけではないんですけれども。それでも、考えの合う方がいたということでしょうか。
――検察関係者だって、当然、守秘義務があります。
板橋 あります。
――みんな、そうですよね。公務員ですからね。そういう中で、言ってはいけないことはあるとは思うんですけれども、それでも何らかの情報を教えてもらえることがあるわけですね。
板橋 はい、あります。
――それは、なぜだと思いますか?あるいは、なぜ、それができると思いますか?
板橋 捜査でいろいろ動いていることを、じかに捜査関係者の隣に行って、捜査の進展状況を聞くことができるのは、記者という職業しかない、と僕は思っています。だからこそ、真剣に検察関係者に質問をして、そういうなかで、その真剣さにほだされて話してくれる人もいるんじゃないかな、と思うんです。
――証言を聞いた時、板橋さんの気持ちはどうだったんですか?
板橋 驚愕でした。証拠、それも客観証拠ですから、刑事裁判において客観証拠は無条件に信じられているのが実態です。たとえば携帯電話の履歴や、銀行通帳は、客観的な証拠なので、これに沿って裁判が進み、あるいは、裁判員の方も客観証拠は「本当なんだな」と思って判断します。その客観証拠のデータを、検事が自分の都合のいいように、検察の主張に都合がいいように変えていたということに、私は強い憤りも感じました。
――その後、どういうふうに取材を進めていこうと思ったんですか?
板橋 はい。証言だけで記事にするという考えも持ったんですが、それでは読者に説得力をもてない、納得してもらえないんじゃないかと思ったんです。というのは、「○○さんが、こういうことを言っています」という記事の「○○さん」は匿名になるわけですから、非常にインパクトが弱いものになる。とすれば、この証言を裏づけようと考えました。そこで、フロッピーディスクを専門機関で解析しようと、思いつきました。解析することで、そのフロッピーディスクの中に、改ざんをしたデータの痕跡が残っているかもしれないと考えました。
――なるほど。フロッピーディスクを入手して解析に出さなければいけないという取材の必要性を感じたんですね。そうした時に仲間の記者たちはどういう反応だったんですか?
板橋 上司であるキャップに「検事が証拠を改ざんしたという話がある」と言ったら、キャップは「おれも腹を決めた。徹底的に取材しよう」と言ってくれました。僕が聞いてきた話を信じてくれたことが、非常にうれしかったです。「徹底的に取材しよう」と僕もまた気持ちを新たにした瞬間でしたね。
――徹底的に取材するために「腹を決めなければいけない」と言うほどの覚悟が要るのは、なぜなんですか?
板橋 検察担当の記者が検察を批判するという意味で、覚悟がいるということです。「検察と闘いになってもいい」「検察最大といってもいい不祥事をつかんだのであれば、新聞社としてきちんと事実を報じていく」という気持ちが、「腹を決めた」という発言につながります。
――信頼関係を築いてきた検察関係者もいるわけで、その関係者の顔が浮かびますよね。人間関係が切れてしまうかもしれないし、信頼関係にキズが入るかもしれない。そうした心配は?
板橋 はい。捜査情報がとれなくなるという心配はありましたね。ただ、それと今回の証拠改ざんということを比べた時、証拠改ざんをしたということは、僕らが表に出さなければ世の中に出ることのない情報だ、と思いました。実際、地検の中では改ざんを調査しているという動きはなく、改ざんした行為を隠したような動きもありました。自分たちしか知らないことを世の中に出そうと思いました。
――まさに自分たちしか知らなかったわけですね。
板橋 はい。
――私たちが書かなければどうなっていたと思いますか?
板橋 世の中に出なかったと思います。
――しかし、「裏づけるのが大変だし、このネタはしんどいよな」と、ひよってしまうことはなかったんですか?
板橋 これ、悩みましたよ、確かに。一番の敵は何だったのかと思うんですけど、僕は自分自身なんだなと思っています。誰も知らない事実をつかんだ時の本当の敵は、他社の記者ではなく、自分なんだと思っています。というのは、取材している自分があきらめてしまったり、「もういいや」と思ってしまったりすれば、その事実が読者に届くことがないからです。「自分はどうすべきなのか」と自分に問いかけたり、上司や同僚に相談したりする中で、これはやはり書くべき事実だ、と思いました。読者に伝えなければいけない話なんだと気持ちが固まっていきました。
――上司からも「そんなの、やめてくれよ」と言われてしまったら、この話はなかったわけですね。
板橋 そうですね。そこでまた説得しなければいけませんけれども。
――しかし、そこまで覚悟を決めなければいけない、あるいは覚悟を決める原動力となったのは、何だったんですか?
板橋 検察関係者と話す時にはよく「不正を明らかにしたいんです」と言っていたんです。検察関係者も当然、世の中の不正を明らかにしたいと思っていますので、到達点は一緒です。じゃあ、その不正が、今回は検察庁の中にあった。「それは検察庁だから書くのをやめます」というのは、おかしなことで、自分の当初の目標通り、証拠の改ざんという不正を明らかにするべきだろうというふうに思っていました。
――そうした気持ちを仲間のキャップや記者たちも信頼してくれた、ということがあって取材が動き出していったのですね。
板橋 はい。
――肝心のフロッピーディスクを入手するのも大変だったんですよね。
板橋 はい。
――どんな経緯だったんですか?
板橋 取材を進めると、フロッピーディスクは、証拠物返却として、検察庁から持ち主に返却されていました。その持ち主の厚生労働省の元係長の弁護人に協力の依頼に行きました。「フロッピーディスクのデータが改ざんされている可能性があるので、フロッピーディスクを貸してほしい。もし借りられたら、解析に出して、改ざんされていたことを裏づけたいんだ」と弁護人に話しました。僕は安易に考えていて、検察の犯罪を明らかにするためなら簡単に貸してくれるものと思っていました。ところが、弁護人が言ったのは、「その話は信じられない」でした。「検察庁がまさか改ざんするとも思えないし、仮に本当だとしても、検察担当記者のあなたが、検察の不正を記事にすることができるんですか」と問われました。その時、メディア不信というのはここまで来ているんだな、と感じました。問われているのは記者の覚悟なんだな、とも思いました。さきほどお話ししたように、すでに同僚や先輩と議論をして、「この問題を書くんだ」と思っていましたから、「これは書きます。検察担当の記者だからこそ、書けるんだと思います」と答えました。
――すぐに納得してくれましたか?
板橋 その後、お話しさせていただく中で、「そこまでの気持ちがあるのだったら、協力しましょう」と言われました。真剣さを見ていたんじゃないかな、と僕は思っています。上司に言われて来ただけなのか、そうでないのか。そこを見られていたんじゃないのかなと思っています。
――それで、そのフロッピーを借りてきて、解析に出すわけですね。
板橋 はい、そうです。
――解析は、大変だったんですか?お金とか、手間とか。
板橋 今回は、「朝日新聞の調査報道」として書こうとキャップや同僚たちと話し合っていたので、解析代など費用は全部、朝日新聞社で出しました。ですから、そのために社会エディター(部長)や、原稿を実際に見るデスクにプレゼンテーションをしていくわけです。「フロッピーディスクの改ざんを書くには、解析が必要で、解析にはお金がかかりますが、やらせてください」と話して、承諾を得ていきました。
――いくらぐらいかかるんですか?
板橋 まだ公にはしていないんですけど、それなりのお金ですよね(笑)。
――そこで「そんなお金なんか出せないよ」と言われてしまったら、その記事は。
板橋 出なかったと思います。実際は、デスクや部長は「バックアップするから、なにか必要なことがあったら、いつでも言ってくれ」という話でした。
――解析の結果が返ってくるわけですね。その結果を見た時の板橋さんの気持ちは?
板橋 祈るような気持ちで待っていたので、「これで書ける。これで記事になるんだ」と、ほっとした感じでした。
――その時に初めて書けると思った?
板橋 はい。解析が出たことで、「証言と、それを裏づけるものを得た」と、ほっとしました。
――なるほどね。その後は、今回の第一報が出て、急展開していくわけですね。
――記事が出た後、最高検察庁がその日のうちに検事を逮捕するという動きになり、取材の舞台は東京にも移っていくわけですね。その時に東京との連携も必要になる。そこはどのように?
板橋 今回はたまたま私が情報を聞いて、この記事に結びつきましたが、一連の取材を通して感じたのは、チームの力でした。新聞社って、こんなにチームの底力があるんだ、と感じました。というのは、最高検を担当しているのは東京本社の記者なので、その記者とこれまでにわかった取材結果を共有しました。そして東京司法クラブの記者たちの取材で、最高検の捜査状況が記事になっていく。検察担当ではない記者たちは、捜査状況とは違う視点から取材にとりかかります。たとえば、今回の事件をどう見ていますか、と識者たちにインタビューしてくれる。今回のフロッピーディスク改ざんに使われたインターネットでダウンロードしたソフトを実際に使った体験記などが掲載されたりしました。一つの事実が出た後の展開力に、新聞社という組織の力を感じました。
――取材網が全国にはりめぐらされていて、そこが一斉に反応していったということでしょうか?
板橋 はい、そうです。それが、さらに、連携していった。それは、やはり、オールジャパンの力なのかな、と僕は感じました。
――写真を提供してもらいました。この場面はどんな場面ですか?<写真略>
板橋 この場面は、証拠改ざんの第一報の原稿を書いて、実際に原稿を載せる日。これは夜の11時半ぐらいなんですが、この数時間後に皆さんの手元に記事が載った新聞が届きます。写真は、原稿を改めて確認しているところです。この前日までに大体、原稿は出来ているんですけれども、当日も見出しをチェックします。より分かりやすい原稿にするためにどうしたらいいんだろうと、デスクやキャップ、裁判担当の記者や部長と話している光景です。
――最後の最後までチェックするということなんですね。
板橋 そうです。チェックと共に最後の最後まで読者に分かりやすく伝えていこうとしているところです。
――ひとつ思うんですけれども、この報道は検察の不正を報じる形になりました。報道が出た後、それまでの取材相手の方たちの反応はどうだったんでしょう。
板橋 さまざまでした。「もう会いたくない」と言う検察関係者もいます。逆に、「本来だったら自分たちでやらなければいけないこと。朝日新聞に書かれたことは悔しいけれど、必要な報道だったよ」と言われる方もいました。
――この報道がなければ、こうした事実は明るみに出ることはなかった。
板橋 なかったと思っています。この事実を知っていたのは、当初、検察関係者でもわずかな人たちでしたから。
――それを、板橋さん、あなたが最初の端緒をつかむ。仲間と相談し、キャップに相談し、デスク、部長に相談し、東京の社会部とも連携して、という形でこの大きな報道になっていくんですね。この報道は海外でも報じられたんですよね。<写真略>
板橋 はい。ちょっと読めないので(会場:笑い)。報道されたようです。
――どこかの国で報道されたんですね(笑)。
板橋 どこかの国でしょうね(笑)。
――どういうニュースなんでしょうね(笑)。
板橋 この右下の見出しに「エース・プロフェッサーなんとか」と書いてあるのは、検事が逮捕されたということでしょうか。
――プロセキューターですよ。プロフェッサーじゃないですよ(笑)。
板橋 失礼しました。取材不足でした(笑)。
――この報道は、国内だけでなく、海外でも報道された大きなニュースでした。それから今も検察庁のあり方をめぐって大議論がつづいている報道になったわけですよね。この報道に限らず、新聞記者の仕事って楽しいですか?
板橋 やりがいがあります。なぞを追いかける楽しさがあります。なぞをつかんだ時、それをみんなでとりかかって、みんなでもっと深くなぞを追っていこうというチームプレーの楽しさもあります。やめられないですね。
――新聞というのはまだまだ力を持っているんでしょうか?
板橋 新聞を考える時、僕は「新聞縮刷版」も大事に考えています。僕たちは、いまの読者だけでなく、未来の読者のためにも書いていると思っています。50年後、100年後、関係者がみんな亡くなった後に「あの時代にこんなことがあったんだ」と正確に伝えられるというのも、新聞記者の一つの役割だし、醍醐味じゃないかなと思います。
――「生きているうちでなければ聞けないことがある」という思いに通じるところがある。
板橋 はい。そこにつながっています。
<会場での質疑応答>
――ここで皆さんも板橋記者に聞きたいことがあるんじゃないかと思います。会場の皆さんに質問をふりたいと思います。
参加者1 今回の記事を書いている時に、検察庁に「こういう記事を書かれそうだ」と察知されていたのでしょうか?
板橋 結論から言うと、察知されていません。なので、朝日新聞が動いていることは直前まで検察庁は知らなかったはずです。この答えで大丈夫ですか?
参加者1 はい。この記事を書く際に、事前に書くことが知られたら検察庁からのいやがらせがあるという心配もあったのでしょうか?
板橋 それは非常に心配しました。もしかしたら記事が出る前に、記者がなんらかの理由で逮捕されてしまうことがあるんじゃないか、取材をしていることが漏れないようにしていましたが、なんらかのきっかけで漏れて、僕らの持っている内部資料が押収されてしまうような事態があるんじゃないか、と。
参加者2 この記事が出た後、検察庁から報復的な措置はありましたか?
板橋 「記者会見に朝日新聞だけ来るな」というようなことはありませんでした。
参加者2 記事を掲載後に、個人的に接している方もいますか?
板橋 はい。いまだに付き合ってくれる検察関係者の方もいます。
参加者2 そのような人脈を構築するにあたって、どのような能力が大切でしょうか?
板橋 真剣さではないでしょうか。「上司から言われているから、やっているんじゃない」という強い動機が大切なのかなと思っています。
参加者3 さきほど「覚悟」という話がありましたが、板橋さんが心がけておられる「記者としての覚悟」がありましたら、教えてください。
板橋 記者として僕が知った事実は読者のものと考えています。
参加者4 ぶしつけな質問かもしれませんが、こういった改ざんや不正が朝日新聞社内であったとしたら、それは記事に出来たと思いますか?
板橋 私が取材をしてつかんでいれば、それはなんらか記事にするべきじゃないかと考えます。僕としては朝日新聞の不正だったら朝日新聞に載せていく努力をしようと思っています。
参加者4 そこに障害はないですか?
板橋 記事にしようという努力をするべきじゃないかと、現場の記者としては思っています。
――そこは、報道機関として自らをより律していかなければいけませんので、会社として読者の信頼を得るために、「こういう不祥事がありました。申し訳ありません」ということは自ら公表していくべきだと思います。
参加者5 検察庁が客観証拠を主観的に変えていることにショックを覚えたというお話がありましたが、そのショックの意味、背景を教えてください。
板橋 「客観証拠を改ざんまでするのか。そこまでやるのか」という意味のショックですね。一つの客観データについて「検察庁はこういう見方をして有罪だと思っている」という見方の問題ではなく、それを検察に有利に変えているという点にショックを抱きました。
参加者6 自分が取材して公権力の不正を得て、それが社会的重要性が低い時、今後の取材を考えて、記事に出さないということはあるのでしょうか?
板橋 私の経験ではなかったですね。社会的に必要なもの、取材対象が公的な組織、公的な人であれば、記事が小さな記事になったとしても、裏付けが取れたなら記事にしてきました。もちろん「もう少し取材を深めて背景まで探ってから記事にしよう」という議論があって時間がかかる、という場合はあります。この答えで大丈夫ですか?
参加者6 はい、大丈夫です。
――まだまだ皆さんは聞きたいことがあると思いますが、最後に一つ、今回は報じることができたけれど、毎日取材していて、記者として無力感のようなものを感じることはないですか?
板橋 今回の証拠改ざん事件は、たまたま明らかになりましたけれども、ほかにもまだ不正があるんじゃないかと思っています。自分が掘り起こしていないから、読者に届けられないんですけれども。まだまだ取材力が足りない、という意味での無力感があります。
――わかりました。いったん、ここで板橋さんと私との話は終わりたいと思います。
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(引用終わり)
大阪地検のFD改ざん事件は「検察史上最悪の不祥事」といわれた。しかし、小沢氏裁判での虚偽捜査報告書事件はその比ではない。小沢裁判そのものが、検察が仕組み、司法当局(最高裁、法務省)が支え、与野党さらには外国情報機関も関与した、「史上最悪の国家犯罪」ではないのか。いまネット市民の力で一気に明かされつつある闇をのぞいてしまった板橋記者は、その巨大さに驚き、立ちすくんでいるのではないか。
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