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株式日記と経済展望
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ジャーナリストというのはネットワークや人脈を築いたり、常識的な物の
考え方を身に付けたり、20年、30年と経験を積んで開花していくものです
2012年5月4日 金曜日
◆佐々木俊尚×牧野洋「『当事者の時代』とジャーナリズム」対談 第2回「メディア経営が厳しい時代だからこそ、新聞記者を専門家として育てる仕組みが必要」 5月4日 現代ビジネス
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32451
牧野: そういうふうに"リーク依存型"の報道ばかりやっていると、当局が発表したことについて、疑問を差し挟んで検証するということがなかなかできなくなります。たとえば、私はたまたま福島の原発事故についての日本とアメリカの新聞報道を見比べる立場にあったんですが、東京で取材していたアメリカのメディアの記者は人数が少なかったはずなのに、それでも「なるほど」と思わせる記事が多かったですね。
ニューヨーク・タイムズのサイエンスリポーターのウィリアム・ブロードという記者は、30年以上も環境問題や原発問題をフォローしていて、50代か60代のベテラン記者。そういう記者が日本の新聞社にはなかなかいないんです。佐々木さんがおっしゃった「ネタ屋」ばかり重宝して、専門性を育てるという努力をしてこなかった結果ですね。担当をコロコロ変えたりしますし。
社会部で事件ばかり追いかけていた記者がいきなり原発問題を担当にされ、記者会見で専門用語の洪水を浴びる。そうすると、専門知識がないからで発表された内容を検証できず、発表されたことをそのまま書く以外にない。たとえ紙面に余裕があったとしてもそれ以上踏み込んだことは書けない。「福島原発報道は発表報道のオンパレード」と批判されたのも、記者の専門性の欠如と関係しているのではないかと思います。
佐々木: 専門性ということでは、僕も思い出すと恥ずかしい話が山のようにあります。たとえば、1995年に中華航空機が名古屋空港で墜落して250人くらい亡くなった事故がありましたよね。あのとき僕は、東京社会部の一線の記者だったので、現場に行ったりました。
発生直後には東京で紙面を作らなければならなかった。しかし、現場にはまだ誰も行っていない。墜落したのはエアバス社の機種だから、その話で原稿を作れということになって、その場にいた宿直の記者たちがみんなして原稿を作るわけです。でも、この「A300-600R」という型番がどんな機種なのか、専門知識がないから誰にもわからないんです。
しかたないから古いスクラップを見て、そこに「最新鋭機」と書いてあったから、そう記事に書いてデスクに渡したんですが、受け取ったデスクもエアバスの機種のことがまったくわからないものだから原稿をそのまま通してしまった。当然「最新鋭機A300-600Rが墜落事故」という見出しになったわけですが、翌朝他社の新聞を開いてみたら「老朽機」となっていて(笑)・・・。
よくよく調べてみると、参考にしたスクラップの記事は20年前のもので、20年前の「最新鋭機」だったんですよ(笑)。そういった今から考えると本当にひどい話がたくさんあって・・・。専門性がない記者というのがものすごくあちこちに蔓延しているんでしょうね。
特定の部署に長くいる人も例外的にはいるんですが、それは会社で数人とか、そのくらいですよね。僕のいた毎日新聞では、長くいるのは皇室担当記者だけでした。
牧野: 日本では長く編集の現場にいる人は論説委員になり、社説を書くと立場になります。社説を書くというのと、第一線で取材して記事を書くのとではまたちょっと違います。例外はあるにしても、50代になっても第一線で働き続けるというシステムが日本の新聞社にはないんです。
ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルを見ると、50代の経験豊かな記者が第一線で働いていて、イラク戦争なんかでは従軍記者として戦地にも行っています。この本のなかでも書いたんですが、ジュディス・ミラーというピューリッツァー賞も受賞したニューヨーク・タイムズのスター記者がいて、結局この人は「ブッシュ政権の御用記者」ということで業界追放の憂き目に遭いましたが、最後まで第一線にいました。
佐々木: ああ、映画のモデルにもなりましたね。
牧野: ええ。『グリーン・ゾーン』という作品のモデルになった女性記者です。今でこそ批判されていますが、50才を超えていながら従軍記者としてイラク戦争を報道したわけです。そういうシステムが日本の新聞社に根付いていません。15年も働くとだいたいみんなデスクになって、どんなに特定の分野に強い人でも管理職になるか子会社に行くか・・・。いずれにせよ記者卒業です。
佐々木: そうですね。僕は39才で新聞記者を辞めました。辞めた理由はいろいろあったんですが、そのなかのひとつに、40才を超えると現場に残り続けるのが難しい、ということがありました。
人事部とか総務部に行って2年くらいいて、戻ってきて厚生労働省なんかを1年くらい担当させてもらったら、またすぐに青森や静岡の支局のデスクとか支局長なんかをやらされて・・・。10年をひとつの単位とするなら、そのなかで7年くらいは意にそぐわない仕事をやらされて、残りの3年は少しだけ現場をやらせてもらえる、ということのくり返しになってしまいます。
牧野: 佐々木さんもよくご存じだと思いますけれど、ジャーナリストというのは経験が物を言う世界です。科学者なら20才でかなりの業績を達成してしまうことはあるかもしれませんが、ジャーナリストというのはネットワークや人脈を築いたり、常識的な物の考え方を身に付けたり、20年、30年と経験を積んでいくなかで、だんだんスキルが進化し開花していくものです。そう考えると、日本の新聞社は本来の新聞記者を育てる仕組みにはなっていません。(後略)
(私のコメント)
「株式日記」を書き始めて15年近くになりますが、「株式日記」は自分ひとりで書いているので現場取材もインタビューも出来ません。だから分析記事が主体になり、一次情報は新聞記事やブログなどの記事になります。一人で書いているので情報の裏もとることができません。しかしニュース記事を拾い集めて分析すればかなりの事が見えてきます。
「株式日記」はブログの表題からして経済が専門になりますが、政治や文化や歴史なども手を広げて書いています。経済記事を書いているとどうしても政治や歴史や文化にまで手を広げないと経済の動きの裏が読めません。消費税やTPPの問題なども政治や外交の事まで分からなければ切り込んだ記事が書けません。
今日の記事にしても、日本の会社組織が抱える問題ですが、日本の会社は専門家を育てる仕組みになってはいません。日本の会社は入社してから4,5年後とのローテーションで、様々な部署の勤務に付くことになり、一つの事に20年から30年も担当することはまずありません。建前上はゼネラリストを育てると言うことで、営業から経理から総務から庶務に至るまでクルクルと部署を変えたり転勤で地方各地を回されたりします。
新聞社も同じであり、佐々木氏は指摘するように専門的知識を持った新聞記者を育成しません。それがあからさまになったのが福島第一原発の大災害で、取材する記者たちは原発の事が分からない。大手マスコミなら科学部の記者はいますが、原発のエキスパートと言うわけではなりません。だから福島第一原発が水素爆発することも分からない。
「株式日記」では普段から原発のことも書いていたから、電気が復旧しても直ぐには冷温停止できないことを指摘してきました。私は電気工事士の資格を持っており、配電盤が水を被ったら復旧は難しいことはすぐに分かった。以前からトリウム型原発や高温ガス炉などの原発の事も何年か前に書いたことがあります。
大手マスコミなら原発問題を担当する専門の記者が一人ぐらいいてもおかしくは無いのですが、日本の大手マスコミは専門家を育てることはしない。NHKには科学部の記者がいましたが原子炉の専門家と言うわけではなく、メルトダウンしている事は十分に想像ができたことだ。しかしそれでも水素爆発まで予測することが出来なかった。
牧野氏によれば、「ニューヨーク・タイムズのサイエンスリポーターのウィリアム・ブロードという記者は、30年以上も環境問題や原発問題をフォローしていて、50代か60代のベテラン記者。そういう記者が日本の新聞社にはなかなかいないんです。」と指摘していますが、日本はどうして専門家を育てないのだろうか? それは日本は年功序列組織だから上司より詳しい専門家がいると年功序列組織が崩れてしまうからだ。
例えはこの分野の事は○○が専門家だから、首に出来なくなるし転勤させることすら出来なくなる。○○の事は○○に聞かないと分からない、と言ったことが多くなる。そうなると会社の幹部にとっては使いづらくなる。だから日本の会社組織では4,5年ごとに転勤や配置転換を行なって、いろいろな仕事を経験させるようになる。新聞記者も15年も経つと現場を離れて管理職になる。
デパートがダメになったのも、各売り場での商品の専門知識を持った店員を育てなかったからだろう。4,5年おきに配置転換されてしまうから、その売り場の商品の勉強が疎かになってしまう。パソコンショップにしてもパソコンオタクのような店員は少なく、少し技術的なことを聞くとまるで分からない店員が多い。これはベテラン店員が少ないからだろう。
これが欧米のようなモジュール化した組織なら、経理の専門家が欠員が出来れば経理の専門家をスカウトするなり募集して欠員を埋める。だからライバル会社の専門家を引き抜くこともある。そうなると会社の機密が保てなくなる。ジャーナリストにしても経済の専門家や政治の専門家やスポーツや芸能の専門家でなければ、面白い記事がかけませんが、日本の新聞やテレビが面白くないのは専門知識のある記者が少ないからだろう。
外国の特派員にしても、その国に20年から30年くらいは腰をすえて駐在しなければ、言葉も分からないし人脈も築けない。しかし多くの大手のマスコミ記者は外国の特派員になっても4,5年で帰って来てしまう。これでは取材すらまともに出来ないまま終わってしまう。大手メーカにしても同じであり、韓国のサムスンなどは最初から担当国の専門家に育てて現地化を図っている。
日本のジャーナリズムの底が浅いのは専門的な知識を持った記者がいないためであり、記者クラブ制度で画一的な記事を書くしか出来ない記者が多いからだ。それに対して最近ではネットで記事を書く記者はフリーの人間が多いから詳しい記事を書ける人が多い。「株式日記」にしてもプロの記者では書けないような事も大胆に書いていますが、大手マスコミの記者が不勉強だから「株式日記」が読まれているのではないだろうか?
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