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嘘で塗り固められている読売新聞の消費税キャンペーン [斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」]
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2012/2/28 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
消費税増税に肯定的な人々も、さすがに呆れられたのではないか。読売新聞が先週の金曜日に始めた「税と安心――
一体改革のゆくえ」というキャンペーンのことである。
特に24日付朝刊の連載初回。第1面と3面の大半を費やし、〈消費税25% 北欧は納得/安い保育料 育休8割補償 大学無料〉の大見出しで、消費税率の高いスウェーデンがいかに素晴らしく、5%の日本が子育て世代や若者、これから生まれてくる赤ちゃんたちに過酷かを延々と説いていた。
これほどの虚報というか、確信犯のミスリードも珍しい。消費税が増税された暁に北欧のような福祉国家を目指すというなら比較も結構。だが現実の日本は、相も変わらぬアメリカのサルマネ一辺倒だ。TPPにせよ沖縄の米軍基地にせよ、野田佳彦政権のやることなすこと、小泉・竹中路線の焼き直しか延長線の、新自由主義構造改革&ネオコン以外の何物でもない。
はたして読売の論調もまた、北欧式の福祉国家を時代遅れの左巻き呼ばわりしていた小泉時代のまま。政権交代のむなしさを今さら蒸し返しても詮無いが、いくら何でも悪質に過ぎないか。
野田政権の方向性も消費税のカラクリも知らない読者なら、間違いなくこう思う。なるほど、では消費税率を北欧並みにしたら、彼らのような福祉の恩恵に浴せるのか、と。そう思われるように書いてある。
期待は確実に裏切られる。目指される社会モデルがアメリカである以上、福祉など消費税率に関係なく削られる。死ぬも生きるも自己責任という最悪のシナリオだけが残される。
すでに何度も書いてきたように、消費税という仕組み自体が弱い者イジメに他ならない。商品やサービスの価格に転嫁できない納税義務者(年商1000万円以上の事業者)が自腹を切らされて潰れるか、生き残りたければ従業員の賃金や仕入れ先への支払いを値切るなどして弱い方、弱い方へと押しつけていくしかない悪魔の税制だ。
読売新聞は「国の財政を家計に例えると」という“解説”まで添えていた。バクチでスッてサラ金に手を出し、暴力団に追われる家計と、一定の国力さえ保たれれば将来世代へのツケ回しも可能な国家財政とは根本的に異なる概念だ。
嘘に嘘を塗り固めてまで権力におもねり、自営業や零細事業を軒並み廃業に追い込んで、何がどう面白いのだろう。これが世界一の大部数を誇る大新聞のやることか。
◇さいとう・たかお 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「経済学は人間を幸せにできるのか」「消費税のカラクリ」など著書多数。
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