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芥川賞作家・田中慎弥氏「石原慎太郎都知事との対立関係はメデイアが作った」と指摘しツイッターで絶賛の声
http://news.livedoor.com/article/detail/6226726/
2012年01月27日12時43分 提供:トピックニュース
26日、芥川賞作家の田中慎弥氏が、同賞授賞式でメディアを騒がせた件について毎日新聞へ寄稿し、ツイッターやネット掲示板で話題となっている。
記事では、石原都知事が「今度の芥川賞候補作はバカみたい」と発言したことは授賞式の時点では「知らなかった」と告白。田中氏の「都知事と都民のためにもらっといてやる」という発言は前述の都知事の発言を受けて噛み付いたわけではなく前もって準備していたもので、対立の構図は「メディアが勝手に作った」と指摘している。
この記事を受け、ツイッターでは、「ただの変な人かとおもったけどイメージが変わった」「やっぱり文章うまいな」「あの会見と違い、至極まっとうな事を言っていて、そのギャップがまたいい」など、田中氏への賛辞の声が多く寄せられた。
一方、マスコミ報道に対しては、「例によって、マスコミ騒ぎすぎ」「マスコミが勝手に対立構造作ったってことか」「両氏の発言の前後関係を逆の順序で並べて誤解させようとしていたテレビ番組もあった」など批判が殺到。田中氏と石原氏の敵対関係をマスコミが意図的に作りだそうとしたのではないかという疑惑が持ち上がっている。
【関連情報】
・芥川賞に選ばれて:言いたいこと、あの夜と今=田中慎弥(毎日新聞)
http://mainichi.jp/enta/art/news/20120126dde018070030000c.html
毎日新聞 2012年1月26日 東京夕刊
すでに各メディアで流されたから御存知の方も多いだろうが、一月十七日、私の小説が芥川賞に決まった日の夜、東京でバカな記者会見をした。女優の言葉を引用し、自分がもらって当然と言い、さらに石原慎太郎都知事に言及した。その後のさまざまな報道のされ方の中には、事実と違う部分がかなりある。終わったこととはいうものの、私の知っている範囲の事情を、どうしても書いておきたい。
まず、十七日の会見の段階で私は、石原氏が六日に行った、今度の芥川賞候補作はバカみたい、という発言を全く知らなかった。正確な内容を知ったのは十八日になってからだ。次に、会見内での、もらって当然、都知事と都民のためにもらっといてやる、という言い方は、はっきり言うと最終候補になるずっと前から、もしその時が来たら言ってやろうと準備していたものだった。だから、六日の都知事の発言に田中がかみついた、というのはメディアが勝手に作った図式だ。
もう一つ、その後の石原氏の選考委員退任について。これを知ったのもやはり受賞決定の翌日のこと、編集者から知らされる、という形だった。選考会が開かれる前は勿論(もちろん)、会見場に到着して関係者と顔を合わせた時にも、誰からもそんな話は出なかった。石原氏の真意や、いつ退任を決意し、表明したのかについては諸説出ているようだが、私が賞をもらうのが原因とは思えない。実際その後の会見で石原氏は、私の作品を推したと語っている。少なくとも、引導を渡すだの寝首を掻(か)くだのといった種類の話ではない。私が知っていることはだいたいこのようなものだ。それ以外のことは分からない。
それにしても、あんな騒ぎになるとは思いもしなかった。会見で石原氏のことを言えばその場が一気に盛り上がり、和むだろうと考えていただけだ。会見を御覧になった方はお分かりだろうが、私はテレビ映えしない。だから言葉の上で何か面白いことを言って切り抜けないことにはどうしようもない。だからああいうことを言っただけ。それがメディアの作ったストーリーによって思わぬ大きさに膨らんでしまった。
だがそもそもは、作家が言いたいことを言い合った、ただそれだけだ。作家というものは昔からさまざまな形でぶつかったり、反目したりしてきた。文学上の論争のこともあったし、私怨(しえん)に近いこともあった。まっとうな作品批判から相手の生活や容姿を嘲(あざけ)るようなものまで、熱心に、幅広く行われてきた。時には言葉だけでなく肉体的な暴力に発展する場合まであったのだ。
今回は言葉の上のこと。なのにそこへメディアが集まった。まるで事件現場に群がるように。つまりいまの日本というのは、作家の言い合いに過剰に反応するほどにまで、ものが言いづらい世の中なのではなかろうか。だから好きなことを言う人間を珍しがっているのではないのか。そのあたりを、人の言い合いを流すだけのメディアは、いったいどう考えるのか。私はネットをほとんど知らないが、ブログやツイッターで言いたいことを言っているように見える日本人は、実は言いたいことを出し切れていないのかもしれない。この点を分析する能力は自分にはない。ひょっとすると、言いたいことを自由に言っている石原氏や私は、古いタイプの書き手なのだろうか。(たなか・しんや、作家=「共(とも)喰(ぐ)い」で第146回芥川賞)
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