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これも偏向報道?茨城県民の悲痛な叫びを聞け!(ガジェット通信)
2011.09.13 09:00:49
■被災地は「福島・宮城・岩手」だけ?
9月11日で、大震災からちょうど半年が経過しました。その日の大手各紙社説のほとんどが、「東日本大震災から半年」を軸に論説を展開していました。
筆者もひと通り目を通しましたが、ふと素朴な疑問が湧き起こりました。「東日本大震災」の「東日本」って、具体的にどこを指して言っているの? ということです。社説を読む限り、あたかも被災地は「岩手・宮城・福島」3県だけであるかのように書かれていました。
もちろんスペースの問題もあるのでしょうが、若干の違和感を拭い切れませんでした。その他のいくつもの県でも、震災で甚大な被害があったことは知っているからです。
たとえば、茨城県。Twitter上で、震災直後から「茨城を無視しないで!」という切実なリツイートが流れて来たのを、筆者は何度も目にしました。
実際、3月11日の本震で「震度6強」を観測したのは、宮城県・福島県・茨城県・栃木県の4県のみ(大船渡市や気仙沼市などは「震度6弱」)。
もちろん、「福島・宮城・岩手」3県は大津波による被害がありましたから、単純に震度の強弱だけで語ることはできません。それでも、「震度6強」という数字。あなたは想像がつきますか?
というわけで、震災から半年経った日、さっそく筆者は知り合いのつてをたどり、茨城県水戸市在住のA子さん(仮名)とコンタクトを取ることにしました。マスコミであまり報じられていない茨城県の現状は一体どうなっているかを知りたくなったのです。A子さんの電話取材から伝わってきたのは、「悲痛な叫び」と呼ぶほかない言葉の数々でした。
■「マスコミの報道は福島・宮城に偏りすぎている!」
今回電話取材に応じてくださったA子さんは、大学時代、ジャーナリズムを中心にメディア論全般を専攻したとのこと。「テレビが世の中に及ぼす影響」を追求し、卒論のテーマにも選んだそうです。「その立場で言わせて頂くならば」、と前置きしてA子さんは語りはじめてくれました。
「テレビの報道が、福島・宮城に偏り過ぎています。もちろん、大津波や福島第一原発事故という大災害があったので、ニュースバリューが高いことは理解しています。でも、茨城県は福島県のすぐ南に位置しているのです。それにも関わらず、茨城県の震災状況は報道されず、”置き去りにされた”状態です」
整然と、冷静な語り口調で語るA子さん。しかしそこには、表面に出てこない怒りが秘められているのを、電話越しでも察知することができました。
A子さんによれば、震災から半年経った今でも、茨城県内で復旧が順調に進んでいるとはいい難い街がたくさんあるとのこと。
その一例が、水戸市の南西部に位置する鉾田市(ほこたし)。実際、3月11日の地震で、鉾田市は「震度6強」を観測しています(これは宮城県石巻市や仙台市宮城野区、福島県大熊町・双葉町・浪江町などと同じ震度)。
他にも「震度6強」を記録した茨城県内の都市として、日立市・高萩市・常陸大宮市など、数多く挙げられます。
さらに、筆者が別のルートでお話を伺った鹿嶋市に住む方によれば、「だいぶん復旧はしてきたけれど、たまに家が傾いていたり、液状化が放置されたままの場所を見る」ようです。これも、震災から半年経った時点での話です。
このように、茨城県内各地での地震による損傷や負傷者の数は甚大なものです。もちろん復興途上の段階です。しかし震災直後から、テレビは原発や大津波のニュースばかり繰り返すため、茨城県の被害について大きく取り上げられることはほとんどなかった、とA子さんは言います。
また、原発や政局などの報道で埋もれてしまいがちであまり知られていませんが、茨城県産農作物の風評被害があまりもひどい、とA子さんは言います。
「茨城県の農作物や水産物の風評被害が依然として大きく、経済が立ち行かない状態です。東京に出荷したものはなかなか売れません。茨城県知事が、東京都内のスーパーで茨城県産野菜の安全性をアピールしましたが、風評被害はそう簡単に収まらないものです。上野などの駅構内に”出稼ぎ”に行って売るしかない、という農家の方もいます」
■誰も語らない「罹災証明の地域格差」
さらに、マスコミではなかなか取り上げられない問題も指摘してくれました。「罹災証明」についてです。
「罹災証明」の基準は県ごとに異なり、福島県ではお金が入りやすいが、茨城県ではなかなか入りにくい。そうした現状があるようなのです。その話題になると、A子さんの声も、さすがに憤りを隠しきれないように熱を帯びてきました。
「福島の場合は、少しでも家が損傷したり、ひびが入っただけでお金が入ってきます。それに対して、茨城県では罹災証明をもらえる基準がとても厳しい。人が住めない状態まで家が壊れていなければ、お金が少しも入らないのです。私の家(水戸市)は、ひびも入って大きな損害を被っていますが、市役所の方に説明しても、『本当に住めない状態でなければお金は出せません』とはっきり言われました。もちろんそれは我が家に限ったことではありません。水戸市だけでも”罹災証明待ち”がいまだに2万世帯もあります」
筆者もA子さんのお話で初めて知った、「県ごとに異なる罹災証明の基準」。基準が異なる理由は何だとお考えですか、と尋ねると、やはりマスコミの偏向報道が大きい、とA子さんは言います。
「マスコミは、福島・宮城ばかりにスポットを当てています。そのため政府や自治体も、報道のもつ洗脳効果をそのまま受けてしまっている、という側面があると思います。マスコミも営利企業ですから、視聴率が稼げる福島・宮城の報道を繰り返します。そうなると、必然的に他の被災地の現状が伝わらないわけです」
地理的には、福島県浜通り南部と隣接している茨城県。にも関わらず、「東北」に区分されないというだけで、なかなか注目されづらい現状が浮き彫りになってきました。
筆者は、何とか前向きな話で締めくくりたいと思い、最近明るい出来事はなかったか尋ねてみました。
「まだまだ瓦礫の撤去作業はありますが、ようやく街が活気づいてきた、というのが私の実感です。『がんばろう、茨城!』というキャッチフレーズで、いま茨城は立ち上がろうとしています」。
おっ、どうにか希望が見出せる記事にまとめられそうだ……と思い、A子さんに震災直後の写真をご提供頂けませんかと聞いてみました。するとA子さんは再び「この人は何もわかってない」とでも言いたげな口調に戻り、こう答えてくれました。
「震災直後の写真ですか? 撮ってる余裕なんて、あるわけないじゃないですか。その日その日を生きることだけで精一杯だったんですよ? 第一、電気も通っていない状況で、どうやってカメラを充電するんですか。私は取材する人じゃないんです、ここで今でも生活している人間なんですよ」
この言葉に、筆者は自分の無神経さを恥じ、震災についてはこちらの都合どおりにストーリーが運ぶわけがない、という当たり前の事実を再認識させられたのです。
http://getnews.jp/archives/140837
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