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いよいよ本格化する中国富裕層の資本逃避
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34466
2012年2月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
いまや中国の支配下にある旧ポルトガル領のマカオ。あまり馴染みのない旅行客は、通りに並ぶ高級時計店の数に驚かされるかもしれない。これらの店が相手にしているのは、流行の最先端を行く時計を求めているというよりは、むしろ中国からお金を持ち出す方法を探している中国人旅行客だ。
■法の目をかいくぐり、資金を海外に持ち出す富裕層
多くの場合、宝石をちりばめた安物がクレジットカードで購入され、その場ですぐに返品される。愛想のいい店主が、クレジットカードでの購入を取り消す代わりに、現金での払い戻しに応じるのだ(もっとも返金額は購入額より若干少ない)。
マカオのカジノは、中国本土から押し寄せる旅行客でにぎわう〔AFPBB News〕
今年1月には、「壬辰(みずのえたつ)」の年を迎えるために中国本土から大勢の旅行客が殺到した結果、マカオのカジノ収入が前年比で35%増加した。
こうした旅行は一般に、中国からお金を持ち出すもう1つの方法だと考えられている。国外でクレジットカードを使って賭博をし、勝った場合には儲けを現金(外貨)で受け取ることで、本土から持ち出せる現金の法定上限(2万元=約3100ドル)をかいくぐるのだ。
東京では、銀行員や不動産ブローカーが驚嘆した様子で、デビットカードで不動産を購入する中国人についてささやき合っている。
一方、シンガポールでは政府関係者らが、最近制定された不動産投機抑制策は、お決まりのインドネシアの大富豪ではなく、中国の成金に向けられた措置だと話している。
■指導部の世代交代で資金流出に拍車
中国からの資本逃避は、何年も前からよくある風景の一部だった。こうしたお金の持ち主は、共産党幹部や上場(特に中国国外での上場)を果たした国営企業の幸運な経営幹部、そして新たに富を手にした起業家などだ。しかし、政治の移行期には、中国からの資金流出がかつてないほど激しくなる。
今年10月には第18回中国共産党大会が開かれ、最高指導部の一連の交代の始まりを告げる。従来守られてきた人が庇護者を失うことになる指導部交代が、どんな結果をもたらすかは誰にも分からないのだ。
中国から流出するお金は逃避資金で、最も高いリターン(それならまだ中国国内で得られる)ではなく、最も安全な避難先を求めるお金だ。
■富裕層が抱く不安
こうした資金の流出は、富裕層の不安感を反映している。何しろ、彼らのお金の一部は合法的なものだが、そうでないお金もある。起業家の場合、創業の元手資本をどこからどうやって調達したかを明かす人はごくわずかで、会社の成り立ちについては謎に包まれたままにしている。
中国都市部ではあちこちに、所有者が住宅ローンを返済していないが、彼らが持つ党との強力なコネのために、銀行が差し押さえに踏み切ろうとしない不動産がある。
中国の富裕層は、財産権の確立を求める外国人投資家の動きに加わった。これは合法的なお金については結構な話だが、違法なお金には向かない。
エリート層の急増する財産の裏側には、もちろん、持たざる者と少ししか持たざる者の間で高まる不満がある。それはまさに、中国全土に広がり、地域に溢れ出て、太平洋に広がる大量のお金は、大抵は不正に得たものだという認識から生じる不満だ。
短期的な投機資金の流出と資本逃避を区別するのは難しいが、中国の国際収支の誤差・脱漏(2010年で600億ドル)は、数百億ドルの資金が資本逃避と絡んでいる可能性があることを示唆している。統計上の矛盾の一部は、外貨の裁定取引の結果であり、一部はもっと疑わしい資本移動によるものだ。
■急激な人民元上昇が見込めなくなると・・・
人民元に対する見方が一段と悲観的になるにつれて、さらに多くのお金が中国を離れていくかもしれない。現在、人民元上昇の見通しが暗くなっている理由は多々ある。中国の貿易黒字はかつての数分の1に落ち込んでおり、輸出の先行きはあまり良くない。
スタンダード・チャータード銀行のエコノミスト、スティーブン・グリーン氏(香港在勤)は、中国の経常黒字が昨年の推定2500億ドルから、今年はわずか1400億ドルに減少すると予想している。
3兆2000億ドルあった本土の外貨準備は、昨年末に3兆1800億ドルに減った。中国が徐々に内需主導経済へと移行するに従い、外貨準備はさらに減少するかもしれない。
多くの敏腕為替トレーダーはこうした要因を理由に挙げ、急速な人民元上昇に賭けていた投資を反転させた。昨年12月には、香港の人民元建て預金残高が前月比6%減少し、過去最大の減少幅を記録した。これは資本移動の拡大と、より均衡の取れた経常収支の動向を反映したものだ。
■あまりにも大きすぎる貧富の差
グリーン氏は、短期的な投機資金は何年も前から流出していたが、これまでは資金流入に圧倒されて、あまり目に見えなかった可能性があると指摘する。今の問題の大部分は、流出が目立つことだという。
中国が今直面している最大の課題は、まず間違いなく、経済的というよりは、むしろ社会的な問題だ。米国の学者、ビクター・シー氏は、中国国民の上位1%の富裕層が保有する流動資産と不動産は恐らく2兆〜5兆ドルに上ると試算している。一方で、最下層には、現金経済の仲間入りさえしていない人がいる。その差はあまりにも大きすぎる。
By Henny Sender
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