http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/826.html
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消費税と原発で野田政権が追い詰められつつあるように見える。
野田内閣発足直後の動きから推測して、野田佳彦首相は、積極的な原発推進論者であることは確実だろう。しかし、世論は急速に「脱原発」へと傾きつつある。永田町と霞ヶ関と大手マスコミの論調でしか感覚をつかめなかった「野ダメ」首相は、まさかこんなに原発に対する国民の忌避感が強まっているとは計算違いだったのではないか。
政権では、枝野幸男経産相の動きが定まらない。「原発維持」側に舵を切ったかと思うと、翌日には「脱原発」側に歩み寄るなど、動きがクルクル変わる。菅政権の内閣官房長官時代からそうだった。
東京電力はというと、そんな「野ダメ」民主党政権を見限って、早くも自民党の政権奪回に期待を託しているかのように見える。以下、毎日新聞記事(下記URL)から引用する。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20120129ddm003020136000c.html
電力会社・崩れる牙城:強気の東電、「改革」迷走 「選挙なら下野」民主政権の足元見透かす
◇幹部「値上げで1兆円稼げる。資本注入など必要ない」
東京電力が17日に発表した企業向け電気料金の「不意打ち値上げ」。3月の東電改革決定を見据え、「東電国有化」を巡る政府との水面下の攻防が激化する中、吹き始めた「衆院解散風」をにらんだ思惑も交錯する。
◇
「どこかの時点で腹を割って議論しなければ前に進みませんよ」。値上げ発表の4カ月ほど前、仙谷由人官房副長官(当時)は西沢俊夫社長に告げ、東電説得に乗り出した。
仙谷氏は東電改革の政権側のキーマンと目されている。政府を離れ、民主党政調会長代行となったいまも、ひそかに東電の勝俣恒久会長に接触。公的資本注入後の東電の将来像について意見を交わしてきた。
東電は福島第1原発の事故で原発を稼働できなくなり、火力発電の燃料費増加で経営環境は厳しさを増す。経営破綻に追い込まれれば、電力の安定供給や原発事故被害者への賠償が滞る。政府が描くのは、1兆円規模の公的資本を注入し、議決権の3分の2を取得して経営権を握る「実質国有化」だ。
東電改革の素案には電気料金値上げや原発再稼働で収益を改善することも盛り込まれているが、「国民の理解」が大前提だ。民主党関係者は「東電には死んだふりをしてもらう」と政権主導の改革を目指す。
ところが、東電はシナリオ通りには動かなかった。勝俣会長は政府関係者に「政府が議決権の3分の2を持つのだけは勘弁してほしい。50%以下でお願いします」と譲らず、年末年始をはさんだ交渉は難航する。
議決権の3分の2を政府に与えれば人事権まで明け渡すことになる。公的資本受け入れは不可避とみる首脳陣の中にも「屈辱的な事態だけは避けたい」という組織防衛の意識は強い。
東電幹部の間では資本注入にすら否定的な声がなおくすぶる。「料金値上げを実施すれば1兆円は稼げる計算になる。そうすれば政府からの資本注入など必要ない」。勝俣会長は年明け以降、「料金値上げは必要だ」と政府側に繰り返し、政府関係者は「建前論が先行して話が前に進まない」と焦燥感を募らす。
「民主党に好きなようにやられるなら東電の方からひっくり返せばいい」。東電幹部は最近、接触を重ねる自民党政権下の閣僚経験者らに言われた。賠償責任を負わずにすむ「会社更生法の申請」の打診だった。
別の幹部は漏らす。「選挙になれば民主党は下野するだろう。そんな政権に経営権を委ねるわけにはいかない」。消費増税問題を抱え、支持率低下にあえぐ野田政権の足元を見透かすように強気の姿勢をみせる。
◇発送電分離も失速
「東電は置かれた立場をわかっていない」。原子力損害賠償支援機構幹部はいら立ちを隠さない。1兆円規模の公的資本注入方針は固まりながらも、東電改革が迷走するのは、政府内にも温度差があるためだ。
「国が経営権を握ることでリスクも生じる」。政府内には料金値上げや原発再稼働に慎重な枝野幸男経済産業相に対し、原発事故が再発した場合に国の責任になることや、値上げなどをせずに東電の経営改善が進まない場合の国民負担増を懸念する財務省などに経営権を握ることへの慎重論があるという。
「東電国有化」への政府の動きがまとまりを欠く中、改革の目玉のはずの発電部門と送電部門を切り離す「発送電分離」も勢いを失いつつある。「国民から抜本的な改革を求められている」。東電改革の陣頭指揮をとる枝野経産相は昨年12月、こう強調した。電力業界では「送電部門を資本関係のない別会社にする『所有分離』まで踏み込まなければ現状と変わらない」(電気事業連合会幹部)というのが定説。政府内の改革急進派は「所有分離」を有力視した。
現在の制度では送電部門の会計を発電部門と分ける「会計分離」を採用。経産省内には「東電という会社をこの世から消すための発送電分離が必要だ」として、東電の送電部門以外を売却する「解体案」も検討された。
しかし、現在、政府内で検討されているのは、送電部門の運用を電力会社から独立して設置する公的機関に委ねる「機能分離」案。政府内の検討の結果、「民間資産を強制的に切り分けるのは、私有財産権の侵害になる」(経産省幹部)として「所有分離」への慎重論が浮上。残る選択肢の送電部門を分社化して東電の傘下に置く「法的分離」では「一体運営の延長」との異論が続出、消去法的に機能分離が有力となった。独立性をどこまで貫けるかが焦点だが、政府内では公的機関に電力会社から出向させることも案として浮上。東電の影響下に置く形態になれば、改革は骨抜きになる可能性も残る。
「福島の賠償を優先させるためにも、発送電分離は先送りだ」。今月上旬、交渉を担当する政府関係者は東電幹部にこう告げた。衆院解散・総選挙が視野に入る中、「制度改革は賠償問題が落ち着いた後に時間をかけてやる」(政府関係者)と、先送りムードが高まっている。
「消費税しか頭にない今の政権に発送電分離をやり遂げる強い意志も力もない」。発送電分離に積極的な経産省幹部はあきらめ顔だ。東電改革は出口の見えない迷路に入りつつある。【斉藤信宏、三沢耕平、野原大輔】
(毎日新聞 2012年1月29日 東京朝刊)
確かに、野田首相は「消費税(増税)しか頭にない」ように見える。民主党代表選や総理大臣就任直後の頃とは全く違って、思い詰めたような険しい表情をしている。それを見ていると、野田首相が真面目な人であることだけはわかる。おそらく、「消費税増税こそ日本の将来のために自分に課せられた使命」だと信じているようだろう。それは間違った信念だと私は思うが、そういう人だからエスタブリッシュメント層は総理大臣に据えたかったのだ。
昨日(29日)、安住淳財務相がテレビ番組で消費税を税の柱にしたいと発言したのを聞いて私は驚いた。アメリカのような「小さな政府」の国にもヨーロッパのような「福祉国家」にも当てはまらない行き方だからだ。
たまたま昨日から経済学者・八代尚宏が昨年書いた中公新書の『新自由主義の復権』を読み始めた。自ら堂々と「新自由主義」の立場を標榜する八代は、第1章「新自由主義の思想とは何か」に下記のように書いている。
また、不況期の景気対策で拡大した財政赤字が、次の好況期の税収増による財政黒字で相殺されれば、景気循環を通じた財政収支は均衡を維持できる。しかし、長期的な財政収支の均衡が成り立つためには、よほどの財政規律が必要とされる。現実には、多くの政治家は不況を理由に財政支出を増加させることには熱心でも、景気が回復した後の税収増は国債の償還にではなく、新たな歳出の増加に向ける行動が一般的である。ケインズ理論は、暗黙のうちに賢人政治を前提としていたが、これが成り立ちにくいのが、とくに日本の政治の現実である。
ケインズ政策は、指導者が賢人でなければ成り立たない。それに対して、新自由主義の立場から考えれば、単なる需要不足の段階では、政府は何も行動せず、財政の「自動安定化装置」に委ねるのがよい。これは、累進的な所得税制では、好況期に所得が増えれば自動的に税収が増加(増税)となり、不況期には逆に減税となる。また、不況期に失業者が増えれば、自動的に失業給付という歳出が増える一連の機能を指している。
こうした自動安定化装置の範囲を超えた財政政策を超えた財政政策を発動することは、景気の先行きへの不安が蓄積し、総需要がどこまで減少するか不確実性が高まるような状況に、極力限定する。(後略)
(八代尚宏『新自由主義の復権』(中公新書, 2011年)24-25頁)
読んでいて、さすがは「新自由主義」を自ら掲げる著者だけのことはあると思った。「小さな政府」の税制をとるアメリカの税制は直接税が中心になっており、著者もそれを志向しているのだろう。
一方、ヨーロッパの福祉国家では消費税の税率が高いが、これは消費税の税収が景気に左右されにくいことと関係があって、コンスタントな福祉・社会保障のためにはそういう性質を持った財源も必要ということだ。だから私も消費税自体を否定するものではなく、将来的には消費税増税も必要な局面に至ると考えている。
しかし、それも所得税や法人税がまともに機能していての話だ。「バブル景気」の頃の自民党政権、特に竹下登内閣が「バラマキ」を行い、所得税を減税して景気の「自動安定化装置」の機能を毀損してきた。中曽根康弘ともども、竹下登に対する批判はこれまで十分なされてこなかったのではないか。そして人脈的にこの竹下とつながる人物として、言わずと知れた小沢一郎もいる。小沢も、バブル時代の自民党政権下で自民党幹事長を務めた(海部俊樹内閣時代)。その小沢一郎の当時からの現在までの変わらぬ持論が「所得税と住民税の大幅減税」であることに注意したい。ただ、当時の小沢は同時に「消費税の大幅増税」を主張していたが、現在ではその主張は隠している(本音では当時と変わっていないと私はにらんでいるけれど)。
現在の野田政権は、毀損された所得税の「自動安定化装置」機能の回復もそこそこに、消費税増税にばかり血眼になっていて、それが安住淳の「消費税を税の柱にする」発言につながったのだろうが、アメリカのように直接税中心でもなければ、ヨーロッパのように直接税の税収が景気に左右されやすい欠点を補うために直接税と消費税を両輪とする税制でもない、世界に他に類を見ない日本独自の「専ら消費税に頼る税制」を目指すということなのか。景気の自動調節機能を持たず、単に大富豪(土豪)や大企業に優しく弱者に厳しいだけの「いんちきネオリベラリズム」ともいえそうな「トンデモ税制」の下では、いつまで経っても景気は回復せず、格差が拡大して貧困に陥る国民が増えるだけだろう。
そして、民主党政権もマスコミも「消費税増税のためにまず身を削る」などと言っているが、噴飯ものだ。公務員の人数削減とはすなわち公共サービスの縮小であり、公務員給与の削減によって間違いなく民間の給与も連動して下がるし、国会議員の定数削減は「民意の切り捨て」にほかならない。特に、民主党が2009年総選挙のマニフェストにも掲げた「衆院比例定数80削減」は愛媛新聞も書く通り論外であり、いくら「マニフェストに書いてあることはやるんです」と言ったにせよ、これに関しては前言を翻してもらって大いに結構だ。
いや、原発の件にしても、民主党は小沢一郎代表時代の2007年に、それまでの「原発を慎重に推進」から「積極的に推進」へと政策を転換した。それだって、東電原発事故という現実を前にして、事故前には原発の輸出に前のめりだった前首相の菅直人が「脱原発依存」へと政策を転換した。野田首相はそれを再転換したいようだが、いっこうに原発事故が収束しない現状は、野田首相の思惑とは逆に、菅政権時代の「脱原発依存」からさらに一歩踏み込んで「脱原発」へと進むことを求めている。
野田首相の政治的体質からしてあり得ないとは思うが、野田首相が税制と原発に関する政策を転換しない限り、次の総選挙でこの2点に関して民主党よりひどい論外な政策をとるであろう自民党が政権に復帰するか、さもなくば橋下徹が国政に進出してきて日本を焦土にしてしまうだろう。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1239.html
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