http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/811.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34431
Financial Times
攻撃を浴びる「ダボス・コンセンサス」グローバル化に疑問を投げかけた米大統領と仏大統領候補
2012.02.01(水)
(2012年1月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米国大統領の座を目指すニュート・ギングリッチ氏の選挙運動は、ほかのことはともかく、素晴らしい新フレーズを生み出して英語に貢献した。
先週ダボスにいた筆者は、至るところに掲げられた世界経済フォーラム(WEF)のスローガン「世界の現状改善に向けて取り組む」を見るたびに、ギングリッチ氏の造語「pious baloney(偽善的なたわごと)」が頭に浮かんだ。
グローバル化の祭典に集まるエリート層の不安
ダボス会議閉幕、世界的な「燃え尽き症候群」に警鐘
今年のダボス会議では、格差の拡大を懸念する発言が相次いだ〔AFPBB News〕
衝撃的に思えるかもしれないが、毎年ダボスを訪れる銀行家やビジネスマン、オリガルヒ(新興財閥)、独裁者といった多種多様な面々は、主に利他主義を動機としているわけではない。
それでも今年のダボス会議では、格差に関する苦悩が目立った。道義的な不安感を映した苦悩も多少あったのかもしれない。だが、それ以上に重要だったのは実利主義だ。
ダボス会議は事実上、スーツと雪靴を身につけた男たちが集うグローバル化の祭典だ。そして彼らは今、グローバル化を支持する議論が西側で敗北を喫したのではないかと恐れているのだ。
欧州連合(EU)の通商担当委員を務めたピーター・マンデルソン氏はある昼食会で、失業率上昇と賃金低迷の原因だとされている時でさえ、グローバル化と自由貿易はなお有用だということを政治家が国民に納得させなければならないと語った。この発言は、今年のダボスのムードをとらえていた。
会議の演壇からは、グローバル化の有用性を説得する方法について数々の提案が出た。欧州で経済成長を刺激する、教育に投資する、中国人やドイツ人に消費を増やさせる、といった内容だ。
セットで読むべき2つの演説
オバマ大統領、イスラエルに占領地撤退を要求
バラク・オバマ大統領は富裕層への増税や中間層への支援拡大を約束している〔AFPBB News〕
だが、活発な議論にもかかわらず、これらのテーマに関して先週行われた最も重要なスピーチは、ダボスでの演説ではなかった。本当に重要だった2つのスピーチは、バラク・オバマ大統領の一般教書演説と、フランス大統領の座を目指す社会党候補、フランソワ・オランド氏の地方選挙演説だ。
これらの演説は、2つセットで読むべきものだ。両者とも格差の拡大を嘆いた。どちらも富裕層に対する増税と中間層への支援拡大を約束し、大手金融機関を攻撃した。オランド氏は、金融界は顔の見えない政府で、「私にとっての真の敵」だとまで言ってみせた。
どちらの演説も、製造業の雇用と工場を国内に呼び戻すことを約束していた。これは、ダボスでは通常、不可能だと見なされるアイデアだ。
仏社会党、次期大統領選の候補にオランド氏を選出
世論調査では、フランソワ・オランド氏(写真)がニコラ・サルコジ大統領をリードしている〔AFPBB News〕
オバマ大統領は、米国経済を強化するための青写真は「米国製造業から始まる」と述べた。オランド氏はフランスの「再工業化」を訴えた。
製造業者を後押しする積極的な措置と並び、オバマ大統領とオランド氏は暗に保護主義的な対策を強調した。
オバマ大統領は、中国などの国々における「不公正な貿易慣行」の調査を担う部局を新設すると約束した。オランド氏は「不公正な競争」を非難し、諸外国に対して社会的基準と環境基準を引き上げるよう求め、応じなければ関税を課すことで、現状を是正すると提案した。
もし、これらの演説がダボス会議の代表団の耳に鳴り響いていなかったとしたら、鳴り響いているべきだった。
グローバル化と大手金融機関に対する反発
何しろ、ダボスはグローバル化がすべてだ。ところが、今年西側世界で行われる最も重要な2つの選挙で勝者となる見込みの人物がそろって、グローバル化そのものの主要な要素に疑問を投げかけたのだ。オランド氏は「グローバル化を前にして、共和国の主権」を取り戻すと約束した。
グローバル化と大手金融機関に対する反発についてダボスで最もよく使われる説明は、金融危機後の政治的ムードの変化に重点を置いたものだ。銀行家の高額報酬は、最近ではなかなか受け入れてもらえない。アジアが活況を呈する一方で、西側は苦しんでいる。
だが、構造的な力も作用している。グローバル化は、企業収益を押し上げる一方、賃金を抑制する世界的な人材のプールを生み出すことで、西側における格差の一因となる。金融危機が起きる前、各国経済が力強く成長し、融資を受けるのが容易だった時は、中間層は多額の借り入れを行うことで成長の利益を分かち合うことができ、貧困層は手厚い社会支出によって保護された。
しかし、信用収縮が起き、福祉予算の削減圧力が生じた今、こうした調整メカニズムは以前よりかなり弱くなっている。
ダボスにおけるコンセンサスは、財政を均衡させて成長に拍車をかけるために、欧州はもっと多くの「構造改革」を実施する必要がある、という考え方だ。必要な改革のリストには、必ずと言っていいほど退職年齢(年金支給開始年齢)の引き上げが挙がる。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相はダボスで、緊縮財政と経済自由化の必要性を強調するスピーチを行った。また、メルケル首相は、年金費用の削減に尽力するイタリアのマリオ・モンティ首相に温かい称賛の言葉をかけた。
仏全土で大規模デモ、年金開始年齢引き上げに抗議
サルコジ大統領は国民の反対を押し切って年金改革を断行した(写真は2010年10月の年金改革反対デモの様子)〔AFPBB News〕
だが、オランド氏はこのコンセンサスに抵抗している。同氏はニコラ・サルコジ大統領が手がけた数少ない重要な福祉制度改革の1つを覆し、フランスの年金支給開始年齢を引き下げて60歳に戻そうとしているのだ。
もしオランド氏が同じ考え方をする人を見つけたいのであれば、ライン川の向こうではなく、大西洋の向こうに目を向けるべきだ。オバマ大統領もまた、医療給付を拡大することで、社会のセーフティーネット(安全網)を強化しようとしている。
オランド氏もオバマ大統領も選挙運動を行っているという事実を忘れてはならない。オバマ大統領としては、実効税率が15%に満たなかった大富豪を相手に選挙を戦う可能性が高い時には、富裕層増税を強調する訴えは役に立つ。
極左に舵を切るオランド氏の姿勢は、ある程度、小規模な極左政党から票をかき集めて、大統領選の第2回投票(決選投票)に進むことを確実にするための策略かもしれない。
偽善的なたわごと
だが、言葉というものは、結果を伴う。もし次のフランス大統領と米国大統領が、中国の製造業者と西側の銀行家を標的にした選挙運動に基づいて選出されたら、こうした要素は恐らく将来の政策に反映されるだろう。
先週のダボス会議では、格差や、グローバル化の恩恵をはっきり示す必要性が盛んに議論されたにもかかわらず、「ダボスマン」は大衆的な攻撃をかわす態勢が整っているという発言はほとんど聞かれなかった。
「構造改革」、それに加えて緊縮財政、プラスより良い職業訓練を実施すればうまくいくという考えは、そう、偽善的なたわごとだ。
By By Gideon Rachman
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。