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IMFはユーロ圏の危機にかかわるべきではない
2012.01.24(火) Financial Times 1月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
国際通貨基金(IMF)は確定した融資枠の91%を欧州の支援プログラムに割り当てている。現在、これでは不十分で、融資枠を大幅に拡大すべきだという提案が出ている。
ユーロ圏を救済するためのIMFの財源拡大は、正当化されるだろうか? 具体的に言えば、ユーロ圏以外の国々はこうした新たな資本の調達に参加すべきなのだろうか? 筆者は参加すべきだと思わない。
そもそも関与拡大は必要ない
IMF、融資財源5000億ドル増強へ
ユーロ圏救済のための国際通貨基金(IMF)の財源拡大が議論されているが・・・〔AFPBB News〕
もちろん、ユーロ圏の危機は現時点で世界経済が直面する最大のリスクだとするIMFの判断は正しい。危機の解決には、世界の多大な利益がかかっている。
だが、特定の欧州連合(EU)支援プログラムに対するIMFの関与拡大は必要ないし、逆効果を招く可能性も少なからずある。
IMFの関与拡大が必要ないのは、ユーロ圏が自らを助ける財力を持っているためだ。ユーロ圏全体では、域外の国々に対して多少の経常黒字を出している。その結果、ユーロ圏は外部の資金に依存していない。また、ユーロ圏には、少なくとも理論上は最後の貸し手の役目を果たせる独自の中央銀行がある。
言うまでもなく、ユーロ圏は、マーストリヒト条約の赤字規定や「救済禁止条項」、欧州中央銀行(ECB)が各国政府に融資できないようにするルールなど、様々な政治的、法的制約の下で運営されている。
だが外部の人間が、こうした規則はすべて自ら課したものであり、それゆえ覆せると主張するのは正しい。ユーロ圏は頭を下げて諸外国に取り入る前に、自分たちの規則を変更すべきだ。
危機を悪化させている政策を後押しする恐れ
ユーロ圏が経済的に制約されておらず、世界で最も豊かな経済圏の1つであることを考慮すると、仮説に基づく将来の救済にIMFの関与を要請することは、道義的に非難に値する行為だ。
ここで起きているのは何かと言えば、ユーロ圏の加盟国は救済に追加資金を出すことが難しいと感じており、各国議会を迂回する手段としてIMF経由で資金を回した方が政治的に都合がいいと思っている、ということだ。
だが、筆者の見解には、それ以上に重要な論拠がある。ユーロ圏加盟国がこれまで危機に対処してきたやり方は、破滅的な結果を招く可能性を高めてしまった。そして、IMFの融資枠拡大は、現行政策を後押しする可能性が極めて高いのだ。
今広がりつつある景気後退は大部分において、ECBによる早計な利上げと、ためらいがちな危機対応、2008年の金融危機の後に銀行部門の自己資本を増強し損ねたこと、そして反射的に取った、景気循環を増幅させる財政政策の結果だ。
スペインの新政府は先週、国内総生産(GDP)比4.4%という今年の財政赤字目標は、どうやっても達成できないと認めた。この目標値は当局が、景気が回復するというふりができた時に定められたものだ。
イタリアは景気後退にもかかわらず、既に財政政策を引き締めている。スペインも財政引き締めを迫られるだろう。すべての国がギリシャの後に続いているわけだ。
ユーロ圏の度重なる政策ミスは、流動性の危機を支払い能力の危機に変えつつある。ここにIMFにとっての重大なリスクがある。
イタリアが債務を返済できなくなれば・・・
イタリアが長い景気後退に陥るようなことがあれば、現在GDP比120%に上る債務を同国が返済できない確率が大幅に高まる。イタリアから伝わってくる報道によれば、IMFは近く、イタリアの景気後退が2年続くとの予想を出す見込みだ。そうなれば、景気後退期の終わりに対GDP債務比率が上昇している可能性が十分ある。
イタリアの将来の支払い能力はもっぱら、市場金利と、力強く持続可能な経済成長に戻る見込みにかかっている。財政同盟と今よりずっと大きな責任分担なしで、どうしたらこれを成し遂げられるのか、筆者には思いつかない。
さらに、より慎重なIMFの関与を支持する技術的な論拠もある。
元アルゼンチン中央銀行総裁のマリオ・ブレヘル氏は最近、IMFの優先債権者待遇が問題になる可能性があると主張した。IMFの融資が実行されれば、自動的に、その他すべての債券保有者の弁済順位が下がるためだ。そうしたデフォルト可能な債券は、デフォルトする確率が大幅に高い。
そのうえ、事態があまりに深刻化し、IMFの優先弁済権が守られない恐れもある。そうなれば今度は、低利で融資を行うIMFの能力が危うくなる。
巧みにIMFを関与させる方法については、いくつかの提案が出ている。だが、どれも同じ問題にぶつかる。外部からの流動性支援はユーロ圏に、危機を悪化させている政策の推進を促してしまうのだ。
最善策は手を出さないこと
このため、考えられる限り、IMFにできる最善の貢献は、既に確約した支援プログラム以外に手を出さないことだ。もし関与せざるを得ないのであれば、IMFは少なくとも、追加の融資枠については各国レベルおよびユーロ圏レベルでの抜本的な政策変更を条件とするよう努力すべきだろう。
特に、銀行部門の脆弱性や各国銀行と各国政府の相互依存を取り除く政策など、いくつかの根本的な問題に対処するために、最低限の共同経済運営を要求すべきだ。
IMFがこうした議論にかかわるのは賢明ではない。
By Wolfgang Münchau
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