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日本経済いま知っておくべきこと あなたがすべてを失わないために
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2012年01月23日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
国債暴落だけじゃない!これからとんでもないことが起きる
年が変わっただけのことである。問題はそっくりそのまま、残されている。何ひとつ解決していない。身を引き締めよ。ヨーロッパが発火点となった恐慌はいずれこの国を襲う。そのとき慌てても遅いのだ。
■「復興債」から分かること
2011年、「神話」は脆くも崩れ去った。
日本の「モノ作り」は世界で群を抜いている、だから日本の大手メーカーが負けることはない—日本人は長らくそう信じてきたが、ソニー、パナソニックといった大御所が軒並み真っ赤な決算を発表し、経営者たちは会見場で苦渋の顔を見せた。
超円高。欧州危機。中国・インドなど新興国の台頭。七重苦とも八重苦とも言われる苦境に、日本企業はあえいでいる。
企業だけではない。国の借金=国債は天文学的に積みあがり、国民の収入は減り続ける。国も企業も国民も、これまで貯めこんだカネを取り崩しながらどうにかやりくりしてきたが、限界に近づいてきた。
いま、日本経済になにが起きているのか。これからなにが起きるのか—。
2012年は、日本をめぐるもう一つの「神話」が終わりを迎える年になるだろう。日本国債は安全だとするそれである。
予兆がある。
「(日本国債をいま大量に)買っている業態は海外勢であり、これは増え方が尋常でない」
東京・霞が関の財務省内、第3特別会議室でこんな発言が飛び出した。昨年末に開催された国債市場特別参加者会合でのことだ。
この会合は一定額以上の国債を買うことを条件に財務大臣から指定された金融機関のメンバーが参加し、財務官僚と国債市場の動向に関する情報交換を行うもの。いわば、国債を安定的に市場で消化するためにどうすればいいのかを話しあう"国債インナーサークル"である。
いったいなにが「尋常でない」のか。一橋大学准教授の小黒一正氏がこう指摘する。
「この事実は日銀が公表している統計を見れば誰でも確認できることですが、大々的に報道されるとインパクトが大きいからか、マスコミはほとんど報道していません。直近の統計によれば、市場で新たに消化された約43兆円の国債のうち、その4割ほどにあたる約16兆円を海外勢が買っていることがわかったのです。
日本国債を買い支えているのは日本の家計であり、日本の金融機関であるというのがいままでの常識だった。国内で消化できるから海外勢から売り浴びせられることもない、だから安全という神話もこれに基づいてきた。その神話が崩れかけているんです」
会合ではこれを聞いた参加者たちが、不安を具体的にこう言葉にしている。
「海外勢は市場に入るときも早いが、出るときも早いということが懸念材料。海外勢が買っていることで現在の円債(円建て債券)市場は低位安定していると捉えることもできるが、将来的にはかなりボラティリティ(激しい変動)を与える可能性がある」
「仮に売りが生じた場合には急激な利回り上昇(急激な価格下落)するおそれがある」
小黒氏が続ける。
「イタリアの公債の海外保有比率は2割ほどだったのが、10年間で2倍の約4割に上昇した。そして昨年、国債を市場で売り浴びせられて、金利が危険水域の7%まで急上昇した。
日本でも同じように海外勢による保有割合が急上昇する可能性が出てきたのです。彼らは日本の財政再建はうまくいかないことを知っていて、売りのタイミングを虎視眈々と待っている。税と社会保障の一体改革が空中分解したり、消費税増税ができない事態になったりすれば、そこを狙ってくるかもしれない。日本国債は国内で95%が消化されているから安全という神話は大間違いです」
こうした事態を受けて、財務省は今年に入ってこっそり"奇策"を打った。
東日本大震災の復興費用をまかなうために発行される復興債の9割を、個人向けで売り出す方針を決めたのだ。表向きの理由は「個人投資家の需要がある」というが、ホンネは違う。
「流通市場でこれ以上、海外勢に買って欲しくないと考えているのでしょう。『銀行の預金金利より高い』などという謳い文句で誘い込んで、日本の個人投資家に押し付けようという魂胆が透けて見える」(米国在住の機関投資家)
日本の財政が立ち行かなくなることは「政府も財務省も知っている」(現役財務官僚)。いずれ国債が暴落することは目に見えているのに、国=財務省はその「危険債券」を国民に売りつけようとしているのだ。
■売られたときはもう遅い
日本国債を大量に抱え込む日本の金融機関も、ひそかに「有事」に備えた準備を始めた。
「日本の金融機関や機関投資家はいまだに"護送船団方式"なので、売りたくても売れないジレンマに陥っている。そこで防御策として金を買い始めている。国債が暴落すれば破綻リスクのない金の価格は上がるから、リスクヘッジしているわけです。こうした金融機関の社員から『個人的に金を買いたい』という相談も増えている」
そう語るのはマーケット・アナリストの豊島逸夫氏。続けてこう言う。
「日本の公的債務の総額が家計資産1400兆円を上回るタイミング、日本が経常赤字に転落するタイミングは、ともに3~5年後というのがマーケットの通説です。
しかしマーケットは先読みして、3年先を見据えて動き出すでしょう。不謹慎な喩えで言えば、投機筋は洋上の彼方に白波が見えるか見えないかの時期から動き始め、大津波が陸地に襲い掛かるときにはすでに身を引いている。間もなく投機筋による売り攻勢が始まる。その口火が切られたときには、横並びの日本の金融機関が『あそこが売ったなら、うちも売れ!』と一斉に動き出す。一気に国債危機へと発展するのです」
いざ国債暴落が起きたとき、もっとも痛手をこうむるのは政府の口車に乗せられ、目先の高金利につられて国債を買った個人投資家だ。また、日本の大手金融機関も大打撃を受け、貸し渋りはもちろん預金封鎖さえありえる。結局泣きを見るのはいつも一般市民なのだ。
その詳細は後述するとして、ここで日本経済が抱える別の「危機」についても触れておこう。それは、戦後の日本を支えてきた製造業の危機と、貧困の拡大である。
日本を代表する一大企業トヨタが本社を構える愛知県下で、「それ」は起こっていた。
「庶民の収入が激減しています。顕著なデータを示せば、平均賃金から社会保険料、年金などをひいた手取りで20万円に満たない人が、20代の半分以上になっている。『50歳課長クラス以上』のグループもここ3年で年収が50万円も減少している。彼らが家族を養うということは事実上、不可能になってきている」(経営コンサルタントの北見昌朗氏)
ウォール街から始まった反格差デモが世界数十ヵ国への広がりを見せているが、日本の足元でも「貧困」が深刻な段階に入った。残業代や昇給が削られているのが主な原因で、背景には工場の海外シフト、いわゆる「産業の空洞化」がある。
2012年も新年早々からホンダが米国でのハイブリッド車生産、キヤノンがタイに新工場建設を発表したように、空洞化は昂進こそすれ、減速する気配はない。すでに空洞化が社会問題化している米国の現状が、日本でこれから起こる「未来図」となる。その惨状を、在米ジャーナリストの肥田美佐子氏がこう語る。
「産業の空洞化が製造業からサービス業まであらゆる企業に広がっています。製造業が工場を移転するのは当然で、たとえば大手出版社は会計部門、制作部門などを丸ごとインドにアウトソース(外注)するのが"常識"、もとの部署にいた社員は全員レイオフされている。広報部門なども同じようにアウトソースされているから、年収600万~700万円のポジションで働いていた中高年が数多く失業している。いまや米国では世帯家計が『資産ゼロ以下』の人口が全体の25%になってしまった」
さらに米国と違って、日本では「収入減」だけで済みそうにないという。クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏は空洞化の末路をこう語る。
「日本でこれ以上の空洞化が進むと、最終的には社会保障が削られることになる。GDPが1~2%のマイナス成長になって税収が減り、金利が上昇して財政が悪化するからです。年金支給額を3割ほどカットされ、消費税率も20%以上になっている可能性がある」
政府にも企業にもカネがない。頼みの綱は貯めこんだ1400兆円の家計資産を、重税で取り崩していくことしかない。
それでも日本政府はTPP(環太平洋経済連携協定)に前のめりで、企業の"海外逃亡"を後押しせんばかりだ。民主党政権は今年もこうした大企業優遇策を次々と実現させる勢いだが、これがまた一つの「危機の火種」となっている。
■1ドル=150円
参考になるのが韓国の先例だ。
先進各国とFTA(自由貿易協定)を締結、大企業に対する規制緩和を進めると同時に、庶民には社会保障のカットを行った結果、貧富の格差が大問題化しているのだ。恵泉女学園大学准教授(専門は人権論・国際政治)の李泳采氏がこう指摘する。
「当初は大企業を成長させればその後に中小企業が豊かになると思われたが、現実は違った。儲けを得るのは大企業とその正社員だけで、ほかは貧困に喘いでいる。データを示せば、大卒で正社員になれるのは6割に満たない。大卒で正社員になれないとその後も非正規で働く人が大半で、給与格差は正社員が100とすれば非正規の男性が65、女性なら38程度。大企業に入るには年間100万円ほどの授業料を払っていい大学に通うことが必要だが、貧困家庭はこれを払えない。最も深刻なのは若者の自殺が世界一多いこと。20代の死因の半数近くが自殺という国になってしまった」
日本はすでに自殺者数が高止まりで、将来に希望を持てない若者たちが「就職放棄」している現実がある。しかもこのほど過去最高益を発表したサムスンやLGといった大企業が世界中の市場を席巻している韓国と違い、「優遇」されているはずの大企業でさえ業績悪化に苦しんでいる。日本が再浮上するためには米アップルのように画期的な新製品を開発するほかないが、大企業の開発力はむしろ一貫して下り坂に見える。
話を国債に戻そう。
いずれにしても、日本が抱える「最大の爆弾」は国債にほかならない。空洞化ショック、TPPショックの影響は時間をかけて日本を蝕むが、国債暴落は経済を「即死」させてしまうからだ。
国債暴落「後」の日本はどのような姿になってしまうのか。有識者たちによる未来予想図を紹介しよう。
「仮に金利が2%に上昇しただけでも企業の資金調達コストが2倍になるので、負債を抱える企業は業績が大幅に悪化する。倒産企業が増えて、失業率もバブル崩壊後並みの6%近くになると考えられる。そのとき欧米経済が落ち着いていれば、相対的に円が売られ、1ドル=120円台の円安になる。そうなれば輸入物価も上がり、インフレ率が4~5%まで上がる」(富士通総研上席主任研究員の米山秀隆氏)
「韓国が'90年代にIMF(国際通貨基金)の管理下に入ったときを参考に国債暴落後の数字をはじき出すと、まず円が1ドル=150円まで落ちる。失業率も韓国の場合、4倍ほどになったから日本では10%を超える。日経平均にいたっては3000~4000円もありえる。IMFの管理下に入れば厳しい財政再建策が求められ、年金支給額は間違いなくカットされる。2割ほどカットされてもおかしくなく、支給開始年齢も引き上げられるでしょう」(第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣氏)
失業者や年金で生活していけない高齢者、ローン破産者など「生活難民」が街中に溢れることになる。
「いまギリシャでは失業率が20%近くまで上昇、5人に1人が失業している。イタリアでは財政再建のために消費税にあたる付加価値税が23%に引き上げられることになっている」(ニッセイ基礎研究所主任研究員の伊藤さゆり氏)
国債の規模が両国より大きな日本で暴落が起きれば、その何倍もの失業や社会保障のカットが行われるということだ。
それだけではない。
今回話を聞いた識者が共通して指摘するのは「大手金融機関が破綻する」というシナリオだ。
■ペイオフは穴だらけ
メガバンク、生損保といった日本の大手金融機関は、「国債経営」と揶揄されるように、日本国債に大量のカネをつぎ込んでその運用で儲けている(表参照)。逆にいえば、頼みの国債が暴落すれば、その経営は真っ逆さま、谷底へと突き落とされる。
具体的には「日銀の試算によれば3%の金利上昇でゆうちょ銀行などを含めた金融機関全体で80兆円の損失が出る」(前出・小黒氏)とされており、
「景気が悪いときに国債が3割ほど暴落すると、破綻するところが出てくる」(日本総研理事の湯元健治氏)。
そのとき我々の資産は大打撃を受ける。
まず預貯金。銀行が破綻しても、ペイオフ(預金保険制度)で元本1000万円とその利息などは保護されると考えている人は多いだろうが、この制度には"落とし穴"がいくつも隠されている。
実はペイオフの対象になるのは「利息のつく普通預金」や「定期預金」などだけで、「外貨預金」は対象外。さらに国内の金融機関であってもその「海外支店」に入れている預金は対象外だし、日本国内にある金融機関でも「政府系金融機関」「外国銀行の在日支店」での預金は対象外となる。
「ペイオフ用の資金は国と銀行が出資している預金保険機構から拠出される。しかし破綻する銀行が増えればその基金が枯渇して1000万円の保障が不可能になるかもしれない。しかも定期預金が一時的に封鎖されたり、引き出せる預金の金額が制限されるなど、一部で預金封鎖が起こる可能性もある」(ライフカウンセラーの紀平正幸氏)
次に生命保険。
契約先の生命保険会社が破綻した場合、それで契約が消滅することはない(別の保険会社に契約が引き継がれる)が、受け取る保険金は大幅に減額される可能性が高い。
過去の破綻例を見ると、30年満期の養老保険や60歳払済の終身保険など貯蓄型の保険は5~7割も減額されているからだ。
「掛け捨て型の保険は安心ですが、貯蓄型は予定利率が高い時期に契約した保険、満期までの期間が長い保険ほど減少額が大きくなるので気をつけたほうがいい」(ファイナンシャルプランナーの花輪陽子氏)
一方で株式や投資信託の場合、証券会社や投信会社が破綻しても、それを理由におカネが戻ってこないということは基本的にはない。ただ「投資先の株式や投資信託の価格下落分はもちろん保証してもらえない。株価は暴落しているし、株式型投信や国内債券型投信も大きく基準価格が下がっているだろうから資産が大きく減る」(前出・紀平氏)のは避けられない。
不動産も厳しい。
「国債が暴落して財政が苦しくなると、ギリシャで行われたように、不動産に特別税がかけられる。日本でも固定資産税が大幅に上げられることが考えられ、住居用以外の不動産が大量に売られることになる。さらに国債の金利が5~6%まで上昇した場合、変動型の住宅ローンの金利は7~8%まで上がるので、ローンを払えず手放す人が増える。こうして二重に不動産が売られるので、価格は暴落する」(同前)
ちなみに個人向け国債を持っている人も元本保証だからと安心はできない。国が有事となれば「元本の償還が7割程度に減額されたり、年に2回の利払いが1回に減らされる可能性はある」(同前)からだ。
危機の時代の資産防衛の考え方を、経済評論家の山崎元氏に聞いた。
「動き出すのは、本当に危険な国債暴落が起こる直前のほうがいい。前もって外貨などに資産を移し替えてすでに大損している人がたくさんいるからです。目安は1ドル=120円を超えて円安が進行し、同時に長期金利が3%を超えて上昇したタイミング。それまでは預金先の銀行を分散する程度の防衛策にとどめておくのが賢明です」
日本経済をめぐる安全神話の構図は原発のそれと同じであり、「事故」が起きた後には誰も助けてくれないし、政府の甘言は絶対に信頼できない。あなたと家族の資産を守るためには、正確な情報をもとに、自分自身で判断し、行動するしかないのだ。
「週刊現代」2012年1月28日号より
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