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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34366
Financial Times
格付け機関を格下げしろ
2012.01.23(月)
S&Pのフランス格下げ誤配信、原因は技術的ミス
ユーロ圏9カ国の一斉格下げなどで話題を呼んだ米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)〔AFPBB News〕
格付け機関を責めるなという発言を何度も耳にする。それに対する筆者の最初の反応は、「なぜ責めてはいけないのか」というものだ。そして、然るべき熟慮の末の反応は「一体全体なぜダメなのか」というものだ。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がユーロ圏の多くの政府を格下げし、フランスから大切なトリプルA格付けを奪ったことで、格付け機関が再びニュースの見出しを飾るようになった。
ニュースになろうとするS&Pの熱意には、どこか不穏なところがある。皮肉屋なら、これは通俗的なマーケティングツールだとするS&Pの言い分の芝居気を感じ取るかもしれない。S&Pと比べると、ムーディーズとフィッチはずっとおとなしい感じがする。
S&Pに今さらそんなこと言われても・・・
しかし今回、S&Pには、世間に授けるべき知恵があった。同社の大勢のエコノミスト、アナリスト、金融専門家は、驚くべき見識を提供した。緊縮財政だけではユーロ圏諸国の国家財政を修復できない。彼らは厳かにそう言った。弱い経済国は、落ち込む税収を復活させるために成長する必要がある、と。
ああ、そうだったのか! もしかしたら、S&Pはノーベル賞を狙っているのかもしれない。
今この時点で、格付け機関は政治家に対して緊縮に緊縮を重ねるよう説く人々の先頭に立ち、ケインズの倹約のパラドックスについて考えただけでも即刻格下げするぞと脅していたことを振り返るのは、恐らく意地が悪いのだろう。
何しろS&Pは我々に、2つ目の強烈な新事実を教えてくれた。国の支払い能力に対する脅威は、単に個々の国の赤字と債務を反映したものではない。違う。欧州の統治の問題もある。プロセスは煩雑だ。ユーロ圏17カ国はなかなか、迅速で決然とした行動を取ることができない――。
この2年ほど、アンゲラ・メルケル独首相やニコラ・サルコジ仏大統領、その他の首脳が何度もブリュッセルで首脳会議を重ねるのを見てきた人は誰も、国内の政治とユーロ圏の経済情勢の折り合いをつけようとする努力が障害を取り除いたとは決して思わないはずだ。そうじゃないのか?
筆者は、格下げはフランスを侮辱し、単一通貨を破壊するアングロサクソンの陰謀だというサルコジ大統領のような妄想を抱いているわけではない。それに、フィッチはフランスと関係があるのではなかったか?
英国も格下げされるのであれば、ダメな格付けでも構わないというフランスの閣僚たちの発言は、自分のためにならない。そうではなく、問題は、格付け機関が金融崩壊に因果な役割を果たした後に、なぜまだ格付け機関のことを多少なりともまともに取り合う人がいるのか、ということだ。
なぜ、それでも格付け機関を相手にするのか?
サルコジ仏大統領、フェースブックのアカウントをハッカーに乗っ取られる
フランスのニコラ・サルコジ大統領は、トリプルA格付けを国家の力強さの象徴として扱ってきた〔AFPBB News〕
サルコジ大統領は自ら恥辱を招いた。大統領はトリプルA格付けを国家の力強さの象徴として扱った。また、フランスが格下げされたら、自身の大統領の地位は「終わる」と打ち明けたと言われている。
これらすべてがS&Pに、その価値と全く不釣合いな権威を与えることになった。
これらの格付け機関は、我々に金融崩壊をもたらした莫大なクズ同然の債務にトリプルA格付けを与えたのと同じ機関だ。この債務を束ねて商品にしていた銀行が格付け機関にとって急成長する収入源だったのは、偶然だったに違いない。
2007年にジャーナリストが面倒な質問をしてきた時に、S&Pの従業員が個人的なメールに書いたセリフは何だったか? 「我々はまるで・・・ニクソンのホワイトハウスのように聞こえる」。その後起きたことを考えると、ニクソン元米大統領はこれをちょっとした中傷だと思ったかもしれない。
サルコジ大統領が不機嫌そうな沈黙を貫く一方で、イタリアのマリオ・モンティ首相は格下げに大人の反応を示した。モンティ首相は、トリプルB格付けはとても歓迎できないと述べた。だが、イタリアの経済問題に関するS&Pの分析については、首相自身が公式表明した見解の焼き直しにすぎないという。
皮肉なのは、確かな危機解決策を打ち出すユーロ圏の能力に関する別の問題については、S&Pが読み誤った可能性が十分あることだ。またしても。
S&Pが見落とした政治力学の変化
ユーロ圏がソブリン債務の地雷原から抜け出す道を見つけたと言うのは愚か者だけだろう。先々、まだたくさんの爆発が起き得る。特に大きいのは、ギリシャの無秩序なデフォルト(債務不履行)の可能性だ。
だが、一連の格下げの後に借り入れ金利が若干低下したのは印象的だ。S&Pは、危機の政治力学の明白な変化を見落としてしまった。数カ月前には各国政府全体の意思をもってしても無理だと思われたものが、今は少なくとも可能性があるように見えてきた。
メルケル首相は政治的な余裕を見いだした。いかなる救済にも反対する強硬派は、戦いで力尽きた。ドイツ政府は今、新しい欧州安定メカニズム(ESM)の財源拡大を支持する構えだ。
メルケル首相は決して、欧州中央銀行(ECB)に各国政府への最後の貸し手として行動するよう要請することはできないが、銀行システムを通じて間接的な支援を行うECBの戦略には満足しているように見える。
また、ドイツ政府関係者は、緊縮財政というトンネルの終わりに明かりを示すことで、危機の政治的心理を変えると話している。
これはユーロ圏17カ国の財政協定に向けた前進を反映している。1月末の欧州連合(EU)首脳会議は、協定を法律にする新条約を承認すると見られている。ユーロ圏全域で財政の清廉性を確立すれば、ドイツは無責任な南欧諸国を救済していると主張する批判派が弱まるだろう。
モンティ首相がイタリアで改革に着手したスピードも、同じような効果をもたらした。イタリアには今、経済政策について意見を持った至極まともな政府がある。モンティ首相はドイツ政府に話を聞いてもらえる。
格付け機関は「ジャンク」でいい
これが危機の政治における好循環の始まりになると言ったら、無理があるだろう。だが、各国政府はこれまではまり込んでいた悪循環から抜け出しつつあるのかもしれない。
S&Pについては、我々は過度に懲罰的になるべきではないのかもしれない。結局のところ、金融崩壊に一役買ったほかの悪者は皆、処罰を逃れている。
しかし、筆者がもう1つよく耳にするのは、格付け機関は世界の金融システムに組み込まれているため、やはり格付け機関は真剣に受け止めなければならない、という話だ。我々はただ、格付け機関を格下げすべきではないのだろうか? ジャンクでいいだろう。
By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34370
Financial Times
大幅に減ってきた米国人の借金
西側諸国の債務削減に希望の光?
2012.01.23(月)
今から数年前、「米国の消費者」という言葉は世界の市場に影を落としていた。無理もない。信用バブルの時代には、米国の消費者の借り入れが常軌を逸した債務ブームを生み出す一因になっていたからだ。
2007年に金融危機が始まると、その後、特にサブプライムの世界で相次いだ住宅ローンのデフォルト(債務不履行)が、パニックを引き起こすことになった。
だが、それから5年という歳月を経た今、同じ米国の消費者が今度は投資家に希望の光をもたらしているということは、果たしてあり得るのだろうか? これは、西側諸国のデレバレッジング(負債圧縮)の問題に関するマッキンゼーの新たな調査報告書が提示している興味深い見解だ*1。
静かにデレバレッジングが進む米国
というのも、多くの国の債務データを分析したうえでマッキンゼーが基本的に主張しているのは、米国は恐らく、西側のどの国よりもデレバレッジングを進めてきた、ということだからだ。
確かに、この事実が公的部門の借り入れに影響を及ぼすことはなかった。政策が行き詰まる中で公的部門の借り入れは今も増加しており、これを受け、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が昨年、米国からトリプルA格付けを奪うことになった。
実際、全体として見ると、西側諸国の公的部門と民間部門の債務総額は予想通り悲惨な状態にあり、大半の国では両部門を合わせた債務比率が国内総生産(GDP)の200%から500%で推移している。
だが、米国の消費者と金融機関に関して言えば、言及されないことが多いとはいえ、明らかな進展が見られる。
米国の金融部門の債務は危機以降、8兆ドルから6兆1000億ドルに減少しており、今はGDP比40%と、2000年と同じ水準にある。米国の家計の債務は5840億ドル減少し、可処分所得に対する比率で見ると、15ポイント低下している。減少分の3分の2は、住宅ローンと消費者債務のデフォルトによるものだ。
*1=Debt and Deleveraging; Uneven progress on the path to Growth, McKinsey Global Institute
しかも、まだ2540億ドル相当の住宅ローンが抵当権実行の手続き過程にあるため、「このペースでいけば、(米国の消費者は)2年後くらいには持続可能な債務水準に達する可能性がある」とマッキンゼーは予想する。
この状況は、米国と同じように多額の債務を抱えたスペインと英国とは対照的だ。英国は今なお、巨額の金融部門の債務と家計部門の借り入れを抱えており、その中には、銀行が抵当権の実行を手控えているために、まだ対処されていない潜在的な延滞住宅ローンも含まれている。一方、スペインはまだ、山のような企業部門の債務と多額の不動産関連の不良債権の重圧にさらされている。
スカンジナビアモデルとの相似
だが、マッキンゼーはもう1つの地理的比較にも注目している。現在米国で起きていることは、20年前のスカンジナビア諸国の経験をなぞっている可能性がある、というのだ。
「1990年代のスウェーデンとフィンランドにおけるデレバレッジングは特に今、今日的な意味を持っている」。マッキンゼーはこう書いている。
「両国におけるデレバレッジングは、特徴的な2つの段階を示している。最初の段階では、経済成長がマイナスかごくわずかな状況の中で、家計と企業、金融機関が数年間かけて債務を大幅に減らし、政府債務が増加していく。そして第2段階では、成長が回復し、政府債務が長年にわたって徐々に減少していくのだ」
果たしてこれは、投資家が今、その他西側諸国でも起きると期待すべき展開なのだろうか。そう期待するのは確かに素晴らしいことだ。実際、マッキンゼーは、「今は米国がこのような債務削減の道を最も厳密にたどっている」と論じている。
だが残念なことに、スカンジナビアのモデルに関するこのような楽観主義の一部は見当違いかもしれない、と筆者は心配している。1つには、1980年代後半から1990年代にかけてのスウェーデンとフィンランドには、従前の公的債務が比較的少ない状態で危機に突入するという「利点」があった。それは2007年の西側諸国には当てはまらない。
第2に、スウェーデンとフィンランドは、通貨切り下げと諸外国の強めの需要に後押しされた輸出急増のおかげで成長することができた。まさに両国は、問題が国内特有のものだったがゆえに、もっと大きな世界的成長の波に乗ることができたのだ。
しかし、最近の西側諸国は大きく異なる状況にある。誰もが皆同時に輸出による経済成長で債務から抜け出そうとするわけにはいかないのだ。そのうえ、もっと微妙な――だが非常に重要な――文化的特徴もある。
スウェーデンとフィンランドは、機能的な政治システムを持つ比較的均質な国であるために、抜本的な構造改革を実施し、金融システムを安定させるための大胆で断固とした措置を取ることができた。そのため、初期の段階では政策が先送りされたが、ひとたび政府が行動すると決めた時には、決断が下され、重要なことに実施された。
まだまだ長い道のり
これは現在の大部分のユーロ圏諸国には当てはまらない。今のユーロ圏では、指導層への国民の信頼を呼び起こすのははるかに難しい。ましてや、痛みをどう配分するかについて地域的なコンセンサスを形成するのは困難だ。
米国の政治制度も深刻な機能不全に陥っている。いつになっても長期的な財政計画を作成できずにいる状況を見ればいい。しかも、住宅ローン債務に関してさえ、問題は相変わらず厳しいままだ。
例えば、オバマ政権は数日中に、まだ残っている不良化した住宅ローンを取り除くための新提案を打ち出す構えだ。その中には、長期失業者に対する差し押さえの抑制や住宅ローンの元本削減といった案が含まれるかもしれない。
しかし、こうした措置は、特に選挙の年には大きな議論を呼ぶ。言い換えれば、厳しい現実は、米国のデレバレッジングはまだまだ先が長いということだ。より大きな問題を抱えるユーロ圏諸国については、言うまでもないだろう。
By Gillian Tett
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