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ここにきてのユーロ圏を取り巻く状況をみていると、一時に比べ緊張感や不安感が緩和しつつあるように思われる。それを示しているのが、外為市場でのユーロの動きとみられ、ユーロ円は100円台を一時回復している。
11日のドイツの5年債入札、12日のスペインの期間3〜4年の国債入札などは順調な結果となり、これによりイタリアやスペインなどの国債利回りが低下した。このあたりですでに地合の変化が感じられたが、その後13日に格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)はユーロ圏9か国の格付けを一斉に引き下げ、16日にS&Pは、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の格付けをAAAからAA+に引き下げたことで、また地合が悪化するかに思えた。
これまでであればこの一連の格下げは欧州の信用不安を再燃させてもおかしくはなかったが、ところがそうはならなかった。もちろん、これにはS&Pが1か月も前に格下げの予告をし、何度となくフランスの格下げ観測が流れるなどしたことで、市場はかなり織り込んでいた面もあろう。それは実際に格下げが発表されたことで、材料出尽くし感としてむしろ信用不安を緩和させる方向に影響した可能性もある。
ただし、今回の各下げでポルトガルがBBB-からBBと投機的水準に格下げされたことで、ポルトガルの国債はその後も下落基調となっており、まったく影響が出なかった訳でもない。
それでも19日のスペインの国債入札は目標の45億ユーロに対し66.1億ユーロを調達し、フランスの国債入札でも、79.7億ユーロとほぼ目標上限の金額を調達できたように、国債需給の面においても不安感は後退しつつある。
これについてはECBが昨年12月8日の理事会で流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設したことが大きな役割を果たした。12月のLTROによる4892億ユーロの資金供給により、銀行の資金繰りが楽になり、さらにその資金はいずれ国債に向かうであろうとの期待もあり、それがユーロ圏の国債市場を支えた面もある。
日本の不良債権問題を振り返っても、日銀による量的緩和政策、そして政府による公的資金の導入により、金融システム不安が徐々に解消していった。このため2003年の足利銀行の経営破綻が明るみに出た際は、これで金融システム問題がさらに悪化するというより、これでもう金融機関の悪化には歯止めが掛かるとの印象が強まり、その後は不良債権問題は市場で悪材料視されなくなっていった。このあたりと今回のユーロ圏を取り巻く地合が似てきてはいまいか。
要するに相場のセンチメントが変化すると、同じ材料に対しての反応が異なってくる。それが現在の欧米市場でも感じられる動きであり、あきらかに地合が変化しているものと思われる。
もちろんこれでユーロ圏の信用不安が一気に解消されるとみるのは楽観的すぎるであろう。ギリシャの債務に対する協議も気になる。格付け会社からはギリシャのデフォルトの可能性も指摘されている。さらにユーロ圏の銀行に対しては、今後の保有資産の圧縮や公的資本の注入等の可能性もある。ただし、ユーロ圏の国債価格の下落が止まり、むしろ上昇してくればこれらの状況は緩和されることも確かであろう。(中略)
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■世界的な金利低下・・「過剰貯蓄は政府が使えば良い」というバランス感覚に気付け
*****正気の沙汰ではない事
世界的に金融業が既に斜陽産業となっている・・この根拠として、世界的に金融資産が異常に膨張し、「資金」というものが希少性を失っている。
この金融の状況を反映し、世界全体で見れば資金の価格である金利は低下している。上昇しているのはギリシャなどのような信用不安を抱えた国々の金利や、不良債権が問題になっている欧州の銀行の間の取引金利である。その銀行間の取引金利でさえも、昨年12月の欧州中銀(ECB)の資金供給拡大後、落着きを見せている。連日の上昇によって0.6%に近付いていたロンドン銀行間金利(LIBOR)のドル3カ月物金利は、直近では0.56%程度まで低下している。
たしかに欧州の金融情勢については今後も波乱が十分予想される。しかし今回のECBの対応のような政策がどんどん実施されれば、何とかなんとか安定を保つことができるかもしれない(ただ今後必要な施策を実行するだけの見識がEUの指導者に有るかは疑問であるが)。
つまり南欧の金利の状況だけを見て物事を判断するととんでもない間違いに陥るということを筆者は指摘したい。
ところがEU各国を始めとして「第二のギリシャにはならない」といった声が大きくなって、どの国も財政再建に走り始めている。しかしこのようにマクロ経済や金融全体の大きな流れを無視した政権の運営が続く限り、経済の復興はとても無理である。
20年も不況が続く日本でも、唐突に消費税増税による財政再建が推進されようとしている。当然、増税は経済に影響を与えるが、ほとんどこの事は考慮されていない。野田首相にとっては「ブレ」ない事の方が大切らしい。
しかし「ブレる」とか「ブレない」といったことは問題ではない。状況が変わったり、新しい情報や別の知識に接することによって政治判断を変えることは、政治家にとって必要な資質であり常識である。「ブレる」とか「ブレない」といった事に政治家としての価値を見い出すこと自体が異常である。
しかし政治家にとって一番大事なことは、正しい情報と知識を基にした正しい政治判断を下すことである。日本は、今日、金利がさらに低下傾向にあり、新卒者の就職状況は最悪の状態が続いている。この経済状況で「増税に不退転の決意」なんて正気の沙汰ではない。
増税を急がなければならないほど日本の財政が悪化しているわけではない。その根拠は、日本の長期金利がまた1%を割込んで、これが世界で断トツの低い金利であることである。ところが増税を推進する財政再建原理主義者は、卑怯にもこれには一切触れようとしない。
*****中央銀行による国債の購入
世界で膨張した金融資産という名の過剰貯蓄が色々な方面で問題を起している。一つは各国の財政悪化であり、もう一つは有効需要の壮大な喪失である。
世界中が失業の増大に示されるような経済の低迷と財政の悪化に見舞われている。さらに金利が世界的に低下している(欧州のソブリンリスクによる金利上昇はあくまでも特殊事情による)。まさに日本がバブル経済崩壊後に経験してきたことである。
これらに対する究極の解決策は、前段で述べたように政府紙幣の発行や中央銀行による国債の購入と筆者は考える。ただ政府紙幣の発行はあまりにも大胆な政策であるだけに実現が難しいであろう。せっかく中央銀行があるのだから、中央銀行による国債の購入というところに落着くと思われる。
もっともこの政策は既に実施され始めている。米国ではFRBによる米国債の購入が実施され、さらにQE3が噂されている。英国もイングランド銀行が国債買入れを実施している。日本も日銀が国債買い切りオペ額をこれまで増やしてきた。問題は中央銀行による国債の購入によって得られた資金を何に使うかである。
金融機関に資金が有り余っているのだから、中央銀行が単に国債や債券を買って金融緩和を行っても効果は薄い。もし本当に経済を立直すという決意があるのなら、この資金を財政支出に充てるべきである。しかしどの国でも財政が悪くなっているという事になっており、財政の無駄が真っ先に問題になっている。この状況で財政支出を増やすには、政治家に大きな勇気と決断力が必要となる。
EUのソブリンリスク問題の解決のカギも中央銀行による国債の購入である。しかしこれを実施するには必要な政治体制の構築から始める必要がある。現状の体制のままならECB(欧州中銀)による共同債の買い入れということになる。しかしまずドイツの反発が強く共同債の発行が難しく、ましてやそれをECBが買い入れることはさらにハードルが高くなる。
もう一つは、ユーロを解体し各国の国債を夫々の国の中央銀行が購入するという方法である。しかしせっかく作ったユーロというものを消滅させるという話も現状では現実的ではない。おそらく中間的な政策、例えば極めて限定された額の共同債を発行しそれをECBが買い入れるといった中途半端な政策になると筆者は思っている。しかもその程度の政策の実施でも相当の時間を要すると予想される。
最初は色々な理由で過剰貯蓄が発生する。例えば将来に備えた年金の積立や所得格差の拡大、そして原油価格の高騰などがある。次には実態経済(設備投資、住宅投資、耐久財購入資金、運転資金など)に必要な以上の貯蓄は過剰流動性となって実態経済以外に流れる。
具体的には過剰貯蓄は不動産や株式、そして金などの商品などの市場に流れる。銀行は実態経済以外に資金を流した方が収益が大きいのでその方面での運用を拡大させ続け、最後にはバブルが発生する。そして銀行の信用創造機能がこのバブルの生成を助長する。そしてこのバブル経済によってさらに過剰貯蓄が格段に増える。
実態経済は民間経済と言い換えても良い。民間経済は予想収益率と金利を比べ借入を決めると考えられる。今日、日本、ドイツ、米国の10年の長期金利は既に1〜3%まで下がっている。しかしここまで金利が下がっても民間は銀行から借入れを起してまでは投資を行おうとしない。
これは民間が需要以上の過剰の設備を今日抱え込んでいて予想収益率が低くなっているからである。つまり世界的に収益を生むための民間投資が、それほど必要とされない経済状況に入ったと判断されるのである。そしてこの段階になると過剰貯蓄を使う者がいなくなる。
★場合によっては過剰貯蓄がなくなるまで経済が縮小することも考えられる。しかし過剰貯蓄は政府が使えば良いという事に気付くバランス感覚のある者も結構いる(FRBのバーナンキ議長などもその一人と言える)。金利がタダ同然なのだから、過剰貯蓄を政府が借りるかあるいはそれに見合う国債を発行し中央銀行が購入すれば良いのである。どうせ民間が資金を必要としないのだから、調達した資金は、インフラ整備や社会保障など国民が喜ぶことに使えば良い。ちなみに国債を中央銀行が購入すれば国の実質的な金利負担はゼロである。(中略)
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