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Q:ユーロ圏国債格付け引き下げの日本への影響は?
◇回答
□北野一 :JPモルガン証券日本株ストラテジスト
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■今回の質問【Q:1247】
先週格付け会社のスタンダード&プアーズは、フランスを含むユーロ圏9カ国の国債
格付けを引き下げました。この事態は、日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
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村上龍
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■ 北野一 :JPモルガン証券日本株ストラテジスト
「ユーロ圏9カ国の国債格下げ」と言いますか、一連の欧州の混乱は、日本の銀行に
とっては、千載一遇のチャンス到来ということではないでしょうか。1月19日の日
本経済新聞にメガバンクトップのコメントが掲載されておりました。「昨年4月以降、
欧州から持ち込まれた資産売却の相談は累計で8兆円に達する。今年に入ってからで
も1兆円近く増えた。資金や資本が相対的に厚い邦銀にとっては確かにチャンスだ」
と。ただ、やや気になるのは、この「確かに」という言葉。周りから促されて、しぶ
しぶ認めたというニュアンスがあります。
また、次のような姿勢もどうかと思います。「欧州勢の資産売却の受け皿になりうる
のは、日本、オーストラリア、カナダの金融機関ぐらい。ただ、欧州の問題は長引き
そうだ。慌てて買わずとも、私たちの基準に合うものは出てくるだろう」。むろん、
慌てて買う必要はありません。しかし、「私たちの基準に合うものは出てくるだろう」
という待ちの姿勢はいかがなものかと思います。「私たちの基準に合うものを積極的
に探しに行く」でも良かったのではないでしょうか。
欧州勢の資産を買うなら、相手が一番弱っているときに、買いたたかねばなりません。
現在が、100年に一度の危機だと言われるなら、100年に一度の集中力が必要で
しょう。銀行内のヒト・モノ・カネを、「欧州勢からの資産買い取り」というプロジ
ェクトに注ぎ込む。「欧州の問題は長引きそう」というのは、ビジネスの前提として
は甘い。長引くかもしれないけれども、早期に立ち直る可能性もある。そういう状況
も想定しておくべきでしょう。彼らが立ち直ると、それこそ「私たちの基準」では、
誰も売ってくれなくなるでしょう。
昔の話になりますが、日本の資産バブルが崩壊したとき、日銀はS&L危機時のFR
Bの対応に学び、長短金利差を拡大すべく、彼らとしては大胆な金融緩和に踏み切り
ました。当然、邦銀の債券投資部門は儲かります。金利は下がるし、キャリーでも稼
げるからです。しかし、当時の邦銀の行動は、S&L危機後の米銀とは全く異なるも
のでした。米銀は、長短金利差拡大局面で積極的に国債を買い増しました。資産に占
める国債保有比率は急上昇しました。しかし、邦銀は、資産に占める国債比率を維持
しました。
ただ国債を持っているだけで、債券投資を担当している「資金証券部」は、簡単に収
益目標を達成できたからです。しかし、当局は、もっと積極的に債券投資で収益を上
げて、不良債権処理を少しでも進めてもらいたかったのです。邦銀は、部門毎の収益
目標をいったん白紙に戻し、不良債権処理に必要な金額から逆算し、全社的な見地か
ら債券投資の枠を拡大するぐらいの取組をすべきであったと思います。当時の邦銀の
経営陣には、大局観と集中力がなかったということです。
競合相手が、資産を売りたがっており、買い余力のあるライバルも限られているとい
う状況は、そうそうあるものではありません。普通にやっているだけで儲かるでしょ
う。邦銀の経営者には、普通に儲けるだけでは意味はない。少なくとも10年分、儲
けるぐらいの気迫で、この局面に臨んでもらいたいものです。
JPモルガン証券日本株ストラテジスト:北野一
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