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The Economist
ギリシャ人の嘆き:地中海ブルース
2012.01.20(金)
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(英エコノミスト誌 2012年1月14日号)
ギリシャの経済危機が悪化している。一般市民の生活も同様だ。
ギリシャ債務危機、国民の健康にも悪影響 英誌報告
もうお馴染みの光景となったシンタグマ広場でのデモ〔AFPBB News〕
ギリシャから伝わってくるニュースは、いよいよ悲惨になっていく。国内総生産(GDP)は2012年に、4年連続で縮小する見込みだ。デフォルト(債務不履行)やユーロ圏離脱の話題も盛んになっている。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は先日、民間債権者にヘアカット(債務減免)を課す対策に向けた緊急プロセスの実施を求め(今では50%以上のヘアカットが必要かもしれない)、さもないとギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)からの第2次融資を受けられない恐れがあると語った。
またギリシャでは、警備員が1人しか勤務していない国立美術館から、窃盗団がピカソの絵画を盗むという事件が起きたばかりだ。
夜は賑わうアテネの街角
しかし、アテネの夜は大抵、賑やかだ。幾多の抗議デモの舞台となったシンタグマ広場界隈では、街頭は込み合い、陽気な音楽が流れている。近くにあるカリツィ広場では、バーやレストランは騒がしい人たちで溢れ、楽しそうな様子の人さえいる。
飲み物はモヒートから安いビールに代わってしまったかもしれないが、アテネの人々は、友人と出かけて夜を過ごすために生きているのだ。「家にいるなんていう選択肢はない」。アテネ大学で古典を学ぶ学生はこう話す。「そんなのは気が滅入ってしょうがない」
だが、夜が明けて日中になると、喧騒は物寂しさに取って代わられる。2007年までアテネ証券取引所があったソフォクレオス通りは今、アテネ市内最大規模のスープキッチン(無料食堂)になっている。ホームレスや、貧しくて食べ物を買えない人が集まる場所だ。
広場から東へ行ったキフィシアス通りでは、小さな店がいくつも倒産し、多くの場合、金を取り扱う商店や質屋、アダルトグッズを売る怪しげな店に取って代わられている。
犯罪も急増している。警察の統計は、軽窃盗と不法侵入が増えていることを示している。アテネ市内では2011年上半期に、住居侵入窃盗が314件報告されており、2010年通年の2倍に上っている。ほんの2〜3年前には安全と見なされていた地域にも犯罪が広がっている。
ホームレスも急増した。慈善団体のクリマカは、ギリシャ国内のホームレスは2万人に上り、2008年と比べ25%増加したと見ている。
危機が起きる前は、ホームレスと言えば、貧しい生い立ちの孤立した35〜50歳の男性がほとんどだった。今は路上が、仕事を見つけられない若者や、キャリアを途中で絶たれた中年の住処となっている。
貧困に追い込まれるギリシャ人、なのに公務員は・・・
多くの人は教育を受けており、中には大卒者もいる。大半の人は借金で自宅を失った。アテネの中流家庭出身のミュージシャン、ゲオルギオス・バルコリスさんは、国営ラジオ局に20年勤めていた。ギリシャが景気後退に見舞われると、仕事を失い、すぐに家も失う羽目になった。
ギリシャ人の5人に1人は貧困線を下回っている。「今年、ホームレスが倍増するという見方は、ひどく楽観的だ」とバルコリスさんは言う。
2010年5月に最初に救済されて以来、ギリシャ政府は緊縮措置を導入し、大幅な増税を行ったために、国民は辛うじて生活できるかどうかという状況に追い込まれている。失業率は19%に達し、今なお上昇している。GDPは2008年以降12.5%縮小しており、今年さらに3%のマイナス成長が見込まれている。
中間層のギリシャ人でさえ、貧困に追い込まれている。不動産価格と賃料は急落した。しかし不動産税は3倍に引き上げられた。
最大の打撃を受けたのは、企業数の99%を占め、民間部門の労働者の4分の3を雇っている小規模な家族経営企業(従業員50人以下)だ。多くの企業が倒産したり、従業員の大半を解雇したりした。大企業(銀行や民間病院など)も苦しんでいる。
実際、民間部門全体が従業員を大量に失っている。2008年以降仕事を失った47万人のうち、公的部門の出身者は1人もいない。公務員は給与を13.5%カットされ、各種手当がいくらか削られたが、雇用の純減はなかった。
以前から低かった公的部門の生産性は、さらに低下した。こうした状況は、過去30年間で膨れ上がり、今では労働人口の2割近くを雇用している官公庁に対する激しい反発を招いた。
地方は首都アテネよりまし
アテネを離れると、状況は多少ましだ。ギリシャ第2の都市テッサロニキを除けば、首都アテネのような抗議デモや社会不安は見られない。アテネと比べると、生活費と住宅価格が安く、家族の絆が固い。北西に位置する海辺の都市プレベザ在住の教師は「ここでは、すべての人に居場所がある」と言う。
犯罪も少ない。観光調査研究所の統計では、2011年には殺人事件の64%、強盗事件の75%が首都で起きている。
アテネ以外の都市の方が、経済も健闘している。観光業と農業は常に、田園地方と海沿いの都市の方が大きな比重を占めていた。
ギリシャ観光事業協会の報告によると、2011年上半期にギリシャを訪れた観光客は前年同期比13.9%増加した(観光収入は13.4%増加)。また農産物の輸出は9.1%増加している。
一握りとはいえ、農業に回帰している公務員さえいる。アテネ以外の地域の公務員の中には、本業は農業で、公務員の仕事を小遣い稼ぎの副業と見なしている人もいる。
国外へ流出する頭脳
多くのギリシャ人が、より良い未来を求め、外国に移住する道を選んだ。成功している学者、銀行員、技術者は既に、高賃金と好条件を求めて国外に脱出してしまっている。就業の当てがないまま国を離れた人もいる。その多くはギリシャ系移民が多いオーストラリアやカナダに向かう。
一番深刻な頭脳流出は、若者の流出だ。2008年以降、かつてないほど多くの若者(大半は20代)がギリシャを離れ、外国の大学に進学している。
「2006年に海外留学した時は、自分は異端児だったが、今では幸運に感謝している」と若いギリシャ人弁護士は語る。ギリシャの時代遅れの教育システムとストライキは、母国で教育を受けることを望む人を阻害してきた。試験は延期されたり、中止されたりする。勉強が1年ないし、それ以上遅れてしまう学生もいる。
学生たちがなんとか卒業できたとしても、見通しは暗いままだ。若年失業率は47%を超えている(しかも、なお上昇している)。仕事が見つかった幸運な人も、低賃金を強いられ、酷使され、そして多くの場合、教育水準に見合わない仕事に就いている。
こうした若者も外国に流れてしまうかもしれない。若い医師は専門的な訓練のためスウェーデンに行き、技術者はアブダビへ引っ越し、その他多くの人は比較的生活費が安く、ギリシャより楽しみの多いベルリンへ向かう。
人口の高齢化を考えれば、こうした状況はすべて、ギリシャの将来展望を損なう。今後10年内には、年金受給者が増え続ける一方で、労働力が縮小に転じる見込みだ。
シンタグマ広場での幻滅
驚くまでもなく、政治家や政党の支持率は過去最低水準に落ち込んでいる。一部の有権者は、大衆迎合的な反EUのメッセージに共感している。だが彼らは、ギリシャの親EU、親ユーロ路線に対抗するほどの勢いは得ていない。大多数が抱くのは、ブリュッセルやベルリンではなく、汚職や縁故主義、無能さのせいで、これほど悲惨な大混乱を招いてしまった2大政党に対する幻滅だ。
論調査によれば、ギリシャ人の77%が、中央銀行出身のテクノクラート、ルカス・パパデモス氏が率いる挙国一致内閣に、ギリシャをユーロ圏に留まらせるために必要なあらゆる策を講じてほしいと考えている。差し当たっては、ユーロ圏からの離脱は大惨事を招くというのが国民の総意だ。
ギリシャ新首相にパパデモス前ECB副総裁、大連立内閣発足へ
高い支持率を誇るルカス・パパデモス首相〔AFPBB News〕
パパデモス氏が好まれる理由は、政治と無縁の経歴と金融の専門知識にある。同氏の支持率は66%で、ギリシャの政治指導者の中で最も高く、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のヨルゴス・パパンドレウ前首相の支持率の3倍以上に上っている。
パパデモス氏が11月に首相に就いて以来、ある程度落ち着きが戻った。しかし、それも今、新たな危機と4月に行われる見込みの総選挙によって脅かされている。
選挙は、ギリシャが次回実行分の救済金を確実に受け取るために必要な構造改革にとって、危険な阻害要因になるかもしれない。
中道右派の新民主主義党(ND)はPASOKに圧勝すると見られているが、有権者は7つか8つの政党から成る議会を選出する可能性があり、改革断行が難しい連立政権の樹立を余儀なくされるかもしれない。
試される国民の忍耐
ギリシャ人は過去30年以上にわたり、公的部門が肥大化し、EUからの補助金が流れ込む中で贅沢な暮らしを送り、多くの人々が日常的に制度を悪用してきた。この3年間で、ギリシャ人は困窮と屈辱に耐えるよう求められてきた。
国民が度々デモを行い、気落ちしているのも無理はない。問題は、このような状況に国民があとどれほど耐えられるか、だ。ギリシャが無秩序なデフォルトに向かう中、選挙が限界点になるかもしれない。これまでギリシャ人は驚くべき冷静さを発揮してきたが、それも永遠には続かないかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34357
Financial Times
パンドラの箱を開けたギリシャ債務削減交渉
2012.01.20(金)
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(2012年1月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャの交渉担当者は間もなく、同国の膨大な債務負担について債権者と最終合意に達するところかもしれないが、合意の価値は元のギリシャ国債と同様、紙くず同然かもしれない。
BNPパリバ会長の特別顧問を務めるジャン・ルミエール氏と国際金融協会(IIF)のチャールズ・ダラーラ専務理事という2人のベテラン実務家が率いる債権者グループは1月18日、緊迫した議論でギリシャ当局者と一定の方針をまとめた。だが、協議に参加していない少数派の債券保有者が合意内容を拒否する可能性がある。
協議に参加していない民間投資家の存在
ギリシャ国債を保有する複数のヘッジファンドは、自分たちは交渉に参加しておらず、投資家が保有する国債の元本を50%削減し、受け取り金利を引き下げることを軸とした「民間部門の関与(PSI)」には同意しないと話している。
彼らによると、やはり交渉で決まった条件に同意する動機を持たない保険会社や資産運用会社、年金基金も同じ考えだという。
ルミエール、ダラーラ両氏が率いる債権者運営委員会は、ギリシャの債務残高2600億ユーロのうち、推定で1500億ユーロ相当の国債を保有する投資家を代表している。JPモルガンの試算によると、欧州中央銀行(ECB)とユーロ圏の各国中央銀行の保有高を除くと、550億ユーロ前後のギリシャ国債を保有する民間投資家が残っていることになる。
ギリシャ政府がすべての借り入れについて「自発的な」債務交換を行うという目標を達成し、デフォルト(債務不履行)を回避するには、今度はこれらの民間債券保有者に、交渉で決まった債務交換に同意してもらわねばならないのだ。
「(決着が見込まれている)解決策は一時的な処置だ。市場は2〜3日、ないし1週間程度は満足するだろうが、そこで難題にぶち当たる」。ギリシャ国債を保有しながら交渉に参加していない数十億ドル規模の大手ヘッジファンドの幹部はこう言う。「難しいのは、(債権者委員会に加わっていない)残りの債券保有者の同意を取りつけることだ」
3月の大量償還に間に合わない
委員会のメンバーでさえ、3月20日に期限が訪れる145億ユーロの国債償還という大きな正念場に間に合うよう協議のプロセスが成功する可能性は低いと認めている。
「我々は会社として、今回の合意が最後の合意になると考えていない」。27億ドルの運用資産を持つグラマーシーの調査部門幹部、ロバート・ローチ氏はこう話す。グラマーシーは、2007年のアルゼンチンの債務再編の協議で債券保有者側を代表したヘッジファンドだ。「これはプレーヤーが大勢いる交渉で、まだテーブルについていないプレーヤーさえいる」
グラマーシーは、ギリシャ国債の購入を避けてきたと話す多くのヘッジファンドの1つだ。大幅に割引された水準で取引されているにもかかわらず、まだ十分安いと思えないからだという。
「ギリシャの問題が最終的に解決するのは、少なくとも2年、3年、ことによれば4年先で、何らかの最終決着に至るまでには、2回、もしかしたら数回のヘアカット(債務減免)が実施されるだろう」とローチ氏は言う。
ギリシャ国債を大量に保有するヘッジファンドは、マラソン・アセット・マネジメント、ベガ・アセット・マネジメント、グレイロック・キャピタル、サバ・キャピタルなど。だが、このほかにも数多くのヘッジファンドが公式協議に加わっていない。そのうち数社は、ギリシャ国債への投資で損失を出している。
全面合意を得られなかった場合の選択肢
全面合意を得られなかった場合、ギリシャと同国のアドバイザーを務めるラザードおよびクリアリー・ゴットリーブに残された選択肢は、決して魅力的なものではない。一番の選択肢は、ギリシャの既存の債務ストックに「集団行動条項(CAC)」を盛り込む新法の制定だ。
CACを行使すれば、PSIに反対する少数派の債券保有者に新たな条件を飲ませることができるが、その過程でギリシャ国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の発動を招く恐れがある。ユーロ圏を本格的な銀行危機に陥れかねない危険な一手だ。
あるファンドマネジャーは、問題の一端は、ギリシャの債権者のうち身元が分からない投資家の多くが、まさにそうしたCDS発動のために抵抗していると思われていることだと言う。
銀行のトレーダーたちの話では、特に保険会社は昨年、自社が抱えるエクスポージャー(投融資残高)をヘッジするためにギリシャのCDSを購入しており、恐らく今、痛みを伴う債務交換に応じる動機をほとんど持たないという。
CDS発動を期待する投資家
ギリシャ国債を保有するあるファンドマネジャーは「まさにCACという条項の脅威のために、どんな投資家も、条件を受け入れる十分な理由がない」と指摘する。
「もし投資家が、どのみち債務交換を強いられると思ったら、そうせざるを得なくなる前に条件に同意する理由などない。同意しないことによって自分が保有するCDSを発動させられるとなれば、なおのことだ」
3月に向けた交渉の結果がどうなろうと、多くの債券投資家が見るところ、PSIのプロセスの価値については疑問の余地はほとんどない。
米国の巨大プライベートエクイティファンド、カーライル傘下のヘッジファンドで、10億ドルの運用資産を持つエマージング・ソブリン・グループが昨年顧客に述べたように、欧州の政治家は「ユーロ圏全域で国債のデフォルトリスクの再評価」を招くことになりそうなパンドラの箱を開けてしまったのだ。
By Sam Jones
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