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エコノミスト・カンファレンス
国債暴落のXデーはやってくるのか?高齢化で支出増は確実なのに、税収増のメド立たず・・・
2012.01.17(火)
エコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2011」リポート、第5回の今日は「財政再建に向けて」をテーマに行われた議論をお届けする。
パネリストは自民党シャドウ・キャビネット官房副長官の林芳正氏、オリエンタル・エコノミスト・アラート編集長のリチャード・カッツ氏、東京大学大学院経済学研究科授の井堀利宏氏、メリルリンチ日本証券調査部のチーフエコノミスト吉川雅幸氏。司会はエコノミスト誌東京特派員のケネス・クキエ氏。
手を打たなければ7〜8年で危機到来の可能性も
司会 まず、自民党の林先生にお聞きします。日本の財政赤字はどの程度深刻であり、それに対して何をすべきなのでしょうか。
自由民主党シャドウ・キャビネット官房副長官、林芳正氏 (写真提供: エコノミスト・カンファレンス、以下同)
林 自民党では、2011年春に「X-dayプロジェクト」を設置し、国債暴落の可能性とその対策について市場関係者や学識者などから幅広くヒアリングを行い、報告書をまとめました。
野党として財政赤字・財政危機の問題を政府に警告するのが狙いで、報告書では今後7〜8年ぐらいの間にX-dayが到来する可能性にも言及しています。政党がそこまで踏み込んだことを言うのは恐らく初めてですが、我々は、それほど強い危機感を持っているのです。
社会保障、防衛、文教、公共事業など予算額の大きな項目に関しては、5年間でどのように削減するか、あらかじめ具体的な数字を示して、インパクトを抑えながら実現していく必要があると考えています。
東日本大震災の復興については、4月から特別会計を作り区分経理します。日本は震災によって物的・精神的に大きなダメージを受けましたが、債務・財政面でのインパクトはそれほど大きくありません。
復興に必要な費用は10年間で最大で10兆〜20兆円程度ですが、実は、国債市場での1カ月の発行額とほぼ同じなのです。財政全体に与える影響はそんなに頭を抱え込むほど大きいものではないと認識しておく必要があります。
自民党が与党の時代には、予算や税制で成長戦略を裏打ちする政策を常に考えていました。民主党政権では論文のような成長戦略が出てくるばかりで、それを実現するためにどういう補助金を出すのか、どういう努力をするのかという具体的な施策が付随していません。
成長が伴わずに財政再建だけをやっていては縮小均衡に陥ってしまいます。財政再建と成長戦略を同時に全てやっていくことが大事だと思います。
投資家は「日本に残された時間」に注目
司会 グローバルな投資家は日本政府に何を期待しているのですか。
吉川 マーケットの大勢は、ここ1〜2年でX-dayが来るとは考えていません。日本国債は国内投資家比率が高く、デフレの影響で実質金利がかなり高いこともあり、即座に大規模売りが出る可能性は低いと考えられます。
メリルリンチ日本証券 調査部 日本チーフエコノミスト、吉川雅幸氏
国内産業も完全に空洞化しているわけではないので、為替が1ドル=100円まで下落すれば、貿易黒字が拡大し、経常黒字が拡大する。つまり、国全体としての貯蓄率が上がるわけで、すぐにX-dayが来るという見方は少なくなっているのです。
逆に、5〜6年という中長期で見ると、日本もヨーロッパの危機と同じような問題に直面する確率が非常に高くなっているのかもしれません。金融市場の焦点は、危機を回避するために、日本にどの程度の時間が残されているのか――ということです。
日銀は最近、「実質為替レート」という議論を持ち出します。デフレは国際競争力の押し上げ要因なので、円高になっても日本はそれほど競争力を失っていないはずだというのです。だとすれば、金利も実質で議論すべきです。日銀によれば日本は「超低金利」ですが、デフレが続いていることを考慮すると、「実質金利」は非常に高いことになります。
例えば、10年国債は金利1%強ですが、物価上昇率が1%のマイナスであることを加味すると、実質金利はプラス2%で、欧米諸国よりもはるかに高い。こういう状態を放置した結果、円高になっているのです。ここで円高に手を打ち、空洞化に歯止めを掛ければ5〜6年の時間を稼げる。
逆に、一段の円高で産業空洞化が進み、為替が100円に戻っても黒字が出ない体質になると、2〜3年以内に危機が起こってしまうかもしれません。
社会保障費の聖域化で無駄な支出の増えた民主党政権
東京大学大学院経済学研究科教授、井堀利宏氏
井堀 将来を見通して日本が非常に不利なのは、世界で一番高齢化のスピードが速いということ。社会保障費は今後、さらに急速に増えるだろうと言われています。
もう1つは、今の民主党政権も過去の自公政権も増税の努力をしていないわけではないのですが、結果として消費税率は5%のまま。政治的に増税が難しい環境にあるということです。
将来、経済状況が好転して自然な税収増で改善するレベルならば財政問題は気にする必要はありませんが、日本は今後20〜30年、財政赤字がかなり増える見通しなので、そのファイナンスは今後ますます厳しくなるでしょう。
過去100年程度を遡ってみると、1930年代にニュージーランドで公債残高のGDP比が250%となったのが先進国としては最悪の数値です。日本は現状で200%で、このままのペースでいけば250%を超える勢いです。
民主党政権になって社会保障費が聖域化し、抑えるどころか、無駄な社会保障費が増えています。早めの増税、早めの歳出抑制に取り組まなければ、日本は深刻な状況に追い込まれます。
増税のリスクよりも、国民総背番号で課税逃れを捕捉せよ
カッツ 向こう5〜10年に危機が起こることはないでしょう。欧州の債務危機は、財政赤字と対外債務という2つの問題を抱えている国で起こっています。
日本には大きな経常黒字があり、当面は資本流出の恐れはありません。97〜98年のアジア危機の時も、慢性的な対外債務を抱えた国は混乱に陥りましたが、日本はなんとか踏みとどまりました。
オリエンタル・エコノミスト・アラート編集長、リチャード・カッツ氏
不景気の時期に焦って消費税を増税すれば、1997年の轍を踏むことになります。いずれは増税が必要になりますが、私が総理ならば、財政・金融刺激策を使ってデフレ脱却を目指し、それとともに、長期的に債務削減にコミットします。
消費税増税よりも、国民総背番号制で農家や自営業者の課税逃れをきちんと捕捉する方が効果的です。これは、消費税の2〜2.5%の増税に匹敵します。
会場からの質問 林先生にお聞きします。日本人の個人金融資産は1400兆円もあり、1%の利率で回すのはあまりにも夢がない。1400兆円の1%で14兆円、2%で28兆円、ここを投資に回せば、新たな経済モデルを打ち出せるのではないでしょうか。
林 今の政府に成長戦略が欠けているのは先ほど指摘した通りです。最近、私が勉強しているのは「GDP」をやめて、「GNI」を採用してはどうかということです。GNIとは Gross National Income=国民総収入 という指標です。
GDPには海外投資に伴う収益、所得収支のプラスが入らないので、GDPを増やすには国内で生産し、国内で儲けるしかありません。しかし、世界の成長センターであるアジアの中心にいる日本が、そこで稼ぐことを考えない手はありません。所得収支も含めたGNIで経済を大きくしていく発想を持つことは重要ではないかと思います。
私は消費税を引き上げ、社会保障をサステナブルにすることは、非ケインズ効果で消費も喚起すると考えています。さらに、公的な介護・医療・保育を充実させることで、一定の雇用も生まれます。
介護については公的保険で支える「エコノミークラス」の部分と、富裕層が利用する民間の「ファーストクラス」のサービスがありますが、現状では、「ビジネスクラス」の部分が不足している。規制緩和によって、この部分に民間の保険サービスが増えてくれば需要喚起にもなるし、雇用も生まれます。こうした施策と合わせて、GNI大国を目指すべきだと考えています。
社会保障改革なくば、消費税率65%も!?
司会 パネリストの皆さんが楽観的な見通しを言われても、私は不安な気持ちを払拭できません。高齢化で医療費などの社会保障が増え、景気の悪化で失業保険も増えるかもしれません。とても楽観的な気分にはなれないのです。
井堀 規制改革で成長力を高めることは重要ですが、経済成長が多少回復したところで、日本の財政状況が劇的に改善するとはとても思えません。深刻な状況であると認識する必要があります。
指標としてGDPを使おうと、GNIを使おうと、税収は劇的には増えないのです。多少の経済成長率では、ほとんど税収増の効果はありません。高度成長期のように10%を超える実質成長率が20〜30年続けば、そこそこ財政の改善が期待できますが、通常のせいぜい2〜3%の経済成長が続く限りにおいて、税収が財政健全化に与える効果はほとんど無視できるような大きさだと思います。
一方で、30〜40年後の日本の65歳以上の高齢化人口は、労働人口とほぼ1対1の割合になります。現行の社会保障制度を前提にしている限り、65歳以上の高齢者層を同じ規模の勤労世代で支えざるをえない極端な高齢化社会になってくるのです。
グローバル化の影響で、成長戦略を講じたところで賃金率が日本だけが増えることは想定できません。若い人の数が減っていて、所得がそれほど増えない時に社会保障を急激に増やし、その財源を若い人に求めるのは無理なわけです。
財政再建には、今の財政状況への対応だけでなく、20年後、30年後に予想される財政悪化に備えておくことが重要です。最近、話題になっている埋蔵金の話で言うと、今、使うのではなく、むしろ、将来に備えて貯めておく必要があると思います。今よりも将来の方がもっと大変で、社会保障制度を相当スリム化しなければいけないのではないでしょうか。
先ほど、林先生から「エコノミークラス」と「ファーストクラス」の例が出ましたが、日本では、社会保障の基本的なところであるエコノミークラス部分への国民の期待が非常に強くあります。そこを思い切って抑えることができれば、例えば、基礎年金の支給開始年齢を80歳ぐらいまで一挙に上げるなどの措置ができれば、歳出を大幅にカットできます。
逆に、そうした思い切った社会保障のスリム化ができないのであれば、消費税を10%に増税するぐらいではとても追いつかない。私の試算では、今の社会保障制度を前提にしつつ、そこそこの経済成長を維持するには消費税率は65%が必要になりますが、それはあまりにも非現実的ですよね。
成長戦略も必要ですが、早めに無駄な歳出の削減に取り組み、消費税はそこそこ上げる程度で済むようにしないといけないと思います。
自民党は日本の将来よりも、打倒民主党?
カッツ 日本の国債問題はまだそれほど深刻ではないし、問題を解決する時間があるんです。しかし、それ故に問題を回避する時間もあるということになってしまいます。
自民党は、日本の将来のことよりも、なんとかして民主党をやっつけようということを考えているだけなのではないでしょうか。消費税増税の必要性については、自民党の谷垣(禎一)総裁も野田(佳彦)首相も同じことを言っているはずなのに、自民党は民主党の動きを食い止めようとしています。
まだ時間的な余裕があるだけに、自民党の執行部は政治ゲームをしているだけで、本来の問題に取り組んでいない。そこが心配すべき点です。
10年ぐらいは大丈夫だろうと思って先送りしていると、本当に危機がやって来た時には、取り返しがつかない状態になっているかもしれません。口先では国民に対して不安を煽っておきながら、何もやらないでいると、オオカミ少年のようになって、本当の危機が来た時に誰も信じなくなってしまいます。
林 我々は「財政健全化責任法」を国会に提出しましたが、3回にわたって民主党に廃案にされました。
我々は消費税を上げることを公約にして選挙に勝ったので、それ自体に反対はしません。しかし、増税には協力を求めるけれど、使い道は与党だけで決めるなどというのは通用しません。
五十嵐(文彦)財務副大臣は先日、出演したテレビ番組の中で「消費税増税したら子ども手当を増額する」と言っていました。そんなことに使うために消費税を上げていたら、いくら消費税を上げてもキリがありません。
何のために消費税を上げるのか、いつまでにどれぐらいの歳出削減をして、どのような社会保障のプログラムでどの程度のお金を割り当てるのかという点について合意できない限り、民主党に協力することは難しいです。
司会 でも総理は、野党に協議を呼びかけていますよ。
林 廃案にされた「財政健全化責任法」には、一緒にテーブルに着くということも明示しています。まずは、その法案を通してほしい。財政再建について明確な姿勢を示さず、消費税増税だけ抱きついてきて野党にも責任を分担してくれという民主党のやり方は、信頼できません。
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