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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34324
ユーロ圏格下げ後にやって来る負のスパイラル
2012.01.17(火) Financial Times 1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1月13日にユーロ圏9カ国の国債格付けを1〜2段階引き下げ、フランスとオーストリアはトリプルA格付けを失うことになった〔AFPBB News〕
高揚感が漂ったのもつかの間、週の終わりには厳しい現実が待っていた。
ある意味で、先週金曜日に流れたニュースはそれほど意外なものではなかった。フランスの格下げは予告済みのショックだった。
債務減免への自主的な参加に関する民間投資家とギリシャ政府の交渉が暗礁に乗り上げたことも、同様に予想されていた。もともと非現実的だった提案が拒絶されただけだ。こんなことに驚いたふりをすべきではない。
とはいえ、これらはどちらも重要な出来事だ。今年見られそうな展開の背後にあるメカニズムがここから垣間見えるからだ。
格下げ→マイナス成長→債務増大→さらなる格下げの連鎖
ユーロ圏は、格下げがマイナス成長を招き、債務の増大、そしてさらなる格下げにつながる負のスパイラル(連鎖)に陥った。景気後退はまだ始まったばかりだ。
ギリシャはその大半の債務をデフォルト(債務不履行)する公算が大きくなっており、ユーロからの離脱を強いられる可能性すらある。実際にそうなれば、スポットライトはすぐにポルトガルに向けられ、伝染性のある格下げの第2ラウンドが始まることになるだろう。
救済基金としての規模が十分ではない欧州金融安定機関(EFSF)も格下げに直面している。EFSFの格付けは、参加している国々の格付けを借りたものだからだ。
EFSFの仕組みを考えれば、実質的な融資能力は今回の格下げにより低下することになるだろう。またフランスの格下げは確かに驚きではなかったが、ユーロ参加国はこの事態に対するプランBを作っておらず、当座しのぎの緊急シナリオがいくつかあるにすぎない。
ユーロ圏諸国は、EFSFとその後継となる常設機関の並行運用を決断するかもしれない。後者の設立資金を即座に全額拠出する可能性もあるだろう。だが、そんなことをすれば、ただでさえ悪い年に国家財政の赤字を生むことになる。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、フランスとオーストリアを格下げする一方でドイツとオランダをトリプルAに据え置いたことにより、 最終的にユーロが崩壊する時の経済面での勢力図はどのようなものになるのかという予想も示してくれた。政治的には、トリプルAの国々がすべて格下げされた 方がはるかに対応しやすかっただろう。
今や、トリプルAを維持する大国はドイツだけとなった。この格付け据え置きにより、ドイツにとってユーロ共通債はますます受け入れ難いものになる。フランスとドイツの間に打ち込まれた格付けの楔(くさび)は、両国の関係をさらにアンバランスなものにするだろう。
パラレルワールドで進む危機と解決策
ユーロ圏の危機とその解決策は、パラレルワードで進んでいる〔AFPBB News〕
13日の報道後に即座に示された直感的な反応は、ユーロ圏の危機とその解決策がいわば「パラレルワールド(並行宇宙)」で進んでいることを再認識させてくれた。
欧州連合(EU)は財政の新しい条約を早急に締結すべきだというドイツのアンゲラ・メルケル首相のコメントは、危機と解決策が断絶していることを示す典型的な例である。どんなことが起きようと、ドイツが出す答えは財政規律なのだ。
この危機対応では、ユーロ圏内の不均衡において民間部門が非常に重要な役目を担ったことが見落とされている。
現時点でEUの政治の最優先課題となっている財政の新しい条約の締結は、ひいき目に見ても、問題の本質に向けられるべき注意を散漫にしてしまう意味のない行為だ。実現すれば、ギリシャで見られるような、景気の振幅を大きくする緊縮財政に向かう流れを強める可能性が高い。
また、EUは規制の強化を通じて格付け会社に報復するだろうと筆者は予想している。正当化できるか否かはさておき、これもやはり、注意を逸らしてしまう行為である。
メルケル首相の勝利でシステム崩壊が続く
筆者は以前、12月のEU首脳会議はシステムを抜本的に立て直す最後のチャンスだと論じた。その時点では、ユーロ圏諸国の共同予算やユーロ共通 債、ユーロ圏内の不均衡是正を目指した経済政策、そしてその文脈に沿った国家予算への厳しい制約などを盛り込んだ包括的な取引を予想することも可能だっ た。
メルケル首相と、ベルリンおよびブリュッセルにいる首相の部下たちは、12月8日から9日にかけて開催された首脳会議の結果を勝利と見なして祝った。その結果には、均衡予算を求める部分を除き、上記の要素が一切盛り込まれていなかったからだ。
メルケル首相が望んだものをすべて手に入れてしまったことから、システムは崩壊を続けている。負のスパイラルを一段下りるたびに、効果的な解決策 に必要な財政的・政治的コストは増大している。有権者やその代表者たちが膨れ上がる一方のシステム修復のコストを進んで負担しようとする段階は既に超えて しまった。
ドイツでは先週、与党キリスト教民主同盟(CDU)の有力議員2人(筆者は2人とも穏健派だと思っていた)が、ギリシャのユーロ圏離脱は大した騒 ぎにはならないだろうと述べた。人々の期待は目まぐるしく変化しており、荒っぽい決着を容認する姿勢にも同様な変化が生じている。
また、欧州中央銀行(ECB)による巨額の流動性供給も、問題を解決するには至らないだろう。この決断の重要性を過小評価するつもりはない。ECBはクレジットクランチ(信用収縮)を未然に防いだのであり、その働きは称賛に値する。
長期資金が無制限に供給されれば、銀行の国債入札への参加意欲に多少の変化が及ぶ可能性もあるだろう。運が良ければ、この春の国債借り換えラッ シュを乗り切れる可能性もある。しかし、いくら流動性が供給されても、マクロ経済面の調整の欠如という根本的な問題への対処にはなり得ない。
強力な中央財政当局を導入しなければ解決不能
さらに言えば経済改革も(ほかの理由で必要かもしれないが)、この問題を解決することはできない。これも1つの欧州の幻想である。我々はもう、 ユーロ圏内で税金を徴収して資源を再配分する権限を持った強力な中央財政当局を導入しなければ、危機に対する効果的な解決策など打てないところまできてし まっている。もちろん、そのような構想が実現することはない。
先週末の一斉格下げが示唆しているのは、突き詰めて言えばそういうことだ。我々は小手先の修復努力では歯が立たないところまで来てしまった。道具を使い切ってしまったのだ。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34321
社説:ドイツに真実を突きつけるイタリア首相
2012.01.17(火)
Financial Times 1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
この2年というもの、ソブリン債務および金融セクターの危機下での欧州の政策立案は、逡巡と論争、そして今の問題を 将来に先送りしようとする一見抑えられない衝動に特徴づけられてきた。緊急事態は決然とした政治的指導力を切に必要としているが、その代わり、ためらいが 行動に勝る一連の首脳会議で治療を受ける結果になっている。
ユーロ圏17カ国のすべての政府は、遮眼帯を外して、もっと固い決意を示すべきだ。だが、欧州最強の経済大国であり、創設13年の通貨同盟の支柱となっているドイツの期待は、当然ながら高い。
政策見直しを求めてメルケル首相に直言
これが、イタリアのマリオ・モンティ首相が先週ベルリンでドイツのアンゲラ・メルケル首相と会談した際の背景だった。ドイツの政策は事態を悪化さ せる恐れがあるから、危機への取り組みを見直してほしいとドイツに頼むのは、容易なことではない。イタリアの指導者にとっては、なおのこと難しい。 1999年以降のイタリアの悲惨な景気動向は、少なからず現在の混乱の原因となっているからだ。
イタリアのマリオ・モンティ首相〔AFPBB News〕
しかし称賛すべきことに、モンティ氏は堂々と意見を述べた。ユーロ導入後のイタリア首相としては初めて不人気な経済改革という困難に挑んだモンティ氏は、イタリア国民は割合早くに、自分たちの犠牲がもたらす明白な恩恵を目にする必要があると主張した。
それには欧州連合(EU)の危機管理の再考が求められる。さもないと、社会の不満が勢いを増し、モンティ氏曰く「EUの不寛容の首謀者」と見なさ れているドイツに対する抗議行動が起きるだろう。改革の効果に対する期待と信頼がなければ、イタリア国民はいずれ「ポピュリストの腕の中に逃げ込む」恐れ がある――。モンティ氏はこう言って警鐘を鳴らした。
仮にモンティ氏の前任者で信用を失ったシルビオ・ベルルスコーニ氏がこうした点をメルケル氏に伝えていたら、メルケル氏はほとんど取り合わなかっ たかもしれない。モンティ氏の懸念を共有する理由が十分あるギリシャ、アイルランド、ポルトガルの首脳が不満を述べても、ベルリンで聞き流されてしまうか もしれない。何しろこれらの国は、ユーロ圏の金融救急病棟への長期入院を命じられた小国だ。
スペイン首相のマリアノ・ラホイ氏はユーロ圏第4位の経済大国を代表しているが、首相に選出されたばかりで、国際的な知名度が低い。独自の問題を抱えた経済と銀行システムを統括するラホイ氏が慎重に物事を進めなければならないのも無理はない。
対照的にモンティ氏は、欧州で広く尊敬されている。同氏はEUで、競争政策と域内市場を担当する欧州委員として功績を上げ、2010年には単一市場を強化する方法について優れた報告書を作成した。政策立案者は今でも、この報告書から重要な教訓を引き出すことができる。
モンティ氏は今、イタリアの製品・労働市場を開放する取り組みを長年妨害してきた、政治、法、企業、労働組合の世界にはびこる既得権に戦いを挑 み、首相として最も力を試される段階に入ろうとしている。同氏が前進を遂げることは、ユーロ圏の生き残りにとって絶対不可欠だ。イタリアが失敗すれば、 1945年以後の欧州統合プロジェクトが危うくなる。
モンティ首相を支えることがドイツの国益に
メルケル氏自身、欧州の将来はユーロにかかっていると話している。であれば、モンティ氏を支えることはドイツの国益にかなうはずだ。モンティ氏はドイツにとって、イタリアの窮状を打開する最後にして最大の望みだからだ。
ドイツはモンティ氏を助けるために、EUの一時的な救済基金である欧州金融安定機関(EFSF)をより迅速かつ効果的に活用することに同意しなけ ればならない。EFSFの後継機関である欧州安定化メカニズム(ESM)については、各国政府が当初からできる限り多くの現金を拠出する形で、今年運用が 始まるようにしなければならない。
より広い文脈で言えば、ドイツは多額の赤字を抱えた南欧諸国の緊縮措置と財政引き締めは、欧州北部の黒字国における成長促進策でバランスを取る必 要があるということを認識しなければならない。そうした政策は達成可能だ。モンティ氏の意見は世に受け入れられない孤独な叫びになってはならない。
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