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ユーロ崩壊で世界はどうなる!? 資本主義が行き詰まってもいいじゃないか
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2012/1/16 日刊ゲンダイ
経済学者・中谷巌氏インタビュー
経済学者の中谷巌氏(写真/現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長)が今週、新著を出す。タイトルはズバリ、「資本主義以後の世界」(徳間書店)だ。ユーロ崩壊が決定的になりつつある今、多くの人が知りたいのがこのテーマだ。資本主義はどうなり、その後、何が起こるのか。中谷氏に聞いてみた。
「西洋が主導してきた資本主義は完全に壁にぶち当たりましたね。日本は20年前から停滞していますが、今後、米国もユーロも失われた20年に突入する。フロンティアが完全に消滅したからです」
コロンブスの新大陸発見以降、西洋は自分たち以外の大陸を征服し、そこから富を得ることで資本主義を発展させてきた。アフリカ、オセアニア、インド。もちろん、日本もそれに入る。主役は2つの大戦で無傷だった米国が担った。しかし、そういう意味での地理的フロンティアはもうなくなってしまったのである。
「そこで米国はグローバル金融市場に目をつけた。世界の覇権国が自分たちのものづくりがうまくいかなくなると、金融立国を目指すのは必然です。通貨機軸国としての立場を利用できるからです。英国はシティーをつくり、米国もそれに倣った。日本には猛烈な構造改革を要求し、閉鎖的な市場慣行を潰しにかかった。そうやってかなりの利益を上げたけれど、リーマン・ショックで、自粛せざるを得なくなった。いい加減なことをやってきたのが世界に露見してしまったからです。
地理的フロンティアもない、金融もダメ。それでは、どこにフロンティアが残っているのか」
こう問いかける中谷氏は、その副作用を列挙した。
◆もともと成長を続けることに無理がある
「資本主義国に余裕があれば、寛大に所得再分配ができるが、それができない。限界はアチコチに露呈しています。99%対1%という格差の拡大、それによる社会の不安定化。環境破壊に対してもCOPは何も決められない。欧米も日本も財政赤字を抱えて身動きが取れない。金融政策も限界で、FRBは6000億ドルもの国債を引き受けたが景気回復どころか、流動性を確保するのが精いっぱいです。みんなが使えるものをすべて使い切ってしまったのです」
資本主義とは、資本家がなんとしても毎年、プラス成長して増殖することを義務付けられているシステムだ。それが止まるとどうなるのか。
「自転車が止まるように倒れてしまうと多くの人が信じているが、そうなのでしょうか。コストが安ければ、使用済み核燃料を処理できないのに原発をつくってしまうのが資本主義です。新自由主義者は何事もマーケットで解決できると考え、その思想はマーケットで値段がつかないものの切り捨てにつながった。文化であり、共同体であり、環境であり、高齢者です。それでも経済成長を続けなければいけないのか。人類学者の中沢新一氏は『日本の大転換』という著書の中で『原子力と資本主義は同じだ。いったん暴れだすと収拾がつかない。健全な人間社会の形成において異物だ』と書いているが、面白い見方だと思います。それに、資本主義における資本とは異星人のようにやってきて、ポンと工場をつくり、都合が悪くなるとどこかへ行っちゃう。もともと、その土地、生活圏には馴染まないものなのです。今後は自己増殖を求めるだけでは人類社会はうまくいかない。文明、発想の転換が必要なのに、儲け話ばかり考えている人々やメディアは耳を貸そうとしない。そこも問題だと思います」
資本主義の崩壊は必然として、それは悪いことではないかもしれない。その後にどんな社会を築いていくかだ。
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