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ディカップリング(非連動)という言葉は従来、中国経済が、先進国経済とは非連動という意味で使われてきたが、最近は、米国経済が、欧州経済とは非連動という文脈で使われるようになった。
たしかに、未だ、お先真っ暗の欧州経済に対して、米国経済には薄日が差している。
昨晩発表された米地区連銀報告書は、“総括判断で「米経済活動は、ささやかまたは穏やかなペースで拡大」と指摘”と、日経ワシントン支局からも報じられている。同報告書は、ベージュ色のため、“ベージュブック”と呼ばれるが、米国経済の色模様は、まさにベージュ色という感じだ。消費は年末商戦好調。雇用は改善傾向だが、失業率は依然高水準。住宅市場は底値安定。社会保険関連減税の継続は不透明。欧州債務危機の米国への伝染も、懸念材料として残る。
一方、欧州経済は、債務危機問題が台風の目に入ったような状況。経済の色模様は濃い灰色に変わりはない。これから、ECB理事会、スペイン・イタリア国債入札が控える。しかし、足元では、切迫した危機感が薄れている。マーケットでは、欧州関連の悲観材料が陳腐化してきたので、センチメントが、目先やや楽観論に傾きつつあるのだろう。否、「楽観」というより「イリュージョン=錯覚」というべきか。
外為市場では、引き続きユーロ安が続いている。少し前までは、ここまでユーロ安が進行すると、NY株はリスク・オフで大幅安となったものだが、ここにきて、反応薄になっている。米国経済は、マイ・ウエイ=我が道を行くという自信(或いは過信?)が、NY市場では顕在化してきた。
濃い灰色より、ベージュ色のほうが心地よいので、外為市場ではドル高。しかし、商品市場では金価格も高い。「市況の法則」には反する現象だが、欧州経済リスクが急速に高まる状況から、マイルドなリスクに移行したことを映している。信用収縮から、金も換金売りの対象とされる事態が、ECB無制限資金供給により終息に向かい、足元の切迫感は後退したものの、根源的問題は全く解決されていないので、ジワリとした危機感が、金買いを誘っている。マネーのパーキング場として、米国債、独国債、そして金が、大通りに並ぶ。独経済もマイナス成長だし、金もリスク資産で売り込まれる局面もあるし、どのパーキング・スペースも、地盤は軟弱なのだが、違法駐車も出来ず、他に選択肢はない。
ベージュ、ダークグレー、そして金色。マネーの駐車場は看板も色彩豊かだが、利用者の殆どは、時間制の短期駐車である。そこに車庫を作り、腰を落ち着ける気はなさそうだ。
なお、ドル、ユーロ、円の主要通貨が、それぞれに構造的アキレス腱を抱え弱さ比べを演じる状況は、さしずめ通貨の王様不在の「通貨大空位時代」。ドル高でも、ドル不安は解消されず。そこで、昔の王様であった「金」という「無国籍通貨」が現役復帰して、中央銀行により対外準備資産として買い直されるトレンドが、“ドル高でも金高”の背景として、指摘できよう。(豊島逸夫)
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