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Economistの願いに反して、残念ながら、金融センターの中心は、先進国から、アジアのシンガポールや香港など規制や税制で有利な地域に移っていくことになるだろう
つまり日本や米国と同じく、金融サービスでは衰退の運命を辿ることになる可能性は非常に高い
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34267
世界の金融:英シティを守れ
2012.01.10(火) The Economist:プロフィール 2012年1月7日号)
英国は世界の資本の首都を擁しながら、大切にすることを忘れている。それは間違いだ。
ロンドン金融街シティ〔AFPBB News〕
ウォール街を占拠せよ、ロンドンを占拠せよなど、金融業者が手っ取り早く荒稼ぎしようとする街で繰り広げられる銀行家に対する抗議行動は、ここ1年の退屈な経済ニュースにスパイスを添えてきた。
だが、金融業界に敵意を抱いているのは左派だけではない。銀行の味方とされる人々までもが追い打ちをかけている。その最たる例が英国だ。
デビッド・キャメロン首相はロンドンの金融街シティの「行き過ぎに終止符を打つ」と公言した。閣僚たちも、経済を怪しげな金融業から誠実な製造業へとシフトし、「バランスを取り戻す」努力をしていると自慢げに話す。
イングランド銀行のマーヴィン・キング総裁もことあるごとに、シティに根付く「来週の利益」を短期的に追い求める文化を厳しく批判する。欧州大陸 がシティに向ける視線には、憎悪(ユーロ危機はすべてシティのせいだ)と切望(フランスやイタリアの賢い金融業者はパリやローマで取引に励むべきなのに) が入り交じっている。
欧州首脳による攻撃には、少なくとも1つの効用がある。彼らの偽善と利己主義が英国人に、何が危険にさらされているかを思い出させてくれるのだ。
ロンドンは多くの点で世界最大の金融センターであり、その弱体化は英国はもちろん誰の利益にもならない。銀行規制の改善は間違いなく必要であり、とりわけ英国の納税者を守る措置が必要だ。
これまでのところ、シティ叩きは主に言葉だけで済んでいるが、世界で最も成功している(しかも移動性の高い)商業の集積地の1つを実際に弱らせるとしたら愚かなことだ。もちろん、キャメロン首相もそのような遺産を後の世代に遺したいと思っているわけではないだろう。
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金融――貯蓄を最大限に生かせるところに回すこと――は非常に重要な産業である。英国はその金融に秀でており、外国為替から店頭取引のデリバティブ(金融派生商品)まで、様々な金融市場で世界をリードしている。
シティの比較優位は、英国の貿易収支を見れば明らかだ。2011年第3四半期の金融サービス・保険分野の貿易黒字は国内総生産(GDP)比 2.6%だった。法律、会計、コンサルティングといった関連サービスを加えれば、GDPの3%を超える。これだけ外貨を稼げる産業集積地は、うらやまれて 当然だ。
金融部門の貿易収支に関しては、英国に迫るような国はどこにもなく、米国でさえ例外ではない。そして、国内経済が低迷している今、英国は持てる輸出力を結集する必要がある。
だが、シティは2種類の脅威にさらされている。1つはほとんど打つ手のない脅威であり、1つは対処可能な問題だ。
縮小に向かうシティ
たとえ政治家がもっと賢くても、シティは今後数年間で縮小する可能性が高い。新規の住宅ローンの承認ペースは危機前の半分ほどになっている。つまり、リテール銀行の仕事が減っているということだ。英国の金融業界で働く人は3年前から7%減少した。
先進国の経済は落ち込み、資産市場はほとんど動かないため、トレーディングや多額の手数料をもたらすM&A(企業の合併・買収)の見通しはここ数年、ことによれば数十年で最悪の状態にある。
規制の強化も利益の減少を意味する。さらに、新興国の政府はそれぞれ独自の金融センターを発展させようとしており、一部のM&A業務が新興国に流れることは避けられない。
それでも、アジアはチャンスも与えてくれる。中国やインドの金融市場はまだ十分に発達していない。一方、英国はいわば専門家だ。ロンドンはドルの 取引で世界の中心地になれたのだから、人民元の取引で同じことができない理由があるだろうか? 欧州大陸の未成熟な個人金融市場もターゲットになるはず だ。
しかし、シティがほかの金融センターとうまく競争していくためには、英国が規制や税、移民について適切な政策を実施していなければならない。
規制に関しては、桁外れに大きい金融サービス業は納税者に桁外れのリスクをもたらすという当然の懸念がある。国内の銀行システム(納税者を危険に さらす部分)を厳しく規制し、世界の資本が集まる自由な国際資本市場から分けて扱うというビッカーズ委員会(英銀行独立委員会=ICB)の提案は、この問 題への対処に大いに役立つ。
一方、欧州連合(EU)から出てくる多くの提案の眼目は、有害なものに見える。金融取引税などの一部の提案は、英国が拒否権を行使すれば阻止できる。
しかし、それ以外は多数決に委ねられる提案で、先月のキャメロン首相とその他EU加盟国首脳との対立(シティを守るためと言われているが、欧州の 統合強化を英保守党の欧州懐疑派に納得させなければならない事態を避けたというのが本当のところだ)は、ロンドンのライバルにシティを骨抜きにする口実を 与えた。
税制と移民に関しても、英国政府の政策は大きな被害をもたらしている。前労働党政権が2010年に導入した50%の税率はほとんど歳入増をもたらさず、個人富裕層にとってロンドンを世界の10大金融センターの中で最も税金が高い場所にした。
ロンドンに住み、ロンドンが気に入っている現世代の金融機関トップはしばらく我慢するかもしれないが、もっと若い世代はスイスや香港、ドバイに魅力を感じている。
移民政策について言うなら、アジアのビジネスを勝ち取る最善の方法はアジアの若い金融業者をロンドンに呼び込むことだ。有能な移民の流入を厳しく制限すれば、シティの将来性、さらには英国の産業すべての将来性を損なうことになる。
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政治家や規制当局はあらゆる言い訳を用意している。今は50%の税率を廃止することは政治的な危険を伴う。移民は国民に嫌われている。
さらに、シティには、よそがすぐには代替できない圧倒的な利点があるため、攻撃してもリスクは小さいと彼らは主張する。ロンドンの長い取引時間 は、アジアの市場が閉じてからニューヨーク市場が開くまでの間を埋めているため、世界の資産運用担当者やトレーダーにとって便利な市場となっている。
トレーディングは流動性と能力の高い人材を引き寄せるという好循環を呼んでいる。しかし、現在最強とはいっても、競争にはさらされる。新しいト レーディングデスクを他国に置くという決断が積み重なれば、いずれ、世界最大の金融センターとしてのシティの地位を支えてきた絶対的な業務量が失われる。
経済というものは、その国が本来有する競争優位が反映されている時にこそ、最もうまく回っていく。したがって、英国は比較的大きな金融部門を保持すべきだし、政策立案者はそれに文句をつけるのではなく、敬意を表さなければならない。
もし金融部門を見殺しにするような政策を続ければ、英国はいつの日か、世界で最も成功していた産業集積地を失ったこと、そして、次世代がまともな暮らしを送るための最大の望みを失ったことに気づく羽目になるだろう。
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