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2012年大変動 世界と日本はこうなる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31471
2012年01月05日(木) 週刊現代 経済の死角
ポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞)ほか、著名学者・一流研究者・トップアナリストがすべてに答える
全国民必読 先んずれば人を制す
経済恐慌は? デフォルトする国はどこか? 円高60円台突入は? 日本国債暴落は? 株価は? 中国経済は大丈夫か? 野田総理はいつやめるのか? 解散総選挙は?
なにが起きてもおかしくない。そんな恐ろしい年になる。まずは目を見開いて、来るべき未来を直視することから始めよう。真実を知ることができるのは、知る勇気を持つ者だけなのだから。
民衆が銀行に殺到する
2011年の世界経済を振り返ると、悪夢のような「大事件」が立て続けに起こった年だった。
ギリシャに端を発する国債危機がドミノ倒しのように欧州各国に伝播し、ついにイタリア、フランスまでを呑み込んだ。
超大国アメリカの国債も戦後初めて格下げされ、基軸通貨ドルの信頼に疑問符がつけられた。
2012年はその延長線上にある。各国政府は抜本的な解決策を打てず、問題は先送りにされたままだ。その間に先進各国の経済は疲弊、不況の影も色濃くさしてきた。
米欧の「国債クラッシュ」危機は予断を許さない。ウォール街発のデモが世界数十ヵ国に広がりを見せるように、不況と格差にあえぐ庶民の怒りも爆発寸前まで沸騰している。
2012年。経済恐慌はあるのか、デフォルトする国はどこか。日本国債の暴落もあるのか。
'08年のノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、本誌の取材にこう語った。
「2012年の悲観シナリオを言えば、まずギリシャがユーロ圏から追放され、イタリアとスペインでは、民衆が銀行に殺到する。ユーロ全体が崩壊し、国債がいくらの価値になるか誰にもわからなくなる。
そうなると世界中の金融市場が凍結される。ヨーロッパの銀行がそのシステムの重要な部分を担っているからだ。そして、世界経済は完全なメルトダウンに陥る。1931年と同じ状況、つまりは、世界大恐慌の完全な再来だ。それが起こる確率を言うのは難しいが、常にこんな最悪のシナリオを頭に入れておく必要がある」
ギリシャ国債は100%デフォルト(債務不履行)する。問題はギリシャの"死に方"で、市場を不意打ちする形でギリシャが"即死"したり、ギリシャのトップが突如ユーロ脱退を表明すれば、それが引き金となって国債クラッシュの連鎖が起きて、世界経済は同時不況の底へ突き落とされる---。
これが2011年に、経済専門家たちが恐れたシナリオだった。しかしいまや、ギリシャ以外の欧州各国にも"即死"の可能性が出てきた。欧州はまさに一触即発の火薬庫と化した。
クルーグマン氏が言う。
「これからギリシャ国債のデフォルトは間違いなく起こるだろうが、ポルトガルでもその確率は非常に高いし、アイルランドでも同様だ。政府は『ない』と言い張っているが、イタリアとスペインでさえ、もし欧州中央銀行からの助けがなければ、デフォルトする可能性がある。
そしてイタリアやスペインがデフォルトすれば、ユーロが崩壊する。その時は、欧州の大手金融機関が破綻し、『第2のリーマン・ショック』が起こる可能性が十分にある。憂鬱になるほどに、その可能性はある」
ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン・・・。まとめてPIIGS(豚)と揶揄される"欧州の問題児"5ヵ国は、2012年という不安の年を生き延びることができるのだろうか。
日本総研理事の湯元健治氏は「年初から危険なイベントが続く」と指摘する。
「まず2月〜4月にイタリアの国債が1000億ユーロ(約10兆円)規模の大量償還を迎えるなど、2012年は年初から各国で立て続けに巨額償還が待ち受けている。そのタイミングで大手格付け会社がユーロ圏の国債を格下げする検討をしているから怖い。
一番インパクトが大きいのは、フランス国債が2段階引き下げられるケース。フランス国債の金利が急上昇(価格は急落)するだけでなく、その時はPIIGS各国も格下げされるので、国債が軒並み暴落する。
ドイツ、フランスがギリシャ支援の枠組みを用意できなくなり、ギリシャがユーロから離脱。イタリアとスペインも離脱との見方が強まって、マーケットではさらに両国の国債が売り浴びせられる。そうなればPIIGSの国債を持つ欧州の大手金融機関が破綻し、世界同時恐慌になる。これは30%の確率で起こると思う」
米国と日本のデフォルトに注意
こうした事態を避けるため、欧州の2大大国であるドイツとフランスが中心となって、対策が講じられている。しかし、「自分の国の税金で他国を助けることに躊躇する」ドイツと、「自分の尻にまで火がついて危機打開に躍起な」フランスの間で、完全な"共闘"は期待できない。
さらに2012年4月にはフランス大統領選の第1回投票が控えており、この結果次第ではユーロ崩壊の契機となる可能性がある。
「4月危機」の可能性について、みずほ総研シニアエコノミストの山本康雄氏はこう分析する。
「サルコジが勝てなければ、フランスがユーロ援助から、自国経済重視の方針に転換し、国債危機がさらに不安定な状況に追い込まれかねない。私はフランス国債の金利が"危険水域"と言われる7%を超える可能性もあると考えている」
2012年は春先までこんな"綱渡り"が続く。だが実は、最も巨大な火種は欧州とは別のところにあるとの意見もある。同志社大学大学院教授の浜矩子氏は「米国と日本のデフォルトに注意」と警鐘を鳴らす。
「リーマン・ショックの時は金融危機がトリガーとなったが、今回は財政破綻がそれに当たる。すでに目に見える形で財政危機が騒がれているのは欧州だが、実は財政問題がより深刻なのは米国と日本だ。この両国はいますぐにでも国債が暴落してもおかしくない。
日本国債は国内で保有しているから売られることはないといわれるが、国債の格付けが引き下げられれば日本の金融機関が手放し始め、あっという間に暴落する。米国債もさらなる格下げがあれば、同じ道を辿る。いずれかの国債暴落が、世界同時恐慌の最後の一押しになるのではないか」
米国債については2012年の年末に予定されている大統領選がキモになる。
「オバマ大統領が負ければ、政治が混乱して財政健全化の見通しが立たなくなり、米国債が再び格下げされる要因になる」(前出・山本氏)からだ。
一方の日本国債については、「明日にも暴落する可能性がある」---そう指摘するのは、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏だ。
「欧州の財政問題は日本の問題でもある。ギリシャが危ない、イタリアが危ないと来て、この連想が日本に来ないという保証はない。逆に言えば、世界最悪水準の財政問題を抱える日本が安心だと考えている人はまずいない。
2012年は新規に発行する日本国債が売れ残る"未達"が起こるかもしれない。そうなれば一斉に日本国債からの『逃避』が始まり、大暴落するだろう。それが起きるのは20年後かもしれないし、明日かもしれない」
PIIGSにフランス、アメリカや日本までもがデフォルトする危機にあるのが2012年なのだ。
そしていずれかの国がデフォルトし、世界同時恐慌になれば、その"震度"はリーマン・ショックどころではないというのが、専門家達の共通見解である。
「世界的にマネーが回らなくなると、欧米主要国以外にも影響が出てくる。特に経常赤字のハンガリーなどの東欧諸国、ベトナムなどの一部のアジア諸国が資金ショートしてIMF(国際通貨基金)の管理下に入るシナリオもありえる。ブラジル、ロシア、韓国もかなり厳しい苦境に追い込まれるはずだ」(前出・山本氏)
このとき日本は、世界はどうなっているのか。続けてみていこう。
■円高 円台突入は? 株価は?
2011年、自動車、電機メーカーといった日本を代表する大手企業は悪夢に悩まされ続けた。政府の市場介入にもかかわらず、ついに"戦後最悪"の水準を突破したとどまることを知らない「超円高」だ。
ドル円相場が1円でも円高に振れるだけで、利益が何十億円も吹き飛ぶ。経営者たちが苦渋の顔で赤字決算を発表するシーンが、テレビ画面に次々と映し出された。
これに呼応するかのように、株価も低迷。株式市場ではホンダ、パナソニック、ソニーといった優良銘柄が軒並み年初来最安値を更新した。
苦しむ日本勢を尻目に、韓国勢はウォン安を利用して、世界で急拡大した。
2012年も円高は続くのか、株価の復活はあるのか。
BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏の見方はこうだ。
「円高の要因は欧米の財政危機が収束しない中で、世界の投資マネーがリスクを回避し、相対的に"安全"と思われている円に向かうという事情がある。この状況は大きく変わらないので、2012年も円高は続く。また日本の株式市場は欧州の景気を先取りするので、こちらも欧州懸念の連想売りで株安が止まらない。しかも、円高だから製造業がキツイ、それなら株は売りだという悪循環も生まれる。
為替はドル円相場は75円から80円台をウロウロし、ユーロ円相場は90円台の時代が来る。日経平均も1万円の回復は望めず、8000〜9000円水準にとどまるでしょう」
専門家の見方はおおむね、これと変わらない。
「欧州が良くなるシナリオが考えられず、『なんとか持つかな』という程度。米国も年末の大統領選が終わるまで共和党と民主党が対立しあって、抜本的な経済対策は打てない。となれば日本は輸出もだめ、国内消費も低迷する。
為替は75円を一瞬突破することはあっても、基本は80円近辺で動く。日経平均も8000〜8500円と横ばいでしょう」(前出・櫨氏)
「欧州圏はドイツが1%のプラス成長になるが、フランスはゼロ成長、イタリアとスペインはマイナス成長になる。米国も住宅価格がまだ値下がりしているし、借金の返済ができない国民が多いため、急速な回復は望めず、失業率が8%を切るのも難しいだろう。
欧米の株式市場は2011年より値下がりする。円は対ユーロで90円台、対米ドルで70円台半ばから後半の円高になると思う」(前出・湯元氏)
楽観シナリオがないわけではない。
欧州はまだしも、米国経済に復調の兆しが見えれば、その恩恵にあずかる日本企業の株価が上昇することはありえるからだ。2012年末には米大統領選を控え、オバマ政権がなんとしてでも経済のてこ入れをするだろうから、期待は膨らむ。
「ただ、そう簡単な話ではない」と第一生命経済研究所首席エコノミストの嶌峰義清氏は語る。
「財政再建を約束した以上、公共事業などにジャブジャブとカネを出すのは不可能。金利も2013年まで引き上げないと約束しているので、残された景気浮揚策は、貨幣の流通量を増やすQE3(量的緩和第三弾)しかない。FRBのバーナンキ議長がQE3を実行できれば、米国の株式市場が上向き、株で資産運用する米国民も消費を活性化する好循環が生まれる。
一方でこれは市場にカネをばら撒くため、インフレを起こす危険をともなう。ガソリン価格、食料品価格が上がれば、ただでさえ格差が拡大していることに怒っている低所得者層が、オバマ批判の声をあげる。オバマの決断次第だが、これができなければ米国はGDPがプラス0・2%程度の低成長しかできないジリ貧となるだけだ」
日経平均7000円割れの悪夢
バーナンキ議長の知己であるノーベル経済学賞受賞のクルーグマン氏も、
「彼(バーナンキ)はQE3をやるべきだとわかっているし、それを実行するだろう。ただそれは十分な規模では行われない。彼はFRBの独裁者ではないので、何をするにも限界がある」
と予測する。要するに景気浮揚策が行われたとしても、なんとも中途半端な結果に終わる可能性が大なのだ。
悲観シナリオが実現すれば、想像もしたくない惨状がやってくる。
それはもちろん、財政危機という爆弾を抱えた国のデフォルトを発端とする、世界同時恐慌のことだ。
前出・山本氏は、日本経済、そして為替、株価への影響をこう見る。
「もし危機が来なければ、日本は復興需要が利いてくるため、GDPが0・8%ほど押しあげられ、失業率も4%くらいまでに多少改善。団塊世代が65歳をむかえて大量退職するため、若年層の雇用が増える可能性もある。
ただ世界同時恐慌となれば、もちろんマイナス成長となる。日経平均株価も本来なら8000〜9000円台で推移するところが、7000円を割る事態も考えられる。
さらに世界的に市場が崩れると、日本の運用会社が投資信託に組み込んでいた世界の株式、債券を売らざるを得なくなり、『外貨モノは売り、円モノは買い』という流れが加速するため、危機がないケースでユーロに対して95円程度だろうが、危機がある場合は80円台まで急激に円高が進む可能性がある」
前出・浜氏は、より厳しい相場観を持つ。
「世界同時恐慌になれば、世界同時株安となる。日本でも一時的に取引が停止されるほどのパニック状態になりかねず、日経平均株価は現在の半値くらいまで急降下する事態も想定しなければならない。
通貨は米ドルでさえ『売り』にさらされる一方で、円はそれでも安全逃避先として『買い』が進む。世界中のマネーが円に逃げ込んでくるので、1ドル=50円に向かって超円高が進行していくでしょう」
ハイパー株安とハイパー円高の組み合わせである。
虎の子の貯金を「優良企業」に投資しておきながら、2011年の株安で、大損を被った中高年は多い。いつかは値上がりするはずと"塩漬け"にしている人もいるだろうが、2012年中にそんな好機が来るとは期待できそうにない。世界同時恐慌になれば、資産が半分以下になってしまう恐れもあるのだ。
では、日本人はこれからどのように資産防衛すればいいのか。
「基本的な考え方」を、前出・浜氏はこう唱える。
「恐慌の可能性があるときは、『慌てず、欲張らず、損をせず』ということを心がけておく必要がある。儲けを増やそうと思って動くことが、一番のリスクになる。特にいけないのが借金をしてまで、投資をすること。資産がパーになるほどの、取り返しのつかない事態もありえます。すでに借金をして投資をしている人は、まずは借金の清算をすることから始めるべきでしょう」
■中国経済は大丈夫か? インドはどうか?
年間二ケタ台の成長を継続、GDPで世界第2位の「巨龍」にのし上がった中国に死角はないのか。
中国の最大の輸出先はユーロ圏であり、次が米国。両巨大商圏の失速の可能性が高まる中、影響は避けられそうにないが、「実は輸出が大きく落ち込むことはない」というのは富士通総研主席研究員の柯隆氏。
「中国から欧米へ輸出される製品の過半を占めるのが、低付加価値の消費財だ。実際、先日米国で見てきたが、スーパーやデパートには『メイド・イン・チャイナ』ばかりが並んでいた。どんな金融危機、経済危機になろうと生活必需品は買わざるを得ない。しかも危機になればブランド品は買わない代わりに安い商品が求められるようになり、むしろ売り上げが良くなることもある」
2012年は中国でも指導者が替わる年になる。胡錦濤国家主席の後は習近平国家副主席が継ぐことが確実視されている。そんな"記念年"には景気を腰折れさせないために、なりふり構わぬ策を講じる可能性も高い。
「方法は簡単で、安く抑えられている人民元を利用して、低価格商品をさらに欧米へ投入するだけ。本当は公共事業を主体に中国国内にカネをバラまき、内需を刺激しながら、輸入を増やす方策こそが世界経済にとっては望ましいが、現政権の言動を見るとそんな気配は感じられない。結局、欧米にしてみれば逆に中国に輸出して儲けたいのに、どんどん国内に中国製品が入ってきて、貿易赤字が膨らむことになるでしょう」(前出・櫨氏)
懸念は国内事情だ。
インフレの悪化、不動産バブルの膨張、格差の拡大など問題は山積。だが、これにも政府は四方八方から手をつくしている。
東短リサーチ取締役の加藤出氏が言う。
「インフレで顕著なのは豚肉の価格だ。'11年6月に前年比57%もの上昇率を記録したが、政府はすぐに補助金を出して増産体制を確保し、高騰を一段落させた。住宅の高騰についても、政府は金融引き締めと投資規制で価格を押さえつけながら、同時にそれでも高くて買えない低所得者向けに大規模住宅を建設し、不満の噴出を抑えている。
所得格差拡大対策としては、たとえば、すでに人口が満杯状態になった重慶市の周辺に人口100万人規模のサテライト都市を作る計画を立ち上げた。工場を誘致して農村部の人々を吸収し、その所得を上げようとしている。低所得者の所得をいかに上げるかが、優先順位の高い政策となっている印象が強い」
指導者の持つ権限が絶大で、トップダウンでスピーディーに政策が決定できることに、中国の"底力"の源泉がある。欧米やそのほかの先進国が、選挙を意識したポピュリズムに走って中途半端な政策しか打てないために、危機を長期化させているのとは対照的なのだ。
世界の2大経済大国に
結局、多少は欧州危機の影響を受けながらも、中国経済は2012年も低成長に落ち込む先進各国を尻目に10%近い成長を謳歌する可能性が高い。
「中国は金利を引き下げ、インフレ懸念も弱まっているので、たとえ景気が減速しても8%台半ばの高成長が続くでしょう」(前出・湯元氏)
「工場を建設したり、新たに店を出したりといった、先進国から中国への投資は変わらず続く。もし景気が悪化するような状況になれば、政府が資金を大量に供給するなどの策を講じるから、急ブレーキがかかることもない。中国の成長率は8%台後半をキープするでしょう」(前出・山本氏)
ただ、中国と並び、世界からその成長に期待がかかるインドは事情が少し変わってくる。
「10億人を超える人口がいるのだから、おのずと経済のポテンシャルは高いといわざるを得ない。ただ先進各国からのマネーフロー(資金流入)が詰まってくると、さすがに景況感は下向いてくる。世界経済の足を引っ張るというほどではないが、下支えするほどの推進力は失い、これが先進国の景気をさらに悪化させる可能性がある。
世界経済の中で誰かが誰かを支えることができなくなり、2012年はみんなで悪くなっていく構図が進行していきそうだ」(前出・中空氏)
さらにインドは10%台という二桁の高いインフレ率が問題となり、金融を引き締める必要が出てきて、景気の減速が表面化する恐れもある。
とはいえ専門家たちが予測するインド経済の成長率は「6%ほど」という数値で一致している。米国や日本がかろうじて1%前後を確保、欧州にいたっては全体でゼロ成長が見込まれるのとくらべればずっとマシなのだ。
「中国人はアメリカ人や日本人と同じくらい賢い。インド人も同じだ。そして彼らは、ここへきて先進国とのテクノロジー(技術力)のギャップを縮めることにも成功した。
となると人口からみてその2ヵ国は巨大なので、もちろんその過程で景気の浮き沈みなど様々なことが起こるだろうが、最終的には欧米に代わって世界の2大経済大国になるだろう」
そう語ったポール・クルーグマン氏は、「そしてそのとき、日本が経済大国といえなくなっている可能性は非常に高い」と付け加えた。
■野田総理はいつやめるのか? 解散総選挙は?
総理就任からわずか4ヵ月、どじょうの賞味期限は早くも切れかかっている。いまや永田町の関心は、野田佳彦総理が「やめるかどうか」ではなく、「いつやめるか」に移った。
さすがに野田総理も自身を取り巻く環境が日に日に厳しくなっていることを感じ取っている。
「最近、官邸の5階にある総理執務室から、野田総理の怒鳴り声が聞こえることが増えました。表向きは急降下している世論調査の数字など気にしていないような態度ですが、相当焦っている。北朝鮮の金正日総書記が亡くなったため中止になりましたが、JR新橋駅での街頭演説なども支持率アップのために急に決めたものでした」(官邸関係者)
やっかいなのは、その焦りから「自分の存在意義を示すには消費税増税しかない」と凝り固まってしまっていること。野田総理がやめるには、解散総選挙での民主党惨敗か、9月の民主党代表選で負けるかという二つのパターンがあるが、とても9月まではもちそうにない。
本誌は今回、5人の専門家に意見を聞いたが、時期に多少の違いはあるものの、早ければ4月、遅くとも8月のお盆前には解散総選挙が行われるという予測が並んだ。もちろん、'12年中の解散総選挙はないと答えた人はゼロである。
政治コラムニストの後藤謙次氏が言う。
「麻雀の筋ではありませんが、野田政権は3、6、9月の月末にそれぞれ危機を迎えますから、どう転んでも'12年中の解散は避けられないでしょう。3月は消費税増税法案を提出するという期限、6月は通常国会の会期末、9月は民主党代表選です。
解散権を持つ野田総理の心理を考えれば、このまま9月の代表選を迎えたとして、再選を果たすのは厳しい。よって、その前に解散するなら3月末までに消費税増税法案を提出、可決した直後が望ましいということになる。ただ、3・11という節目があり、被災地がまたクローズアップされている時期にわざわざ選挙をするのか。そう考えれば、通常国会が閉じる6月末が、野田さんが主導権を持って解散できる最後のチャンスになります」
野田総理にとって、消費税増税法案が可決される'12年3月末が解散総選挙の最速シナリオだった。現に11月のG20でも、勝手に消費税10%を「国際公約」し、'11年度内(つまり3月末)に法案を提出して、「法案が通り、実施の前に信を問う」と明言している。
しかし、党内からは増税反対派が離反、2閣僚の問責決議をした自民・公明の野党も、野田総理が呼びかける増税のための与野党協議に乗る気はない。
「野田総理は私に『自民党も税制改革には反対できないはずだ』と言っていました。自民党も前回'10年の参院選で消費税10%を掲げているからですが、これは見通しが甘い。当面は、自民党が民主党の党内分裂を画策して、国会はスムーズに進まないでしょう。野田総理は自民党との話し合い解散を望んでいるでしょうが、それは難しい」(政治評論家・三宅久之氏)
消費税増税がまったく前進しないまま、3月末の解散は無理と判断した官邸サイドは今、4月に予定される小沢一郎元民主党代表の「陸山会事件」の判決に注目しているという。野田グループ議員が明かす。
「小沢氏が有罪になれば、すぐに党として除名処分を出す。そうすれば支持率も上がるだろうから、そこで解散総選挙をすればいい。それまでは国会でも野党の言うとおりに予算関連法案は修正し、消費税増税法案も審議を引き延ばす。
小沢氏が無罪になっても、どうせ次の選挙で民主党が過半数割れすることは確実だから、消費税一本にテーマを絞って解散するしかない。自民党も消費税アップをマニフェストに書かざるを得ないんだから、選挙後に連立を組めばいい」
なんとも手前勝手で楽観的な見通しである。そもそも、苦しいときに「反小沢」を旗印に支持率上昇を狙うのは、菅政権とまったく同じ。野田サイドの打つ手のなさを表している。
かくして、通常国会が終わる6月には、一気に解散総選挙になだれ込むことになる。仮に野田総理が決断できなくても、野党が内閣不信任案を出すのは確実で、小沢グループがこれに同調するのも間違いない。すでにそれを前提に、その後のシミュレーションを始めている小沢系議員もいる。この時点で、消費税増税で歴史に名を刻もうとしたどじょう総理は就任10ヵ月で、民主党を政権与党から再び「泥の中」に追いやったどじょうとして、表舞台から姿を消すことになるだろう。
民主党分裂、みんなの党躍進
では、次の総理になるのは誰なのか。民主党では前原誠司政調会長がまたぞろヤル気になり、自民党でも谷垣禎一総裁の他、石原伸晃幹事長、石破茂前政調会長も総理を狙う。だが、この選挙、主役は民主でも自民でもない。
「通常国会終了後、7月に解散、8月5日の日曜日が投開票日ではないか」と予測する政治評論家の浅川博忠氏は、その選挙結果について次のように語る。
「民主党、自民党とも180〜200議席を巡る攻防になると見ています。もちろん、どちらも過半数には届きませんから、そこで注目されるのが、みんなの党。渡辺喜美代表は先日、獲得議席の見込みを『30〜50議席の間』だと語っていました。現在は衆院で5議席しかありませんが、次の選挙では35議席くらい獲得できるかもしれない。民主、自民のどちらが比較第一党になっても、みんなの党と連立できるかどうかが鍵になってくる」
さらに忘れてはならないのが、橋下徹大阪市長率いる維新の会。渡辺代表が市長選で橋下氏の応援に入るなど、両者の関係は良好で、政策ブレーンも共通している。しかも、ここに民主党から小沢グループが合流して、一気に連立政権を樹立すると見るのは、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏である。
「民主党が次期総選挙で分裂するのは間違いありません。小沢グループのコア70人のうち何人が当選するかわかりませんが、みんなの党、橋下維新の会、小沢グループ、さらに河村たかし名古屋市長率いる減税日本が加われば100人規模の勢力になります。
渡辺氏の父・美智雄元副総理は、新生党時代の小沢氏に総理就任をそそのかされた結果、政治生命を断たれた。そのため、渡辺氏は小沢氏を恨んでいると言われていますが、両者は実は水面下でパイプがあります。小沢氏は最近、渡辺氏を『物事がわかってきた』と評価し、渡辺氏も小沢氏について『近く会うタイミングがあるかもしれない』と語っています」
また、小沢氏は橋下氏の政治家としての能力を非常に高く評価しており、12月20日にも橋下氏と会談するなど、いざというときに組める体制はできつつある。小沢、渡辺、橋下3氏は「増税より先に、改革ありき」の考えも一致している。
この第3極が政局の目となり、新しい連立与党の枠組みは、3パターンに絞られる。1.民主と第3極の連立 2.自民と第3極の連立 3.民主と自民の連立、である。1は第3極に小沢グループがいるため無理。2では国民の支持が得られまい。現実的には3になるだろう。ただし、主導権はあくまで第3極が握ることになる。
「キャスティングボートを握った第3極は、大阪都構想や公務員制度改革、議員定数削減などを推進しない党とは組めないと、自民や民主に迫るでしょう。対立軸は『自民か民主か』ではなく、『改革推進かどうか』になる」(政治評論家・有馬晴海氏)
その結果、前出の浅川氏、鈴木氏とも、総理になるのは渡辺喜美みんなの党代表だろうと言う。
「自民党はかつて社会党の村山富市氏を総理に担ぎ、それをワンクッションにして、橋本龍太郎内閣で政権に完全復帰した経験がある。石原氏や石破氏などは年齢も若く、時間的にも『総理を待てる世代』。一度、渡辺氏に政権を預けるという選択肢は十分にある」(前出・浅川氏)
2012年、日本の政治は大きく変わる。'09年の民主党政権誕生のときと違い、それが国民にとって本当に歓迎すべき姿になってくれることを願う。
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