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将軍様こと金正日総書記の死去が発表されるや、中国在住者に帰国命令が出た。国境の橋を渡る人々の群れの映像を見て、頭に浮かんだのは今夏訪ねた中国吉林省の省都、長春の北朝鮮政府直営の料理店である。
民族衣装を着た従業員は全員、出稼ぎの女性たちで、将軍様をたたえて歌い、踊る。聞くと、彼女たちの給与は人民元で月800元だが、平壌にピンハネされて残るのは200元。1元は12円程度だから、たった2400円か、と思わず「美女軍団」に同情しかけたが、地元の大学教授は「何しろ平壌の大学の教授の給与は元に換算すると5元(60円)にすぎません。彼女たちは食住はただなので全部ため、1年間喜々として勤めて帰るのです」という。
長春では同じ職種の給与相場は1500元なのに、出稼ぎの彼女たちはピンハネ前でもその半分近い。平壌の大学教授の月給では長春ではビール一本も買えない。一般大衆は推して知るべし、である。
およそ人々が手にするおカネというものは世界のどこでもウソをつかない。としたら、富や食べ物を独占する既得権益層を代表するかのように丸々と太った若い後継者、金正恩氏の手でかの飢えた国が治まるはずはないだろう。
「カネ」が物言うのは北朝鮮に限らない。欧州連合(EU)は先の首脳会議で財政規律強化を申し合わせたが、英国はそっぽを向いた上に、加盟各国は不況下の緊縮財政とあって国内の同意を得られるかどうか危うい。欧州の金融機関は必要とするドル資金を調達できず、韓国やその他新興国から資金を引き揚げる。リーマン・ショック後の世界経済を牽引(けんいん)してきた中国など新興国は欧州向け輸出減に苦しみ、今度は世界景気の足かせになりかねない。
ことに韓国は欧州金融危機に北朝鮮情勢の流動化が加わって、外貨の流出が続く。通貨ウォン安で家電大手「サムスン」など輸出企業の競争力は一層上がるかもしれないが、通貨暴落となれば高インフレと高金利で国家経済が成り立たなくなる。
そう、2012年の世界の命運を握るのは「カネ」なのである。リーマン危機後、米連邦準備制度理事会(FRB)は現在までにドルを3倍以上刷ったが米景気回復の速度は遅い一方で、前述のように世界はドル欠乏症にかかっている。欧州も12年には市場からの財政資金調達必要額は日本円換算で130兆円に上るとみられる。米国ではFRBはお札を大増刷する量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るべし、との声が高まっている。欧州でもギリシャに続くイタリア、スペインなどの財政危機に対応するためには欧州中央銀行(ECB)がユーロを刷って問題国債を市場から買い上げるしかない情勢だ。
いわば、米欧はリーマン危機後のマネー作戦を繰り返すわけだが、ツケは必ずどこかに回る。主要国中央銀行のうち日銀だけがその後も、量的緩和をせずに、超円高デフレを招いてきた。まじめに国内生産を続ける企業は罪もないのに超円高で罰せられて赤字に苦しむ。デフレに伴う税収減のために財政収支はさらに悪化しているのに、政府は増税に次ぐ増税しか考えない。増税はさらに消費や投資を圧迫し、デフレを加速させる悪循環を引き起こす。
政府と日銀がおカネに関わる政策の大転換に踏み切らないと、新年には以前にも増して巨大なツケを呼び込むことになるだろう。(田村秀男)
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