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大特集 世界恐慌は金融屋が作ってる 次は日本国債の格下げだ 「格付け屋」に支配された世界経済
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/30219
2011年12月24日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
ついにEU(欧州連合)の格付けまで「引き下げ見通し」に指定された。日本国債の格下げ懸念も高まっている。「そういうことには疎い」(菅直人前首相)などと言っている場合ではなくなってきた。
■暴落を演出
「サブプライムローン関連の金融商品に高い格付けを出していたことで、格付け会社の信頼は地に堕ちたが、ギリシャに始まる世界各国の国債危機に乗じて、いつの間にか復活してきた。
格付け会社が世界最強国であるアメリカの国債を格下げすると、これがトリガー(引き金)となって世界同時株安へと発展、欧州国債の格下げラッシュでもその影響力の強さを誇示している」(財務省OB)
各国の政府首脳たちが、いま、格付け会社の一挙手一投足に翻弄されている。
全国紙経済部記者もこう指摘する。
「12月5日の欧州総格下げ予告≠ヘインパクトが大きかった。米大手格付け会社『スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)』が突如としてドイツ、フランスを含むユーロ15ヵ国の長期国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表すると、世界のマーケットが反転≠オた。
実はこの発表の数時間前に、メルコジ(ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領)が共同で会見を開き、欧州の国債危機に対する新たな抜本対策を講じる予定だと発表していた。それを好感、ユーロ相場は上げ基調で始まっていたのに、格下げ検討の発表を受けて一気に売りが先行、下落を開始した。日本の株式市場でも欧州懸念が再燃し、戻り始めていた日経平均が反落、8日ぶりの下げ幅を記録した」
会見後に見せたメルケルの笑顔は一転、苦衷に歪んだ。格付け会社による絶妙なタイミングでの介入≠ェ、市場に広まる欧州不安を火消しするために開いたメルコジ会見に水をさした格好だ。
リーマン・ショック後に鳴りを潜めていたヘッジファンド、格付け会社といった「金融屋」たちが、欧州危機を背景にして、その存在感を高めている。先週号でレポートしたように、一部のヘッジファンドは危機を利用して儲けようと動き出している。
ニュージャージー州在住の米国人ヘッジファンドファンドマネジャーは、目下欧州で広がる国債危機に乗じた投資で、「年率20%」という驚異的な利回りを叩き出しているという。
当人が語る。
「欧州危機のおかげで儲けることができました。私は債券投資が得意で、昨年ギリシャ危機がクローズアップされてから、PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の国債のショート(カラ売り)ポジションを仕込んだ。今夏、ギリシャの救済策がまとまるとの報道があった時は国債が値上がりして損切りをせざるをえない場面もあったけど、ほとんどは我々がカラ売りする度に国債が暴落してくれたからね。トータルでは年率20%の成績を残せた。
ヘッジファンドが危機を煽っている?そんなこと知ったことじゃない。今年はフロリダの別荘にも行けず、徹夜で相場を見る日もあった。一生懸命働いた人が高収入を得るのは当たり前のことだ」
欧系投資銀行幹部も、こう言う。
「先日、イタリア国債の破綻リスクを示す指数がたいした理由もなく、膨れ上がったことがあった。なにがあったのかと見ていると、ベルルスコーニ(元首相)の女性問題が出てきた。こんな痴話話だけで指数が上がるのはおかしいなと思っていると、市場でこんな噂が流れた。『アメリカのヘッジファンドが大量にイタリア国債のショートポジションを持っていて、これで利益を出すために女性問題をメディアにリークしたらしい』---事の真相はわからない。ただこのように指数を巧みに動かす芸当≠ヘ、規制でがんじがらめにされている大手金融機関にはできない。どこぞのヘッジファンドの仕業に違いない」
■ハチの一刺し
ヘッジファンドが欧州危機に乗じて儲けようと虎視眈々としているのと符節を合わせるように、格付け会社は米国を舞台に復活の狼煙を上げていた。
国内中堅証券トレーダーが振り返る。
「8月5日、S&Pが米国債を最高位のトリプルAから1段階引き下げると発表。その3日前には米国債のデフォルト(債務不履行)懸念を回避する対策を打ったばかりだったのに、S&Pは『債務問題を安定させるには不十分』だとして格下げに踏み切った。
世界の超大国である米国の国債は、何十年も常に最高位の格付けを維持してきた。基軸通貨ドルに突きつけられた歴史上初めてのイエローカードだったため、焦ったG7の財務相・中央銀行総裁が共同声明を発表した。ただ投資家の世界経済への先行き不安は膨れ上がる一方で、あらゆる株式市場で嵐のように売りが始まった」
当時の株式市場の数字を見ると、暗澹たる気持ちになる。
格下げ発表後に最初に市場が開いた中東地域では、株価が5%近くも急落。続いてシンガポール、韓国などアジアの市場でも株価指数がこぞって年度最安値を更新した。日本でも年初来安値をつける銘柄がゾクゾクと登場、日経平均株価は約4ヵ月ぶりの安値まで落ちた。渦中の米国市場は、NYダウが630ドル以上という、歴代6番目の下げ幅を記録した・・・・・・。
「米国の財政再建が進展しないことが一番の問題であることはいうまでもないが、格付け会社のハチの一刺しでマーケットの不安心理が増幅、世界同時株安のトリガーを引いたことは間違いない」(前出・トレーダー)
5年どころか半年先も見通せない「不安の時代」は、今後も長く続くと予想されている。
しかも金融自由化で株式、債券、投資信託など世界中のあらゆる金融商品を売買できるようになった。そして多くの投資家が格付け会社のレーティングを参考に取引をしている。
基準なき時代の唯一の基準---格付け会社が大きな影響力を持つようになった理由がここにある。
米大手格付け会社『ムーディーズ・インベスターズ・サービス』の元マネージング・ディレクターの森田隆大氏が言う。
「一部の大手行を除いたほとんどの金融機関は独自の信用リスク分析機能を持たないため、格付け会社に頼っている。しかも多くの機関投資家はガイドラインを顧客との間に設けていて、格付けによって測られる債券の信用リスクがあらかじめ決めたレベルを超えると、売却しなければいけない。だから格下げされた国債が、あるポイントを超えると一気に売られて暴落、最悪の場合はデフォルトする危険性がある。それだけ格付け会社の影響力が大きいということです」
金融界が動揺すればするほど、格付け会社の「一言」が重くなる。リーマン・ショック後に各国の財政出動で抑えられていた不安心理が再び噴出し、格付け会社も復活した。
しかも格付け会社の場合は、ただ一言「格下げする」と言うだけで、ほぼ自動的≠ノ関係する投資家が売りに走らざるを得ない仕組みになっているということ。
森田氏が続ける。
「格付けが下がれば、企業にとっても死活問題となる。実は銀行は融資先企業に対して『格付けトリガー』というものを設けていることが多く、格付けがある段階まで下がった場合に新たに担保を要求したり、貸出金利を上げたり、新規の貸し出しをしなかったり、期限前の返済を求めたり・・・・・・と条件を厳しくする。企業にとっては投資家から資金が集められなくなる以外にも、こうした様々な不都合が起こる。だから格下げされようものなら、みな大騒ぎになってしまう」
国家も企業もイチコロで殺してしまう=Bその姿はさながら、世界経済を統べる王だ。
とはいえ、格下げされたほうとしてはたまったものではなく、格付け会社を訴えるケースもある。
日本大学経済学部教授の黒沢義孝氏の解説。
「ある企業の社債が格付け会社から『BBB』と格付けされた場合、それは格付け会社によって多少異なるが、『5年くらい先までにデフォルトする確率が概ね2%』という意味を持つ。しかし実際のデフォルト率が1%だったとすると、起債した企業が『低い格付けをもとに高い金利を払ったことになるので、その分を格付け会社が払え』と訴えることがありうる。しかし過去の裁判で格付け会社が負けたことはこれまで一度もない。
格付け会社が主張するのは以下の二つ。意見を述べるのは一定の範囲において自由だという言論の自由と、最後は『情報を信じるかどうかは受け手(投資家)の自由で、格付け会社は保証しているわけではない』ということ。訴えた側は、格付け会社に瑕疵がないかぎりこの理屈をどうしても覆せない」
格付け会社を信じて投資したのに、実際は違っていて損した投資家が訴えることもあるが、同じ論理で裁判では勝てないという。
「サブプライムローン関連の金融商品が大量に販売されていたとき、格付け会社はこれらの多くに高い格付けを付けた。そして、これらがデフォルト同然の証券になった時には、格付け会社は『ローン会社から得られる情報をもとに格付けしたが、その情報が正確でなかった』と言った。
しかし当時の金融関係者なら、サブプライムローンが『嘘つきローン』と言われていたことは知っていた。それでも格付け会社がサブプライム証券の格付けを継続したのは、莫大な利益を得られたからでしょう。当時、サブプライム関連証券が大量に組成される中、その格付けは統計学、金融工学などのモデルによって低コストで行われたので、格付け会社にとって魅力的なビジネスだった」(前出・黒沢氏)
■恐怖の格下げスパイラル
一方で国債の格付けをしても、実は格付け会社には一円もカネが入らない。投資家の指針になればいいと、勝手に♀i付けしているだけである。
そもそも格付け会社は国の許認可を受けて事業を行う政府公認≠フ民間企業であり、基準を提供することで投資家の役に立っているという自負もある。そんな自信を裏打ちするための組織作りにも余念がない。
「評価というものには恣意性が入ってしまうことが往々にしてある。格付け会社はこうした要素をなるべく少なくするための措置も取っている。たとえば直接の担当とは別のアナリストが一緒に評価するのが一般的。さらに格付け委員会という仕組みを作り、複数の委員が多数決で格付けを評価するようにしている。格付けされる当事者から見れば納得できないと感じることもあるが、格付け会社は極端な意見を排除する仕組みは整えている」(BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏)
たとえ政府に批判されようとも、投資家から訴えられようとも、揺るがない。先行きの見えない不透明相場≠フ中で、「市場の門番」を自称する彼らの一言の影響力が増しているのは必然なのだ。
そして、格付け会社が欧州の次に格下げのターゲットとしているのは、間違いなく日本である。日本国債はすでにS&Pが今年1月に8年9ヵ月ぶりに1段階の格下げを実行、続くようにムーディーズが今年8月に同様の格下げを行っているが、さらなる格下げ懸念の声が絶えない。
「S&Pはすでに4月、日本国債の格付け見通しを『ネガティブ(弱含み)』に引き下げ、今後2年間で格下げに至る可能性が3分の1以上あると明言。11月中旬には、大手格付け会社が日本国債の格下げが近いと語ったとの情報が駆け巡り、日本国債が大量に売られ緊迫する一幕もあった。さらに11月30日には日本国債に甘い≠ニ言われてきた日本の大手格付け会社『格付投資情報センター(R&I)』が、日本国債を最上位から引き下げる方向で検討すると発表した。いつかはわからないが、その日≠ェ近づいていることは確かだ」(外資証券の債券アナリスト)
2002年に日本の国債が格下げされた際には、「ボツワナ以下の水準」と大騒動になり、財務省が格付け会社に対して3度も意見書を出す異例の事態に発展している。
当時はそれでも国債市場に影響はなかったが、あれから9年が経ち、日本の財政赤字はいま、世界最悪水準まで膨れ上がっている。国債先物市場や金利スワップ市場では、日本国債破綻のシグナルも出始めており、格下げは火薬庫に爆弾を投じるようなインパクトになりかねない。
ビジネス・ブレークスルー大学教授の田代秀敏氏はこう語った。
「日本国債が格下げされると、玉突き式≠ノ地方自治体の地方債や日本の企業、金融機関の社債がこぞって格下げされるから怖い。地方債はいま200兆円あるが、これを担保しているのは国の財政。地方債がデフォルト危機になれば国の財政が痛み、追加の格下げ懸念が出てくる。さらに金融機関は投資商品が格下げされると同時に投資比率を下げるため、また地方債や日本国債が売られる。もちろんその度に、金融機関の財務状況も痛んでいく。
思い出して欲しいが、山一證券にとどめを刺したのはムーディーズです。山一の社債が『投資不適格』に格下げされると、その瞬間にカネを調達できなくなり、破綻した。そしていま日本はあの時以上の、国、地方、金融機関の格下げがまた次の格下げを生むという、止まらない格下げスパイラルに陥る縁にあるのです」
'90年代に起きた金融危機と、国債危機が同時に訪れる---そんな想像もしたくないシナリオの、引き金をひくのは格付け会社の「次の一手」だ。
「週刊現代」2011年12月24・314日号より
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