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Michael Mullady for The Wall Street Journal http://jp.wsj.com/US/Economy/node_363024?mod=WSJFeatures
米国の高年齢者の多くは、引退するのに十分な蓄えがないため、60代になっても働き続けなければならなくなることを懸念している。しかし、他の何百万人もの人々は、働き続けられるだけでも幸運だと考えている。つまり、フルタイムの職に就いていない人々はカネがなく、将来に不安を抱いている。
デボラ・カリックさん(60)はミネソタ大学の教授(生物医化学)を務めた後、2000年に民間企業でゲノム研究の職を得た。そんなカリックさんは、55〜64歳のフルタイムの職を見つけられない400万人以上の米国人のうちの1人だ。
10月の労働省の統計によると、この数は5年間で2倍近くに増えた。 デボラ・カリックさんは博士号をもっているが、定職についていないカリックさんは、07年から無職で、ノースカロライナ州の元交際相手の家に住んでいる。失業保険を使い果たし、退職貯金の大部分もなくなって、親戚やクレジットカード会社に借金をして暮らしている。
彼女はちゃんとした仕事が得られるなら生計が安定するだろうと話す。それまで、彼女は人々の善意、ときどきあるコンサルティングの仕事、それと競売サイトのイーベイでのセーターやバッグなどの売却に頼ることになる。
結婚経験のないカリックさんは「このような生活を続けるのも、毎日穏やかな気持ちでいるようにするのも、とてもつらい」と話し、「この生活を受け入れるのに多くの労力と勇気を要した」と付け加えた。
ベビーブーマーのうち比較的高齢な人々は引退を先送りしようとしている。支出のペースが貯蓄を上回っていることを認識している人が多いからだ。米国の失業率は8.6%で、10代や20代の失業率はもっと高い。求職中の比較的若い人々はベビーブーマーが引退を拒んでいることが高失業率の原因だと非難している。
しかし、実際には、企業経営者は高齢のベビーブーマーよりも、若くて賃金の低い労働者を求めるようになっている。このため、高齢ベビーブーマーは長年の職場から離れ始めている。 労働省は前の月に職探しをしていた人のみを失業者としてカウントする。この定義に基づくと、10月の55〜64歳の失業率は6.5%となり、全世代の平均を下回るが、5年前と比較すると倍以上になる。
政府の統計によると、フルタイムの職に就きたいが無職かパートタイムの職に甘んじている、ないし職を必要としているが探すのをやめてしまった、といったその他の人々を考慮に入れると、55〜64歳の失業率は17.4%となり、430万人がこれに当てはまる。この数は06年10月の240万人から増えている。こういったフルタイムの職を探しているのに見つからない人々は、職探しをする高齢者層の6人に1人だ。
ある意味で、高齢者層の状態は他の年齢層と比較するとまだ良い。米国の全労働人口のうち20%が無職、パートタイムの職に甘んじる、ないし職探しをあきらめた状態にあるからだ。しかし、高齢者層は再び蓄えを増やすまでに残された時間がずっと少ない。
ラトガース大学ヘルドリッチ労働力開発センターのカール・バンホーン所長は、「これは新しく、今までと異なる傾向だ。これまでよりも悪く、非常に広範で見受けられる」と述べた上で、「状況は今後さらに悪化する。高齢者層の貧困比率が上昇するだろう」と指摘した。
高齢者の職探しは難しい。ヘルドリッチセンターによると、55歳以上の失業者のうち、半分以上が2年以上職探しを続けており、この数字は若年層の31%を上回っている。高齢者で職を見つけた人でも、うち72%は給与水準が下がっており、大幅に下がることも多いという。
この問題はここ数十年間、深刻になっている。インフレ調整後の中間層の所得が伸び悩む中で、借金をして放漫な支出を続けるという文化があったため、多くの米国人は貯蓄不足に陥っている。それと同時に、多くの米国企業は年金への拠出額を減らし、401Kといった以前ほど手厚くない年金プランに移行している。
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