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危機封じ 中銀頼み 日米欧英、総資産4年で2倍 政府動けずリスク肩代わり
先進国経済が中央銀行頼みを強めている。国の財政悪化が発端の欧州債務危機で政府が身動き取れないなか、市場安定に向けた機動的な対応を相次ぎ迫られているためだ。国債などを買い取って市場への資金供給を増やした結果、日米欧英の主要4中銀の総資産残高は2008年秋のリーマン・ショック前の2倍に達した。中銀によるリスクの肩代わりはどこまで可能なのか。(木原雄士)
日銀、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、英イングランド銀行(BOE)――。リーマン・ショック以降、金融危機封じに対応してきた主要4中銀の貸借対照表(バランスシート)を米ドル換算で集計した。
リーマンが発端
12月上旬の直近データによると、4中銀の総資産残高は約8兆3000億ドル(約650兆円)。リーマン前の07年末水準の約2倍に相当する。
危機の震源地、米国のFRBが国債のほか市場で取引の滞った住宅ローン担保証券(MBS)を買い入れて市場に資金を供給した結果、4中銀の総資産は08年末には1年前の1.5倍に膨らんでいた。その「水位」が再び上がってきたのは、いったん封じ込めたかに見えた危機が政府債務危機に姿を変えて欧州で火を噴いたからだ。
FRBが量的緩和を再開するなど各国中銀が資金供給に動き、直近12月の4中銀の総資産は10年末から17%増加。域内の国内総生産(GDP)合計の約24%に達し、なお増え続けている。
緩和姿勢割れる
政府債務危機に揺れる欧州では、ECBによる各国国債の買い入れ拡大への期待が根強い。BOEは量的緩和の強化を決めている。日銀も資産買い入れ基金の上限まで国債や社債を購入する方針で、中銀の資産膨張は来年も続きそうだ。
欧州危機の根底に政府債務への市場の不信があるだけに、各国政府はリーマン危機時のような大型の財政出動に動けない。加盟国が多い欧州の場合、危機克服に向けた政策決定に時間がかかることもあり、機動的に対応可能な中銀頼みが一層強まる。ただ4中銀の金融緩和の度合いや姿勢を巡る評価は割れている。
総資産を実額でみると、ECBの約3.2兆ドルが最高。日銀は1.9兆ドルだが対GDPでは3割を超え、4中銀のトップだ。日銀の白川方明総裁は「量的な意味で日本の金融緩和が不足しているというのは、事実に反している」と主張する。
だが07年末から直近までの総資産の伸び率(自国通貨ベース)では、FRBが約3倍と突出。量的緩和を拡大したBOEは約2.8倍で続くが、ECBと日銀はそれぞれ1.6倍、1.3倍にとどまる。FRBの積極姿勢の背景には危機時にはドル需要が高まるという事情もあるが、リーマン以降のFRBの緩和は際立っており、強い危機感の表れとも取れる。
「時間稼ぎ」どこまで 市場の信認カギ
通貨価値の安定が最優先課題の中央銀行の資産買い入れ拡大に危うさはないのか。日銀幹部は「金融政策が財政政策の領域に近づいている」と自ら警戒感を示す。本来、国や民間が負うリスクを中銀が肩代わりしており、損失が膨らんで債務超過に陥れば、最終的には国が財政負担で穴埋めせざるを得ないからだ。
中銀が資金供給の担保として買い入れるのは信用力の高い国債などが原則。欧州危機ではその国債の信用力が揺らいだ。ECBはユーロ圏各国の国債買い入れでリスクを一部引き受けているが、ギリシャやイタリア国債の無制限買い入れには慎重にならざるを得ない。
国際決済銀行(BIS)は今年の年次報告書で「中銀は資産拡大で世界経済を下支えしたが、市場変動で損失を被るリスクを抱えた」と警告した。ベネズエラやジャマイカの中銀が債務超過に陥り、インフレを招いた事例研究はあるが、中銀の財務内容の劣化がどこまで市場に許容されるのか明確な基準はない。
中銀の資産膨張のリスクはむしろ、財政規律を脅かしかねないところにある。JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「中銀が国債を無限に直接引き受けて、国の財政規律が損なわれるような連想が市場に広がれば、通貨の価値は維持できなくなる」と指摘する。
政府による行財政改革や金融機関への公的資金注入など抜本策までの「時間稼ぎ」ともいえる中銀の危機対応は、市場の中銀への信認が揺らいだときに限界を迎える。
[日経新聞12月19日朝刊P.3]
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