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「倒産→夜逃げラッシュ」「不動産価格の一斉下落」で中国経済崩壊はもはや“秒読み状態”だ
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20111212-01/1.htm
SAPIO 2011年12月7日号掲載 2011年12月12日(月)配信
文=石平(拓殖大学客員教授)
「ドミノ倒し」は、大陸を横断する。ギリシャからイタリアへ伝播した財政危機が世界へと波及することが懸念されているが、その先にある最大のドミノは中国である。巨大な矛盾を抱えながら成長してきた中国経済の崩壊カウントダウンが、収束の目途が立たないユーロ危機によって加速する。
欧州危機が中国経済に与える影響は甚大である。
中国の外貨準備高は9月末時点で3兆2017億ドル(約250兆円)という世界一の規模になっているが、近年ユーロ建ての資産を増やしてきていた。ギリシャ国債やポルトガル国債、スペイン国債など、危機に直面するEU各国の国債を数十億ユーロ単位で大量に保有している。損失を被ることは避けられない。
また、最も深刻なのは中国経済を牽引してきた「馬車」である対外輸出が受けるダメージだ。過去三十数年間、中国経済の平均成長率は10%前後だったのに対し、2001年のWTO(世界貿易機関)加入以後、対外輸出は年平均25%以上の伸びを記録している。文字通り成長を引っ張ってきた。
中でも一番の“お得意様”がEUなのだ。
2010年の数字で見れば、中国からEUへの輸出額は約3112億ドル(約24兆円)で、アメリカ(約2833億ドル)を上回る最大の貿易相手となっている。欧州各国の首脳が、中国に国債の追加購入などの支援を求めるのは、「最大の貿易相手なのだから協力をしてほしい」という姿勢の表われである。
とはいえ、中国がさらに手厚い支援に動けるとは思えない。これまで中国政府は大量の米国債を購入してきたが、長引くアメリカの不況によって国債価格は下落。そのことに、中国国内では批判が相次いでいる。「我々が汗水流して稼いだ外貨が、アメリカのために使われ、失われるのはおかしい!」というわけだ。
中国の中産階級以下の家計は逼迫し、爆発寸前となるほど、不満が鬱積している。そのため、“お得意様”であるEUの危機であっても、大規模な援助は困難となるのだ。結果、中国は欧州への輸出が大幅に縮小してしまいかねないというジレンマに陥っている。
では、なぜ中国の一般市民の家計は苦境に喘いでいるのか。その理由と背景にある矛盾が、懸念されるバブル崩壊のもう一つの重要な要因である。
■インフレ 食品価格高騰で“野菜の奴隷”が続出
最大の問題は、急激なインフレである。
ここ数か月間、中国の消費者物価指数(CPI)は高どまりしている。中国国家統計局が10月14日に発表したデータによると、9月の消費者物価指数は、前年同月比で6・1%増。地域別に見ると、都市部が5・9%増、農村部が6・6%増となっている。また、商品別に見てみると、食品価格が13・4%上昇。中でも中国人の食卓になくてはならない食材である豚肉の価格は、43・5%という大幅上昇を記録している。
約2億〜3億人とされる貧困層はもちろんのこと、中産階級にとっても生活必需品の物価高騰は深刻な問題である。
昨年来、中国で注目されている新造語に「菜奴」というものがある。少しでも安い野菜を求めて奔走する、「野菜の奴隷たち」である。
中国メディアで取り上げられる菜奴たちの生活は涙ぐましいものだ。
例えば重慶市では主婦が毎日、自転車で市内の野菜市場を巡っている。重慶は山城(山の街)と呼ばれるほど山がちな土地だが、最も安い値をつけている市場を探すため数十kmも走り回る女性もいるという。インターネットの掲示板などが利用され、主婦同士が情報を交換。どこに、どの時間帯に行けば、最も安い野菜があるかを必死で調べているのだ。さらに最近では、「あの市場が安い」という情報が出回った途端、消費者が殺到し、野菜が品切れになったり市場が値上げしたりするのだと彼女らは嘆いている。
貧困層はさらに悲惨だ。
彼らは野菜を買わずに、自分で栽培している。近くに空き地を見つけてはネギやニンニクを植え、それを収穫して食べる。もちろん、中国で土地の私有はできない。要は自分の土地ではないところで、誰の許可も得ずに無断で栽培しているわけだが、背に腹は代えられない。
インフレがここまで深刻化している最大の原因は、中国政府が長年にわたって続けてきた「貨幣の過剰供給」にある。
中国政府の統計によると、中国のGDPの規模は2009年までの過去31年間でおよそ92倍に成長した。しかし、その一方で、マネーサプライ(通貨供給量)は同じ31年間で705倍の60兆6000億元にまで膨らんでいる。2010年11月2日に中国人民銀行が発表した統計によると、同年9月末時点のマネーサプライは69兆6400億元(約837兆円)。同じ年の1〜9月の名目GDPは26兆8660億元(約323兆円)。マネーサプライ対GDP比は約260%と異常に拡大した。ちなみに一般的に先進国で同じ比率を見た場合、およそ50〜70%の間を推移するものとされている。
つまり、中国政府は30年以上にわたり、中央銀行に紙幣を大量に刷らせ、市場にジャブジャブと供給してきた。巨額の資金は固定資産投資、要は道路や橋、工場や住宅の建設に充てられる。それによって政府は経済の急速な発展を推し進めることができた。固定資産投資が先に述べた対外輸出と並ぶもう一台の「馬車」となってきたのだ。
だが、所詮それは歪んだ成長にすぎない。実体経済において裏付けのない「空虚なカネ」が余る状況が生まれ、結果として、国民が悪性インフレに苦しむことになってしまった。
中国政府が何よりも恐れているのは、「貧困層の爆発」である。
上海交通大学の研究チームの調査結果によると、2010年の1年間に、中国全土では5日間に1回の頻度で大きな暴動・騒動が起きていた。こうした動きが広がることを政府は脅威に感じているのである。
■倒産ラッシュ 社員旅行のスキに社長が夜逃げした!
インフレの加速を食い止めるため、中国政府は金融の引き締めに必死だ。これまでとは逆に、国内に出回るカネを減らすわけである。
しかし、インフレ収束の気配はなく、むしろ金融引き締めの“副作用”が生じている。
金融引き締めにより銀行からの融資が極端に減り、中小企業は事業を続けるために必要な運転資金を借りられなくなってしまったのだ。結果、今年の春先から夏にかけて多くの中小企業が経営難に陥っている。
そして資金繰りに苦しむ一部の中小企業の経営者は、「闇金」に手を出すようになった。
中国では、サラ金など高い金利で貸し付ける貸金業者は、「黒社会(マフィア社会)」ともつながりがある。倒産しそうな中小企業を相手に、年60〜80%の利息で金を貸し、厳しく取り立てるのは「黒社会」の連中だ。返済に窮した経営者に残された道は「夜逃げ」しかない。
今年9月、浙江省東南沿海に位置する温州市で起きた事件は象徴的だ。真空バルブなどを製造する企業「奥米流体」では、約300人いる従業員たちに、社長から1泊2日の慰安旅行がプレゼントされた。社員たちは喜んで出発したが、後から合流すると言っていた社長は一向に姿を見せない。旅行を楽しんで帰ってくると、すでに会社はもぬけの殻だった。
その日以来、社長は姿を消し、従業員の給与は未払いのまま。工場の中の精密機械やオフィスのパソコンなど、価値のありそうなものは全て売りさばかれ、借金を踏み倒した社長の逃亡資金に変わったとみられている。
他にも7月には、「浙江省で6万6000社の中小企業が倒産の危機にさらされ、生死の境をさまよっている」と地元紙が報じ、広州・香港・マカオを結ぶ三角形の工業地帯である珠江デルタにおいては、全企業の30%が生産停止に追い込まれたという。
さらなる企業の連鎖倒産は、今年の年末に集中して起こると思われる。債務の返済期限が年末に集中しているためだ。
■不動産バブル 北京だけで売れ残りが12兆円!
企業倒産ラッシュとともに、不動産バブルの崩壊もすでに始まっている。
そもそも中国で不動産バブルが生じた主要な原因は何か。それは、前述した通貨の大量供給によって流動過剰が生じ、余ったカネが不動産に流れてきた点にある。
2009年、中国政府はリーマン・ショック対策として大規模な金融緩和政策を実施した。そのことにより、GDP(国内総生産)の2割以上に相当する9兆6000万元もの新規融資が行なわれた。カネの洪水はどこかに出口を探し、それが不動産投資だったとされる。投機的な不動産購入が増加し、結果として2009年と2010年の2年間で不動産価格は約2倍に跳ね上がった。
まず、価格暴騰は住宅ローン返済の重圧に押しつぶされる人々を生んだ。
実例を挙げよう。上海で新聞社に勤務する編集者のケースである。この男性は上海市内に300万元(約3600万円)の物件を30年ローンで購入した。毎月のローンの返済金額は1・5万元。しかし、男性の収入は月に2万元程度。月収のなんと7割以上をローン返済に充てているのだ。光熱費や水道費・食費を払えば、給料は残らない。
こういった人々は不動産の奴隷すなわち「房奴」と呼ばれる。
09年の夏には『蝸居(カタツムリの家=手狭な家の意)』というタイトルのTVドラマが中国で大ヒットした。上海に住むサラリーマン夫婦が双方の両親から借金してマイホームを手に入れるが、毎月6000元(約7万2000円)のローン返済に苦しみ、高利貸から借金をするなどして家庭生活が破綻していくという物語だ。多くの家庭が似たような体験をしているからこそヒットしたと言われている。
そうした問題がある一方で、今年になって中国の不動産市場はバブルから冷え込みに転じている。
中国政府が金融引き締め策を実施し、また昨年の秋ごろから不動産投機を制限する政策を実施したためだ。例えば、2軒目の家を買う人にはローンを認めないなど、住宅ローンや開発ローンの貸し出しを厳しくする制限を盛り込んだ。これにより住宅市場では資金の調達が難しくなった。北京では今年6月時点で売れ残りの不動産在庫面積は3300万m2以上。時価では約1兆元(約12兆円)という額になる。ちなみに北京ではこれまで「金九銀十」といわれ、9月と10月は1年間で最も不動産が売れる時期だった。しかし今年は9月の販売も低迷に終わり、10月からは一部の不動産業者が価格を大幅に値下げして売り出している。例えば10月24日、北京市の朝陽区に位置する住宅地では、分譲物件が2割下げて売られた。
こうした動きは北京だけではない。各地で不動産価格の「一斉下落」が始まっている。
珠江デルタに位置する深セン市や広州市などの大都市も例外ではない。深センでは10月3日から9日までの1週間で、新築の分譲住宅の平均価格が、前週と比べて3割も下落した。
さらに10月、ある不動産会社が上海の嘉定区の物件を、300万元から200万元に値下げして販売した。そうすると値下げ以前に物件を購入した住民から抗議が殺到。「高値掴み」をさせられた消費者が価格を維持するよう求める事件も多発しているのだ。
中国銀行業監督管理委員会の主席である劉明康氏は、今年8月19日に興味深い見解を示している。
「不動産価格が40%下がったとしても、銀行は持ち堪えられるだろう」
この発言はどういう意味か。銀行の業務を監査する責任者は、「不動産価格が40%暴落する」という事態を想定しているのである。既にその事態と向き合う覚悟を決めていると言ってもいいだろう。
不動産マーケットの専門家の分析はより悲観的だ。
大手不動産開発会社「SOHO中国」の会長を務める藩石屹氏は9月30日、「中国の不動産市場の崩壊は目前に迫っている」とまで断言した。
では、中国政府が不動産バブルの崩壊を食い止められるかといえば、おそらくできないだろう。なぜなら、不動産価格を維持するためには、量的緩和をするしかない。つまり不動産市場にカネが流れるように、市場に資金を供給するということだ。だが、それをやれば、庶民が苦しむインフレを抑えることはできない。
中国経済は解決手段のないジレンマの中で、崩壊への道を歩み始めている。
【PROFILE】1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部を卒業後、四川大学講師を経て88年に来日。2007年に日本国籍に帰化、08年より拓殖大学客員教授。中国問題について精力的に講演、執筆活動を続け、新著に『【中国版】サブプライム・ローンの恐怖』(幻冬舎新書)。
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