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日本人は、最悪のシナリオを描くのが苦手だ。そもそも最悪の事態を想定する以前に、目をつむってしまう、無視してしまうことが多い。福島第一原発事故でも、1000年に一度の事態にさえ目をつむってしまった。米国の原発のセキュリティー・システムでは、1000年に一度もあるなら、キチンと想定して対応しなければダメという意識があって、過去の地盤沈下などを徹底的に調べて、その対応をしているそうだ。
金融マーケットで、近年話題になっている「ブラックスワン」は、本来あり得ないことが起こる事態を示した言葉だが、近年はしばしば起きている現象と言っていい。たとえば、ロシアのデフォルトによる通貨危機からヘッジファンドのLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント・)の破綻やリーマンショックのような事態は、100万年に3度の確立だと言われる。1000年に一度よりも、はるかに少ない頻度なのだが、実際には10年に一度ぐらい起きている。
今回の欧州債務危機も、新しい段階に入るたびに、最悪の事態を想定すべきだろう。それが自分の資産を守ることになるかもしれない。統計学的には「テールリスク」と呼ぶそうだが、こうしたブラックスワン=最悪の事態を想定して、対応することが投資には大切なのかもしれない。
その最悪の事態だが、大雑把な指摘をすれば、次のようになるのではないか。
1.格付け会社が揃って、欧州のソブリン格付けを一斉に引き下げ。
2.救済スキームの柱だった「EFSF」の見直しを迫られる。
3.ユーロ共同債の発行構想がまとまらずにとん挫。
4.ECBが最後の貸し手として、無制限に国債を買い入れることを拒否。
5.PIIGS諸国のソブリンを大量に保有している金融機関の資金調達が難しくなり、金融機関が連鎖倒産し始める。
6.CDSのクレジット・イベントが発動されて、CDSの売り手側の金融機関も破綻の危機を迎える。
7.欧州の金融システム全体がリスクにさらされ、世界的な信用収縮が始まる。
ここまでは、リーマン・ショックと同じだが、問題はこの先だ。リーマンの時は、FRBが最後の貸し手として大量の不良債権を購入。金融システムの崩壊を守った。さらに、G20で主要20カ国の首脳が集まって、金融政策として財政出動することになった。問題は、現在のソブリン危機が、この時の莫大な財政支出が原因で起きており、現在の主要20カ国の政府には欧州債務危機が金融システムが崩壊の危機に陥っても、それを救うカネ(財源)がないことだ。あるとすれば、中国や中東の石油産出国ぐらいだが、中国は欧州の経済危機が原因で、自国の不動産バブル崩壊の危機に陥っている。
結局のところ、ECBとかFRB、BOE(英国中央銀行)、日本銀行といった主要国の中央銀行が輪転機を回して紙幣を印刷し、無制限に不良債権を買い取ったり、政府の国債を引き受けて政府に資金供与するしかなくなる。しかし、この方法はECBやドイツが心配しているように、インフレの原因になる。市中に出回る資金が増えるということは、紙幣の価値が少なくなるわけで、代わりに金や資源、食料といったモノの値段が高くなる。
しかも、単体の国であれば、経済危機に陥ると通貨が暴落して輸出が伸び、国際競争力を高めることができ、最終的には経済危機から脱することができる。しかし、ユーロは複数の国が参加している連合通貨であり、ギリシャのように事実上デフォルトしているのに、何とか資金が融資されて、通貨も国力以上のレベルに保たれたままになっている。これでは、復活しようにもできない。PIIGS諸国の中には、さっさとデフォルトして再生を図りたいと考えているところもあるはずだ。
とはいっても、金融システムが崩壊してしまったら、健全な国の銀行や証券会社も連鎖的に破綻してしまうことになる。そんな状況は絶対に避けなければならないから、最悪の場合はユーロ圏から離脱してでも、自国の資産を守りたいと思う国も出てくる。そうなった時のシナリオの想定は非常に難しい。ただ、過去のケースなどを参考に考えれば、次のようなことは想定できる。
G.ユーロの崩壊・・・PIIGS諸国のデフォルトなどを食い止めることができなくなり、ユーロ圏から離脱を表明する国が出てくる。
H.ユーロが暴落し、基軸通貨である「米ドル」が最終的に買われる。日本は緩やかだが円安に振れていく。あるいは、リーマンショックと同様に、米ドルと日本円が買われて想定外の円高になる。
I.ユーロ圏の貿易がストップし、世界経済はパニック状態となり、保護貿易主義がはびこってくる。
J.保護貿易の進行から中国のバブルが崩壊。企業倒産が相次いで、地方政府や金融機関が破綻していく。
K.最終的には恐慌状態に陥る。
ちなみに、恐慌の定義というのは「年間10%以上の景気後退」もしくは「3年連続の景気後退」だと言われている。これらの最悪のシナリオを頭の片隅に入れて行動することが大切かもしれない。ちなみに、前回紹介した「TEDスプレッド」は米国を基準にして、海外に投資した方がいいと思える指標と考えれば分かりやすいかもしれない。いい換えれば、この数値が上がった時は本当に緊急事態と考えるべきだろう。(岩崎博充)
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