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韓国経済は強いのか
(1) 繰り返す通貨危機 資金出入り激しく
韓国経済は強いのか弱いのか――。2010年には6.2%成長を達成し、日本企業を規模・収益で軽く超える世界的企業も登場した。半面、1997年、08年と2度も通貨危機に陥った。
今年も世界的な金融市場の混乱を受け、欧州系を中心に外資系金融機関が一斉に韓国から資本回収に動いた。国内大手銀行は外貨建て債券発行で埋めようとしたが、従来の条件でのドル調達は困難を極めた。9月初めに1ドル=1060ウォン台だったウォンは1カ月で1200ウォンまで急落した。
韓国各紙は「再び通貨危機に陥るか」との記事を掲載。韓国政府は10月19日に日本から外貨スワップ増枠の約束を取り付け、ようやくウォン売りに歯止めがかかった。朝鮮日報の宋熙永・論説主幹は22日、「これで通貨危機に陥る可能性は20%以下に下がった」と書いた。
韓国には輸出が伸びても部品や素材の輸入が日本から増えるという構造が残り、まだ外貨を十分に蓄積していない。原油価格が高騰した08年には通関ベースで132億ドルの貿易赤字に陥った。08年後半から09年前半には純債務国に逆戻りした。
97年の通貨危機の際、国際通貨基金(IMF)救済の見返りに資本規制を撤廃したこともあり、短期の投資資金の出入りが激しい。韓国銀行は10月30日発表の金融安定報告書で「09年第2四半期から10年末までに、新興国平均の2倍に相当する国内総生産(GDP)比8%以上の証券投資資金が純流入していた」と指摘した。世界の金融が収縮する時はそれが一気に流れ出る体質にある。
(編集委員 鈴置高史)
[日経新聞12月13日朝刊P.29]
(2) 危機を受けて経営革新 「価格より品質」へ
1997年の経済危機で韓国企業は存亡の淵に立った。必死に経営革新に取り組んだ企業がいま、内需が小さいため活路に求めた世界市場で急伸している。
典型例が現代自動車と起亜自動車で構成する現代自動車グループだ。99年は生産台数が211万台で世界10位。2009年には533万台、同5位に躍り出た。塩地洋京大教授は「99年に会長に就任した鄭夢九氏が品質重視経営に転じたことが原動力」と言う。
部品調達で情実を徹底的に排し、「価格より品質」を追求。06年には米市場調査機関から日本車以上の品質との評価も得た。さらに「日本車と同等の品質で安い」というイメージを世界の消費者に植え付ける作戦を展開。業界再編によりシェア70%を占める国内で稼いだ利益を広告費に投じた。海外部門の営業利益は05年度以降赤字だったが、10年度には2兆ウォン(1ウォン=0.067円)超の黒字に転じた。
海外生産の拡大も速い。日本企業は「カイゼン(改善)提案」をできるような作業者を育てるため小規模工場から操業を開始する。一方、現代自動車グループは品質維持を作業者に頼らず、溶接ロボットを日本企業以上に多用しエンジニアがカメラで工程を監視する。日本的手法へのこだわりをやめて奏功した。
注意すべきは韓国企業すべてが経営革新をしたわけではなく、一部の超優良企業が韓国経済を先導していることだ。量的に拡大しただけの企業もあり、経済が収縮した場合は苦境に陥る恐れがある。
(編集委員 鈴置高史)
[日経新聞12月14日朝刊P.29]
(3) 決断速い経営者 早くから役員経験
韓国企業躍進の秘訣は判断の速さと大胆さにある。造船、携帯電話、テレビ、鉄鋼。この10年、こうした分野の韓国企業は途上国市場の急成長を見込んで積極的に生産能力を拡大し、日本のシェアを奪ってきた。
判断の速さは部品の調達にも表れる。日本の電機業界が束になってもかなわないと評されるサムスン電子。日本の中小企業が新しい部品を開発したと聞けば、役員クラスの事業部長が飛んできて購入を即決する。一方、日本の大手は社内の協議に時間がかかり、1年たっても判断できないこともある。
日本の経営者には「韓国企業のほとんどはオーナー支配。独裁的権力を持って素早く決断できる」との見方がある。しかし“オーナー説”に対して鄭●(つちへんに俊の右側)明・元日本サムスン社長は首をかしげる。「日本のサラリーマン経営者だって人事権を手に圧倒的な力を持つ」
柳町功・慶応大教授は「統治の構造というよりも、判断のできる経営者の有無の差だ」と指摘する。サムスン電子でいえば、半導体事業への進出といった大戦略はオーナーが決めるものの、個別事業の運営では非同族の専門経営者たる社長が最終判断を下している。
社長は50歳前後で、その前に約10年間、役員として幅広く深い経験を積む。「若いうちに知見と判断力を養うことで、激変する経営環境を見切って大きなリスクをとれる『企業家』が育つ」(柳町教授)。半面、日本の大企業では高齢化が進み、50歳を過ぎてから役員に就任することも多い。
(編集委員 鈴置高史)
[日経新聞12月15日朝刊P.31]
(4) 急激に広がる所得格差 非正規依存で不満
「企業は生き残ったが国民は貧しくなるばかり」(10月11日付、韓国日報)。韓国メディアが一斉に政府を批判する。
この記事のもとになったのは姜斗龍・産業研究院動向分析室長の論文「深化する家計・企業間の所得両極化」。論文によると、1975年から経済危機に直面した97年までの高度成長期には、企業所得は家計所得の1割以下だったが、2002年以降は1割を上回り、10年にはついに2割を超えた。
“家計の取り分”がどんどん減っているわけで「米国や日本でもこの傾向が若干見られるが、まだ1割前後に収まっている」(姜室長)。
原因は給与の低い非正規労働者の急増だ。経済危機の際、人件費を削減するために韓国企業は従業員を大量に解雇。人手が必要になっても非正規労働者の採用でしのぐようになった。韓国労働社会研究所は現在、給与労働者の2人に1人が非正規労働者と推計する。
当然、国民の間の所得格差も拡大する。所得上位20%の家計の平均所得を下位20%の平均所得で割った「5分位分配率」を見ると10年は4.82。90年の3.72に比べ、明らかに不均衡が拡大している。
格差拡大は消費低迷につながる。輸出依存度は増す一方で、国内総生産に対する輸出の比率は10年には46%を超えた。9月にウォン相場が急落したのも、世界経済の収縮による直撃を受けるとの見方からでもあった。国民の不満が高まる中、12年末の大統領選挙では「成長よりも雇用」が各候補の公約になりそうだ。
(編集委員 鈴置高史)
[日経新聞12月16日朝刊P.29]
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