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2012年、世界経済に垂れ込める暗雲
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投稿者 あっしら 日時 2011 年 12 月 16 日 20:37:15: Mo7ApAlflbQ6s
 


2012年、世界経済に垂れ込める暗雲

2011.12.15(木)

(2011年12月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

2012年に再び世界的な景気後退が起きない方に大きく賭けるエコノミストはほとんどいない。経済見通しは今、初秋時点よりも相当暗くなっているというのが、エコノミストの一致した見方だ。

 ユーロ圏の危機は悪化し、イタリアとスペインに波及、フランスの玄関にまで打ち寄せている。その他先進国の景気回復は依然、弱々しい。新興国も重圧を感じ始めている。

危険な局面が現実に

 政策立案者たちは不安を抱いている。国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は9月に、世界経済が「危険な局面」に入ったと繰り返し警鐘を鳴らした。12月に入ると、脅威は現実となり始めたと言うようになった。
 ラガルド専務理事は今月ブラジルで記者団に対し、「世界経済の見通しは、我々が当初予想していたより低くなる。一部地域では大幅に低くなるだろう」と語っている。

 もっと暗い悲観論が経済協力開発機構(OECD)を襲っている。特に不安視されているのが、先進国の政治家の対応だ。

 OECDのチーフエコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏は「政策立案者たちが世界経済のリスクに対処するために断固たる行動を取る緊急性を理解していないことを懸念している」と言う。

 この評価には民間部門のエコノミストも同意している。投資銀行ゴールドマン・サックスが経済見通しを下方修正した際、同社の米国担当チーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は、多くの先進国では増税と家計・企業債務の返済努力によって成長が妨げられているとし、「この組み合わせのせいで標準以下の成長があと2年続く可能性が高い」と述べた。

2008年の危機より厳しい理由

 大手シンクタンク、ブルッキングス研究所のエスワール・プラサド氏は、もっと悲観的だ。「2009年初頭には、かすかな望みを見いだすのも難しかった。また同じ状況になっている。だが、今の状況が異なるのは、2008年の危機が膨大な債務負担を生み出し、政策に対する制約が当時よりずっと厳しくなったことだ」
 だが、エコノミストらが心配する一方、世界のすべての地域が苦しんでいるわけではない。ドイツの就業者数は10月に再び、東西統一後の最高水準を記録し、同国の繁栄とユーロ圏周縁国の苦痛のずれを浮き彫りにした。

 予想は下方修正されているものの、大抵のエコノミストは世界経済が2012年に3%を多少上回る成長を遂げると見ている。これは2011年の成長率を1ポイント下回るだけで、景気拡大の大半を新興国が担う見通しだ。

景気後退入りが近い欧州

 危機の中心は欧州だ。ユーロ圏内およびユーロ圏周辺の国々は今にも景気後退に入ろうとしているように見える。「バズーカ砲」がイタリアとスペインへの危機波及を防いでくれるという希望が打ち砕かれた今、欧州の大部分では、公式借り入れコストが再び歴史的な低水準になったにもかかわらず、政府、家計、企業が金利上昇に直面している。

 ユーロ圏が急速に回復すると考える向きは、ほとんどない。大半のエコノミストは2012年初頭にユーロ圏経済が縮小に転じ、英国など、単一通貨圏を取り巻く国々がほぼ停滞状態に陥ると予想している。
 特に懸念されているのは、景気の悪化が、問題が解決されたとはとても言えない国債市場と銀行の資金調達市場の緊張を高め、2008年のような悪循環を生み、ユーロ崩壊を招きかねないことだ。

 マネーサプライ(通貨供給量)は2009年初頭以来最も速いペースで減少しており、大手金融機関クレディ・スイスのネビル・ヒル氏は「例えば欧州中央銀行(ECB)やドイツ連銀など、金融指標を特に重視する機関にとっては、これは警戒すべきサインのはずだ」と言う。

 大半の観測筋はユーロが存続すると考えているが、それは政策立案者たちが問題を解決したからではない。

米国は緩やかな成長が続きそうだが・・・

 もう1つの巨大な先進国経済圏である米国では、大方のエコノミストは、緩やかな景気回復が続く中で選挙の年に入ると予想している。相対的に高い消費支出を背景に、失業率が低下し、成長率が欧州を上回っているため、各種調査統計はありきたりなペースでの成長が続くことを示唆している。だが、選挙の季節が近づくことから、静かな1年が保証されているわけではない。

 大手金融機関シティグループのチーフエコノミスト、ウィレム・ブイター氏は、たとえ緩やかな景気拡大が続いたとしても、「米国の経済成長は、2012〜13年に失業率を大きく引き下げられるほど力強いものにはならないだろう」と話している。

 また、バークレイズ・キャピタルのジュリアン・キャロウ氏は、欧州がふらついている以上、今後の見通しにとって最も重要なのは、米議会が2011年末に期限切れを迎える給与税減税を延長することだと言う。

 先進国がまた期待外れの1年に思いを巡らせる中で、世界経済のエンジンはかつてないほど決定的に新興経済大国にシフトした。
 新興国を専門とする大手銀行スタンダード・チャータードのジェラルド・リオン氏は、西側諸国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は弱く、信頼感はぼろぼろだと指摘。「対照的に、新興国ではファンダメンタルズが堅調で、政策の棚がほぼいっぱいなうえ、信頼感は回復力を示す可能性が高い」と話している。

世界経済のエンジン中国にも不安

 だが、こうした新興国でさえ、問題が全くないわけではない。日本の投資銀行、野村によると、中国は2011年の世界の経済成長の40%以上を担った。「中国のハードランディングのリスクについて我々がこれほど不安になるのも無理はない」と同社チーフエコノミストのポール・シェアード氏は言う。

 中国は諸外国での景気減速を感じており、当局は成長を維持する能力について心配し始めている。
 大手銀行HSBCの屈宏斌氏は、少なくともインフレが和らいでおり、景気刺激策を講じる余地が大きくなっているとし、「中国のマクロ面の大きなリスクは急速にインフレからディスインフレに変わりつつあり、来年に向けてより積極的な政策緩和が必要になるだろう」と言う。

 2009年にはインフラ支出や国有企業による投資、住宅建設を増やす景気刺激策が奏功した。そうした資本支出は世界経済の不均衡是正という長期的な目的には何ら役立たないにせよ、再び刺激策を講じれば、うまくいく可能性は高い。

 その他新興国でも成長は続いているが、ペースは鈍っている。トルコを含む東欧地域は特に、ユーロ圏の危機の悪影響を受けやすい。コモディティー(商品)ブームが踊り場に差し掛かり、中南米地域の成長が急激に減速する一方、アフリカ諸国は劇的な経済情勢の改善にもかかわらず、世界的な景気減速に極めて弱い。

 先進国が2008〜09年の危機から回復したとは到底言えない状況にあり、新興国が自律的な成長を生み出せるかどうかが不透明なため、世界は依然として危険な場所だ。2010年の力強い回復の後で、今年は極めて大きな失望をもたらした。

By Chris Giles

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32823

 

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