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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32661
*****この10年の「国際金融のトリレンマ」が解消へ
州危機は周辺国からついに中核国に波及、イタリア国債金利は7%の危機水準に高まり、フランスにも伝染し始め、ユーロの崩壊と世界不況再来が真剣に心配されている。
もっとも危機の原因と処方が明確なのに、みすみす恐慌への落ち込みを容認してしまうほど、政治と市場が愚かであるとは思われない。危機は不適切な事情によって成長が阻害されていることによって起きているのであり、成長阻害要因が取り除かれることで「将来の成長が可能となる」展望が開かれる。危機こそは将来の成長基盤を整えるチャンス(危機=好機)でもある。
ユーロの最大の成長阻害要因となってきたのは、「ユーロ圏同一金利の成立による金融不全」であった。
一般的にはユーロ危機の原因は財政赤字と捉えられている。だが、その放漫財政を許した根本原因は、金融市場が適切な資源配分を果たしてこなかったという機能不全にある。過去10年間、資本は高インフレ、高成長、低生産性、財政節度の緩い南欧に向かって一方向に流れ、バブルを作っては資本を浪費させ、域内不均衡を増長させた。
*****トリレンマの罠にはまったユーロ
過去10年間、ユーロ圏はいわゆる「国際金融のトリレンマ」に陥っていた。
1999年のユーロ発足まで相当程度の幅があったユーロ圏各国間の長期金利格差は、2000年から2008年にかけて完全に消滅し、ユーロ圏内同一金利(長短ともに)が成立した。
しかし、よく考えればそれは経済合理性、換言すれば「国際金融のトリレンマ」からの脱却という命題にそぐわないものであった。
「国際金融のトリレンマ」とは、(1)為替レート、(2)金利、(3)資本移動 の3つの自由を同時には獲得できないというものである。
中国のように(1)為替レートを人為的に定めている国は、(2)国内金利の自由度も放棄しないので、(3)資本移動を規制するしかない。
また、92年のポンドショックで(3)資本移動の自由を維持しつつ、(1)為替レートの自由度をも維持しようとした(為替水準をEMS域内の為替変動幅2.25%に抑えようとした)イギリスは、(2)国内金利の自由度を失い、金利急騰→リセッションという罠に陥った。結局、景気を支えるために(2)金利の自由度を選択せざるを得ず、(1)為替の自由度を放棄せざるを得なかった。以降、イギリスは国内金利の自由度を優先し、為替水準(スターリングポンド)は変動相場として市場に任せることとなった。
******当然かつ望ましいユーロ圏内金利差の拡大
このように中国やイギリスには明確な優先順位があり、経済と金融の安定性が保たれているわけだが、2008年までのユーロ加盟国は、(1)域内の固定レート、(2)金利の自由度(域内同一金利)、(3)資本移動の自由、という3つの自由を同時に獲得しようとしていた。それは、「国際金融のトリレンマ」解消という命題に明らかに矛盾していた。
(1)(2)(3)が同時に成り立つということは、域内の競争力格差と不均衡が拡大一方となることである。2008年までのユーロは同一金利ゆえに、不均衡拡大から崩壊に至るという体制的欠陥があったと言える。
欧州各国の競争力を投影する経常収支対GDP比はドイツの独り勝ち傾向が強まる一方であり、金融市場はそうした格差を一段と助長した。
ユーロ圏内同一金利は、高インフレの南欧諸国に低実質金利を与えてインフレを加速させ、低インフレのドイツに高実質金利を与えて一段とインフレを抑制し、ドイツの競争力を著しく高めた。
こうした推移を踏まえれば、2009年以降、ユーロ圏各国間の長期金利格差が再度大きく拡大してきていることは「国際金融のトリレンマ」の解消を意味し、経済合理性に合った動きと言える。
金利が低下し資本が流入するドイツでは、景気とインフレが刺激される。一方、金利上昇により資本が流出する南欧ではその逆が起き、自ずと競争力ギャップと不均衡が是正される。
南欧諸国における金利上昇が破壊的水準以下に抑制されさえすれば、金利格差の下で、むしろユーロの一体化は維持しやすくなると考えられる。異なる金利差が受容されると、不均衡の調整の際に求められる財政負担は小さくなり、より財政統合が進みやすくなる。
*****ユーロの欠陥是正に向けて働く求心力
以上の事実は、南欧諸国の金利上昇に表象されるユーロ危機の展開が、ユーロ圏の「遠心力」(=不均衡拡大)よりは、ユーロ圏の「求心力」(=不均衡縮小)を強めるものであることが分かる。事実、ギリシャ危機勃発以降、ユーロ圏内各国の対外経常収支は縮小している。
課題は、★金利格差により市場の自動調節機能を働かせつつ、南欧諸国での破壊的金利上昇を抑止することにある。市場規律と南欧諸国の財政破綻の回避、救済を同時に実現する作戦の遂行が求められる。
この観点から、★安易なユーロ共同債の発行や、無限定のECBによる南欧ファイナンスは不適切であることが分かる。それはすでに破綻した「ユーロ内同一金利」を復活させ、再度不均衡を拡大させるものであり、ユーロ崩壊を導くものとなる。
他方で、市場における恐怖の悪循環による金利の急騰を放置すれば、イタリア、スペインなど財政再建が可能な大国までが破綻し、やはりユーロは崩壊する。
つまり、丸ごと救済ではなく、節度と条件を付与した南欧諸国支援が唯一の解決策なのである。
*****ーロ再構築に向け政治と市場の足並みがそろった
このように考えると、8月のユーロ危機勃発以降の政治展開は「見事」であったと評価できる。
9月時点では問題の所在も解決策も不明で、市場の暴力の前に政治は無力とすら思われた。安易な救済を拒否するドイツの頑なさが、ユーロを崩壊させるとの懸念が強まった。
しかし、市場に有無を言わさぬ圧力は、ギリシャ、イタリア、スペインの政権を一気に交代させ、ホピュリズムと国民の間にあった甘えを一掃した。支援を受ける南欧側に、痛みを甘受する体制が整えられ、各国で財政健全化策が策定されている。
ECB(欧州中央銀行)ドラキ新総裁は、そうした条件の下でECBによる南欧諸国国債の買い増しを示唆する発言をした。ドイツのメルケル首相は「危機の解決はマラソンである」として、(ユーロ共同債発行=南欧諸国支援を完全に否定しないことで)南欧諸国金利の破壊的急騰に配慮しつつも、一定程度の金利格差による市場の規律の維持により、南欧諸国の改革の継続を求めている。また、これを機に欧州財政の一体化を急進展させる構えである。
ここまで来ると、南欧諸国の財政破綻金利急騰、ユーロ崩壊の可能性は著しく減少したと判断される。
一旦、★ユーロ崩壊、世界恐慌の可能性という究極の「リスクオフ」を織り込んだ金融市場において急速なポジションの巻き戻し、「リスクオン」の大波が訪れるかもしれない。ユーロの金融緩和とともに訪れるリスクオンの大波は、成長余力を蓄えているドイツ経済と資産価格を押し上げることになり、それが南欧諸国の低調をカバーして、欧州をリセッションから救うだろう。
もう1つのカギである米国経済の持続成長の可能性・・(中略)
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■IMF専務理事:欧州危機は「国際的尽力」が必要な段階まで悪化・・「30年代の過ちをくりかえすな」!!
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LW983O07SXKX01.html
12月15日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は15日、欧州の債務危機は一つの国家集団では解決できない段階にまで拡大しつつあるとの認識を示した。ラガルド専務理事は各国が協調しなければ、世界は第2次大戦突入前の1930年代と同様の状況に直面すると指摘。
「低所得国であれ、新興国、中所得国、あるいは超先進国であれ、世界の中で今回の危機の影響を受けない国など存在しない。危機は進行しているだけでなく、誰もが何か貢献しなければならないような段階にまで深刻化しつつある」と述べた。
同専務理事はさらに、国際社会が協調しなければ「経済的観点からは後退、保護主義の高まり、孤立といったリスクが生じる」と発言。「これはまさに30年代に起きたことであり、その後に起きたことは待ち望まれるものではない」と続けた。
その上で、「現時点では危機の中核から始める必要があり、それは明らかに欧州諸国、特にこの通貨同盟に参加しているユーロ圏諸国だ」と話した。
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