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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LW7FUO1A1I4H01.html
12月15日(ブルームバーグ):欧州連合(EU)首脳会議は制裁措置を強化する新たな財政協定で合意、統一通貨ユーロの補強を目指す財政同盟に向け一歩踏み出した。★ユーロ崩壊の「危機を好機とすることができた」。ブリュッセルで8、9両日に行われた首脳会議終了後、ドイツのメルケル首相は市場の攻勢に立ち向かう決意をにじませた。
一方、大西洋を隔てた米国の首都ワシントンでは、★オバマ米大統領がEU首脳会議に関する記者団の質問に答え、「欧州の政治指導者は市場から信頼感を得られるような政策を早急に実施する必要がある」と、短期決戦型の対策をとるよう求めた。この米欧政治指導者の市場に対する立ち位置の相違が世界経済に与える影響から目が離せない。
単一通貨ユーロの創設をうたったマーストリヒト条約は来年2月に20周年を迎えるが、単一の財政システムを欠くという致命的な欠陥があった。この瑕疵(かし)が膨らみユーロ危機へとつながる。メルケル首相は、このユーロの失敗から「教訓を得た」と表明。「奇しくもマーストリヒト条約がまとまってから20年目にして、財政同盟の開始という、素晴らしい前進を果たした」と胸を張った。
メルケル首相はサルコジ・フランス大統領を説き伏せ、ユーロ生誕時からの欠陥を補うため、EUの安定成長協定の責務を強化する道を選んだ。新協定は単年度の財政赤字を対国内総生産(GDP)比で0.5%に制限。財政赤字がGDP比で3.0%を上回った国には自動的に制裁を加えることを明記した。
*****重い英国の拒否権行使
ユーロ圏の売り崩しを狙う一部の市場参加者は、ユーロ共同債の発行、欧州中央銀行(ECB)による国債の買い支えが盛り込まれなかったと不備を列挙するが、共同債の発行は財政の統合が前提条件になる。27カ国の主権にかかわる決定をそんな簡単に実現できるものではない。メルケル首相が表明したように、「財政同盟への端緒」に就いたばかりである。欧州中央銀行(ECB)の政治からの独立性も法律により不可侵とされている。
実際、今回の協定改正で、英国は拒否権を発動するという身を削る決定を下すまで追い詰められている。今回の決定が市場でいわれるほど軽いものではないことを示している。。
同国は歴史的に欧州大陸と一定の距離を置いてきたが、それでも発展する欧州連合を無視することはできない。「英国は大国だが、長期的にみれば、小さ過ぎて孤立政策を続けていくことはできない」(ユンケル・ルクセンブルク首相)のである。キャメロン英首相は大欧州から孤立するリスクを犯して、拒否権を行使した。これは、市場が考えるほど協定改正は軽くないことを示して余りある。
*****国家が獲物に
★ 市場主義の下では、すべての現象がもっぱらマーケットの視点から捉えられる。このため判断は性急になり、矛先は一点に集中。そして、最も攻撃しやすいと見なされるところが餌食となる。それぞれの国が抱える長い歴史や、政治・経済・社会システム、果ては主権者である国民の意思もまったく顧みられなくなる。まさに「市場至上主義もここに極まれり」といったところか。
サブプライム危機で米大手投資銀行として最初に倒れたベア・スターンズに対するカラ売り攻勢について、ポールソン前財務長官は「まるで狼の群れが弱ったシカを引き倒そうとしているようだった」と述懐した。サブプライム危機に続いて発生したユーロ危機では、市場の獲物が国家になってきた。
★ 国家を引き倒すこともいとわない市場は、自らよって立つ経済システムそのものの崩壊もいとわないことを意味する。まさに市場至上主義の自爆である。国家経済の破綻もいとわない市場に信頼してもらおうと努力するなど、そもそも本末転倒である。まず主権者である国民の信を得るよう努めるべきだろう。EUの盟主ドイツはこの倒錯した世界に一定の距離を置いているようにみえる。
*****米大統領の弥縫策
一方、この倒錯した世界を主導するオバマ米大統領はEU首脳会議の決定について、「マーケットの信頼を確保するため、短期的な危機を解決するべきである」と述べた。念頭にあるのはあくまで「市場」である。荒れ狂うマーケットをなだめるため、オバマ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)とともに実施ないし約束した金融支援は総額10兆ドルにも上る。(「オバマ発金融危機は必ず起きる!」、朝日新聞出版)。
オバマ大統領はEUに対し、こうした米国型の金融支援策を実施すべしとハッパをかけたものだ。同大統領の公的資金の投入により、米国の金融機関は破綻の淵(ふち)からよみがえったが、多くの国民は銀行による差し押さえで住宅を失い、破綻の憂き目に遭っている。そして、銀行は納税者の資金により救済されながら、その利益を侵害している。
こうして、連邦準備制度による金利引き下げ効果はもっぱら金融界やそれとつながりの深い富裕層や企業が享受することになる。11月の失業率は8.6%に低下したが、平均失業期間は過去最長を更新しており、内容は悪い。新規雇用も年末商戦に向けた1、2カ月の臨時雇いがかなりの部分を占めている。市場至上主義は世界最強の米経済も直実に蝕みつつある。
*****米国債務はGDP比100%突破
オバマ大統領は短期的な弥縫(びほう)策の結果、こうした深刻な問題を抱えるに至ったという現状認識が欠落しているようだ。ギリシャ危機が11月にクライマックスを迎える3カ月前。米政府と議会は米国債のデフォルト一歩手前で、ようやく債務上限引き上げに漕ぎ着けていたという体たらくである。
しかも、数カ月にわたる米政府と議会の交渉の末まとまった措置は、2013年度までに債務上限を2兆1000億ドルも引き上げるもので、一段と連邦債務を膨張させる。一方で、債務上限は2012年度内に16兆1940億ドルに拡大する。名目GDPを軽く突破することになる。米政府は継続的に債務上限を引き上げてきており、破綻回避のため、12年度内にさらに大幅な債務上限の引き上げを余儀なくされよう。
******「平和の通貨」に込めた願い
8月の債務上限引き上げの際に与野党が合意した超党派特別委員会による最大1兆5000億ドルの債務削減の細目決定も結局、★11月に失敗に終わった。一国の財政問題もまとめ切れないオバマ大統領が、財政協定の強化でまとまった26カ国のEU首脳に向かって、「十分ではない」と指摘するのでは、自らが置かれた状況すら把握していないとのそしりを免れまい。
こうした米政権・議会の体たらくは米国債、そして基軸通貨ドルの行方を曇らせる。ユーロは1999年1月1日に1ユーロ=1.1700ドル近辺で誕生したあと、2000年10月26日に1ユーロ=0.8303ドルまで売り込まれていた。この水準をボトムにして、ユーロは上昇軌道に転じ、リーマン・ショックが発生する2カ月前の2008年7月11日に1ユーロ=1.5938ドルに駆け上がっている。
その後、金融危機を背景に最も交換が容易な基軸通貨であるドルに買いが戻り、ユーロは値を消す展開になる。さらに、下げ足を速める場面もあったが、今月14日の時点でなお2000年のボトムを56%も上回っている。
******マネタイズを拒否するECB
★ 危機の渦中にありながらユーロ相場がなお底堅さを維持している背景には、国債のマネタイズ(貨幣化)を拒否するECBと、財政と金融政策の共同作戦を展開するヘリコプター・ベンことベン・バーナンキ議長率いるFRBの対照的な政策も影響しているようだ。また、幾度となく戦火を交えたドイツとフランスが2度と戦争を起こすまいという願いを込めて生まれた「平和の通貨」ユーロが秘める強さも背景にあるようだ。
「平和の通貨」ユーロは、第2次世界大戦で連合国側を勝利に導き、覇権国として世界を睥睨(へいげい)する「戦勝国通貨」ドルと一線を画する。世界最強の軍備に守られた覇権国通貨に比べ、「平和の通貨」は一見すると弱々しい。
しかし、平和と繁栄を目指す17カ国国民の願いを、市場原理を優先して、踏みにじることは許されない。市場至上主義が目指す自己利益よりも、ずっと価値あるものが存在することに気づく必要がある。関係国政府・中央銀行は、一部の市場関係者の信頼を得るために「巨額の見せ金」を示すのではなく、国民の信頼感を高める政策を希求すべきだろう。
戦争と混乱の世紀である20世紀に決別し、21世紀を「平和の世紀」とするためには、市場の私情を超えた真の市民の声に耳を澄ます必要がある。市場も自爆への道を踏みとどまることができるのか。それはユーロ中核に位置するドイツのメルケル首相の決意をどう読むかにかかっているようだ。
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