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年金資金が消えていく 強欲マネー次は日本売り
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/29865
2011年12月14日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
巨大マネーを元手に世界で暴れ回るヘッジファンド。その資金を提供しているのは意外なことに、世界各国の年金マネーだ。在米ジャーナリストが語る。
「最近、米紙ニューヨークタイムズが『大変な年にもかかわらず、ヘッジファンドは神秘性を維持』なる記事を掲載した。世界の株式市場が低迷する中で、ヘッジファンドには今年700億ドル(約5兆4000億円)以上のカネが流れ込み、その大半が年金基金からのものであると報じた。同紙によればヘッジファンドの全資産のうち60%が年金マネーによるものという」
ご多分に漏れず、日本の年金マネーも大量にヘッジファンドにぶち込まれている。投資顧問会社代表が指摘する。
「加入者から集めた資金を元手に運用して膨らませるのが年金基金の仕事だが、彼らは'08年のリーマン・ショックを境にまったく儲けられなくなった。それでも3.5%とか5.5%という高利回りが求められるため、基金の担当者たちがこぞってヘッジファンドに泣きついた。いまや日本の年金基金の95%近くがなんらかの形でヘッジファンドに投資している」
ただ、ハイリスク・ハイリターンの代償は大きい。過去には日本人の年金マネーがヘッジファンドの被害≠受けた実例がある。全国紙経済部記者が言う。
「米ヘッジファンドの『アマランサス』はエネルギー関連商品で荒稼ぎしていたが、'06年に天然ガス相場が急落すると総資産の半分以上、約7000億円の損失を出した。日本の年金基金などの機関投資家は直接アマランサスへの投資はしてなかったが、多くのヘッジファンドに分散投資するファンド・オブ・ファンズ(FOF)を通じてカネをつぎ込んでいた。アマランサスに投資していたFOFの中には5%近い運用損となったところもあったようだ」
もし直接、しかも大量に投資していたら庶民がコツコツ貯めてきた年金マネーがパー≠ノなっていたのだから、恐ろしい。さらにいま、日本人の年金マネーを得たヘッジファンドが返す刀で日本国債をターゲットに据えているという事実は見逃せない。ギリシャに始まりイタリア、フランスへと、国債が売り浴びせられる惨状が我々にも迫ってきたのだ。信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏が言う。
「いまヘッジファンドの間では『来年にはユーロ圏は再編される』との見方が広がっている。1ユーロ=90円くらいまで売り続け、そこでユーロ崩壊が起きたらポジションを手仕舞うようだ。そして次は米国か日本を狙うという。欧州景気が悪くなれば米国経済も悪化が必至だから、欧州危機で儲けたカネを米国の株と通貨のカラ売りにつぎ込む。
日本の場合はもちろん国債がターゲット。実はバブル崩壊時にヘッジファンドと大手外資系証券は暴落する日本株のカラ売りをしかけ、多額の利益を得ている。当時、あるヘッジファンドマネージャーは『日本の株式市場を売り崩せたから、国債も売り続ければどこかで必ず急落する場面があるはずだ』と豪語していた。日本国債の格下げなど何かきっかけがあれば、それを号砲にして、ヘッジファンドがこぞって『日本売り』に動き出すだろう」
もちろんヘッジファンドの猛攻に敗れて日本国債が暴落した暁には、日本の株、投資信託などありとあらゆる市場で「日本売り」が仕掛けられる。勢いよく投げ飛ばしたつもりが、刃先を向けて返ってくるブーメランのように、皮肉にもジャパン・マネーがグルリと回って、日本を襲撃する。その鋭利な刃先が、ヘッジファンドそのものなのである。
「週刊現代」2011年12月17日号より
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