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▼口だけの中国包囲網についている高い値札
オバマ政権のアジア最重視宣言は、時期的に、TPPや米韓FTAと抱き合わせで発せられている。そこから読み取れることは「米国は、中国の台頭を懸念する日韓豪などアジア諸国の希望に沿い、アジア太平洋から軍事撤退をしない。その代わりアジア諸国は、TPPや米韓FTAを通じて、米企業が儲けを出せるような経済システムに転換しろ」という交換条件だ。(◆貿易協定で日韓を蹂躙する米国)
オバマは豪州での演説で「防衛予算を削減しても、アジア太平洋にしわ寄せを与えない」と力説した。これは、米政府が予算削減に逆らってアジア太平洋での軍事駐留費を増やすかのような印象を与える。だが、これまで日本政府が在日米軍に出て行ってほしくないと希望した時、米国は、日本が米軍駐留費の一部を負担するなら駐留を継続するという条件を出し、日本側の負担が増えていく構図が20年ほど続いている。この例にならうなら、豪州への米海兵隊の駐留も、豪政府が望んだことである以上、海兵隊宿舎の新設やその他の駐留費の何割かを豪政府が出しそうだ。
沖縄の海兵隊の一部を豪州に移し、その駐留費を豪政府が出すのだとしたら、米国が出すのは口だけだ。米豪政府は、費用の件を何も発表していないが、米政府の財政難がひどくなっていることから考えて、オバマは「(アジアが金を出してくれる限りにおいて)米国はアジアを最重視する」と宣言した可能性が高い。TPPや米軍駐留には、非常に高価な値札がついていると考えた方が良いだろう。
米政府は、TPPを、規則に基づく秩序(a rules-based order)を持った国々による自由貿易協定にすると宣言している。米国は、中国について、規則に基づく秩序がまだない一党独裁システムなので、TPPに入れるわけにいかないという態度をとっている。しかし、中国と似た一党独裁システムしか持っていないベトナムは、TPPに加盟する権利を認められ、交渉に参加している。その点からは、米国がTPPを、中国を政治的に除外した、中国包囲網の一つと位置づけていることがうかがえる。
★TPPを米国主導の中国包囲網とみなす場合、それが有効な包囲網なのかどうかが問題となる。私の結論は、TPPは中国包囲網として有効でないというものだ。多くのアジア諸国にとって、すでに中国は最大の貿易相手国で、今後さらに重要な貿易相手国となると予測される。半面、アジア諸国にとって、以前に最大の貿易相手国だった米国は、中産階級の消費力が減退し、しだいに重要でない相手国へと落ちていく傾向だ。
しかも米韓FTAの先例から考えて、日本などがTPPに入ると、経済の規則を米国流に改定することを余儀なくされる。近年の米国では、大企業がロビー活動によって政府の規則を業界に都合の良いように変えてしまう腐敗的な動きが横行している。日本なども、TPPに入ると、国内経済の制度を米国の企業に都合の良いかたちに塗り替える方向の圧力を受け続ける。米政府が言うところの「規則に基づく秩序」の「規則」とは、米国で流布する、米国の大企業にとって都合の良い規則のことだ。
▼WTOも中露に乗っ取られるかも
★中国の台頭を懸念するアジア諸国は、米軍に、アジアから出て行かないでくれと懇願している。米政府は「アジアから出て行かないから、アジアが駐留費を出せ。しかもTPPや米韓FTAに入って、米企業が儲かる国家システムに変えてくれ」と言っている。米国は悪くない。日本などアジア諸国の対米依存心が、米国に狡猾な戦略をとらせている。
★米国が「中国包囲網」を喧伝するほど、中国は対抗して軍備を急いで増強する。中国が軍拡するほど、アジア諸国は恐れて対米依存を強め、米国はその尻馬に乗ってアジアに米国流の腐敗した経済システムを導入させようとする。経済システムの腐敗は、日本を含むアジア諸国を弱体化させる。TPPから締め出されている中国は、この腐敗の洗礼を受けずにすむ。TPPは中国に漁夫の利を与える。
★しかも米国は今後、アジア諸国の輸出先として頼りないものになっていき、アジア諸国は経済的に中国への依存を強め続ける。米国が今、アジアでとっている戦略は、中国の優勢を強めるものだ。アジア諸国が弱体化した米国を見限るころには、アジア諸国は経済システムをTPPなどによってぼろぼろにされて弱くなり、今より強くなる中国に従属せざるを得なくなっていく。米国のアジア重視策は「中国を封じ込めるふりをして、中国を強化する」「アジア諸国との同盟を重視すると言いつつ、アジア諸国を中国の方に押しやる」という「隠れ多極主義」に見える。
国際貿易体制との関係でいうと、もう一つ、今年中にありそうなロシアのWTO加盟も、中国にとって有利なことだ。中露は戦略的に結束を強めている。すでにWTOに加盟している中国は、新たにWTOに加盟するロシアと組み、インドやブラジル、南アフリカというBRICや発展途上諸国も引き入れて、WTOを先進国に有利な体制から、新興国と途上国に有利な体制へと政治的に転換させていこうとするだろう。
WTOはここ数年、ドーハラウンドが頓挫した状態だが、次にWTOが動き出す時には、新興諸国に乗っ取られ、まったく異質なものとして世界を席巻しようとするかもしれない。中国が自由貿易体制を推進したがるはずがない、と考える人がいるだろうが、それは間違いだ。経済が弱い国は自由貿易体制下で不利になりがちだが、経済が強い国は自由貿易体制が得になる。経済力をつけつつある中国などBRICは、自由貿易体制の推進役になることが、自分たちの国益に合う状態になっている。
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