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ドクター・悲観(doom)といえば、ルービニ・ニューヨーク大教授だが、かつてドクター・陰鬱(gloom)と呼ばれた有名エコノミストがいる。ヘンリー・カウフマン氏。ニューヨーク連銀などで活躍し、債券価格の先行きに弱気な予想を連発した。
「私よりも期待されて米連邦準備理事会(FRB)に迎えられた」。ボルカーFRB元議長にそう紹介され、外交政策協会主催の会合で久々に講演したカウフマン氏。警鐘を鳴らしたのは銀行の巨大化だった。
「米十大金融機関は、1990年に米金融資産全体の10%を保有していた。今や75%超だ」。少数の銀行が巨額の融資などを手がける金融の集中が進んでいるという。
2008年の金融危機後、金融システムを守るため巨額の税金が使われた米国は金融行政の前提だった「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル(大きすぎてつぶせない)」からの決別をめざす。だが現実には上位銀行が再編でより大きく、つぶしにくくなった。
カウフマン氏は、市場を熟知する立場から「金融の集中」の弊害に独自の洞察も示す。「資金の運用が高度に集中すると市場の視点が一致しがちになる」。さや取りを狙う参加者が減り、相場は一方向に振れやすくなる。乱高下する市場を抑えようと政府介入の頻度も高まるとみる。
これは欧州で起きていることにほかならない。ギリシャの財政不安が叫ばれ始めた当初は有力な学者も「債務と国内総生産(GDP)の比率がどこまで許容されるかに根拠はない」と指摘していたが、不安の連鎖は結局、欧州全体を巻き込む津波と化した。
欧州銀行監督機構は8日、域内大手銀行71行について、1147億ユーロ(約12兆円)の資本不足を指摘した。各行は資本増強などを進めるが、その過程で再編は避けられない。市場に安心してもらうため銀行自身にも「より大きく」との誘惑が働くだろう。
結局「金融の集中」が宿命だとすれば次の危機は、より大きな混乱の可能性をはらみ、一段と大規模な政府の介入も必要とする。しかも、その介入の後ろ盾となる財政の手足も縛られているとすれば――。
(ニューヨーク=西村博之)
[日経新聞12月9日夕刊P.3]
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